勝利者
二つの流星は、幾度も激突を繰り返しいたが、観客達や、ジークフリート達には、上空でどのような闘いが繰り広げられているのか、皆目見当が付かなかった。
これまでは、闘技場に張られた結界の力によって、闘いの詳細が分かっていたのだから、それは仕方のない事であった。
だが、空中での闘いは長くかからなかった。
赤く輝く光、リンドブルムが突如方向転換し、武舞台に降り立った。
そして、上空を見据えると、ブリュンヒルデが空から降りて来るのを待ち受けた。
ブリュンヒルデは、ゆっくりと降下してきながら、リンドブルムに問いかけた。
「どうした?空での闘いはもうよいのか?リンドブルム。」
その、余裕を窺わせる態度にも、リンドブルムは腹を立てることは無かった。
「これ以上の施しは、無用です。ブリュンヒルデ殿。」
この返答に、ブリュンヒルデはオッ!?と思った。
これまでは、事あるごとに噛みついてきたリンドブルムが、ブリュンヒルデに敬称をつけて呼んだからだ。
そして、その眼には澄んだものが宿っていた。
「貴方の話が、全て真であると、悟りました。嘗て在りし日の母の姿が、貴方に重なった。それに、私の得たこの力、正に戦乙女の力そのもの。この力の使い方を学ばせるため、敢えて手加減をしたのでしょうが、私も紅の戦姫と呼ばれた戦士です。力及ばずとも、全力で戦いたいのです。」
その答えに、ブリュンヒルデは満足そうに微笑んだ。
「それだけではないぞ。ヒルデガルドの娘という、そなたの力を見極めるのもそうであるが、その力。果たして主殿の傍に立つに相応しいかどうか、それを知りたかったのだ。聞こう!そなた、主殿に惚れておるな?」
聞かれたリンドブルムは、一瞬顔を赤くしたが、ブリュンヒルデの目を見つめながら答えた。
「この上は、見繕っても仕方ありませんね。確かに、私はジークフリート殿に惹かれています。貴方は何故ジークフリート殿につき従っているのですか?」
「全ては宿命、と思っていたが。今は違う。本気で愛しているよ。そなたもいずれ分かる時が来るかもしれんな。」
「ふふ・・・。」
リンドブルムは晴れ晴れとした様子で、雷鳴の斧槍を構えた。
ブリュンヒルデもまた、正義の剣を構え、腰を落した。
動から一転、静に転じ、静かに構えあった二人に、闘技場は静まり返った。
誰もが、決着がつくと予感していた。
そして、その予感は当たっていた。
二人が閃光の速さで交差した。
ジャキイイイイイイイイイイン!!!!
鋭い音が響き、二人は交差したまま動かない。
しかし、一人が相手の方に振りかえった。
振りかえったのは、リンドブルムだった。
「私の負けです。」
そう呟いた瞬間、リンドブルムの神鎧甲が、袈裟掛けに罅割れ、リンドブルムはゆっくりと倒れていった。
観客達が息を飲むが、リンドブルムが倒れる前に、ブリュンヒルデが光の速さで動き、彼女を受け止めた。
「流石は神鎧甲だ。我が一撃を見事くい止めるとはな。」
そう言うと、ブリュンヒルデは闘技場の端まで聞こえるように叫んだ。
「姫は無事だ!!速く手当てを!!!」
「「「「ウオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」
その言葉に、闘技場が揺れた。
それは、新たなる戦姫の誕生の瞬間でもあった。
女性部門優勝決定!!その名はブリュンヒルデ!!
以下次回!!




