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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
大闘技祭の章 破
103/211

勝利者

 二つの流星は、幾度も激突を繰り返しいたが、観客達や、ジークフリート達には、上空でどのような闘いが繰り広げられているのか、皆目見当が付かなかった。

 これまでは、闘技場(コロッセオ)に張られた結界の力によって、闘いの詳細が分かっていたのだから、それは仕方のない事であった。

 だが、空中での闘いは長くかからなかった。

 赤く輝く光、リンドブルムが突如方向転換し、武舞台(ステージ)に降り立った。

 そして、上空を見据えると、ブリュンヒルデが空から降りて来るのを待ち受けた。

 ブリュンヒルデは、ゆっくりと降下してきながら、リンドブルムに問いかけた。


「どうした?空での闘いはもうよいのか?リンドブルム。」


 その、余裕を窺わせる態度にも、リンドブルムは腹を立てることは無かった。


「これ以上の施しは、無用です。ブリュンヒルデ殿。」


 この返答に、ブリュンヒルデはオッ!?と思った。

 これまでは、事あるごとに噛みついてきたリンドブルムが、ブリュンヒルデに敬称をつけて呼んだからだ。

 そして、その眼には澄んだものが宿っていた。


「貴方の話が、全て(まこと)であると、悟りました。嘗て在りし日の母の姿が、貴方に重なった。それに、私の得たこの力、正に戦乙女(ワルキューレ)の力そのもの。この力の使い方を学ばせるため、敢えて手加減をしたのでしょうが、私も紅の戦姫と呼ばれた戦士です。力及ばずとも、全力で戦いたいのです。」


 その答えに、ブリュンヒルデは満足そうに微笑んだ。


「それだけではないぞ。ヒルデガルドの娘という、そなたの力を見極めるのもそうであるが、その力。果たして主殿の傍に立つに相応しいかどうか、それを知りたかったのだ。聞こう!そなた、主殿に惚れておるな?」


 聞かれたリンドブルムは、一瞬顔を赤くしたが、ブリュンヒルデの目を見つめながら答えた。


「この上は、見繕っても仕方ありませんね。確かに、私はジークフリート殿に惹かれています。貴方は何故ジークフリート殿につき従っているのですか?」

「全ては宿命、と思っていたが。今は違う。本気で愛しているよ。そなたもいずれ分かる時が来るかもしれんな。」

「ふふ・・・。」


 リンドブルムは晴れ晴れとした様子で、雷鳴の斧槍(ガールブレイ)を構えた。

 ブリュンヒルデもまた、正義の剣(ゼファリス)を構え、腰を落した。

 動から一転、静に転じ、静かに構えあった二人に、闘技場(コロッセオ)は静まり返った。

 誰もが、決着がつくと予感していた。

 そして、その予感は当たっていた。

 二人が閃光の速さで交差した。


 ジャキイイイイイイイイイイン!!!!


 鋭い音が響き、二人は交差したまま動かない。

 しかし、一人が相手の方に振りかえった。

 振りかえったのは、リンドブルムだった。


「私の負けです。」


 そう呟いた瞬間、リンドブルムの神鎧甲(モノケロス)が、袈裟掛けに(ひび)割れ、リンドブルムはゆっくりと倒れていった。

 観客達が息を飲むが、リンドブルムが倒れる前に、ブリュンヒルデが光の速さで動き、彼女を受け止めた。


「流石は神鎧甲(モノケロス)だ。我が一撃を見事くい止めるとはな。」


 そう言うと、ブリュンヒルデは闘技場(コロッセオ)の端まで聞こえるように叫んだ。


「姫は無事だ!!速く手当てを!!!」

「「「「ウオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」


 その言葉に、闘技場(コロッセオ)が揺れた。

 それは、新たなる戦姫の誕生の瞬間でもあった。

 女性部門優勝決定!!その名はブリュンヒルデ!!

 以下次回!!

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