戦乙女の闘い
再開された二人の闘いは、均衡しているかのように見えた。
しかし、徐々にリンドブルムが押され始めた。
ブリュンヒルデにとって、正義の剣は、己の体の一部といってもよいほどまでに熟練された武器であったが、リンドブルムにとって雷鳴の斧槍は持ち替えたばかりの武器であった。
しかも、魔胴装甲と神鎧甲の出力の違いに、リンドブルム自身もついていけてないのである。
これまでの闘いは、実力が各下であるか、あるいは雷鳴の斧槍の付属効果によって勝利を手にしていたのだ。
この武装に変えてから、実力の伯仲した相手と闘う機会のなかったリンドブルムは、自らの武器によって、不利な状況に陥りつつあった。
「クウッ!?」
「どうした!?段々と攻撃の手が荒れてきているぞ!武器に頼るな!己自身に武装を合わせろ!」
「ウグッ!?」
未だ舞うかの如く攻撃を繰り返すブリュンヒルデは、隙の出来た所へ的確に打撃を加えている。
リンドブルムのその様子を、闘士用の窓から眺めていたジークフリートは、自分も受けたことのあるその展開に、苦々しい思いと共に、リンドブルムに同情していた。
(やっぱり、ああなるよな・・・。俺だけじゃなかったと喜ぶべきか、それともただ単に、ブリュンヒルデが凄いだけなのか、ともかく相手が悪すぎる。)
かつて、自分も、魔導装甲を変えたばかりの時、ブリュンヒルデに手玉に取られたことがあった。
リンドブルムは、正にその状態なのである。
「こ、こんなバカな!確かにまだ習熟していないとはいえ、こうも簡単に上を行かれるとは!」
狼狽したリンドブルムに、ブリュンヒルデは落ち着いた様子で、声をかけた。
「経験の違いもあるが、そなたは自分よりも実力が上の存在と闘ったことが少ないのであろう。それに私はまだ本気ではないぞ!」
そう言うと、ブリュンヒルデはリンドブルムから距離を取った。
『守護者の力!!』
全身から、白き燐光を放ち、その背中から光の翼が出現した。
女闘士カーシャとの闘いで見せた技であるが、観客達とリンドブルムは仰天させられることになる。
ブリュンヒルデは、宙に浮かんでいたのだ。
「戦乙女の戦い方を教えてやろう!」
宙に停滞していたブリュンヒルデが、一瞬にして間合いを詰めた。
客観的に見ていたジークフリートも、目で追うのが精一杯の速さである。
リンドブルムには、ブリュンヒルデが突然、眼前に出現したように見えていた。
「盾の一撃!!!」
ズドン!!
「ガハッ!!」
ズゴッ!!
吹き飛ばされたリンドブルムは、風に舞う木の葉のように、武舞台に設置された柱の一つに激突して止まった。
「どうした?これで終わりか、リンドブルム?」
圧倒的ともいえるブリュンヒルデの強さに、闘技場は静まり返った。
出張に行っていて、更新が遅れました。
読むのを楽しみにしていた皆さんごめんなさい。
ところで、ようやく百話になりました。
これからも、続けていくので、よろしくおねがいします!