赤と白の激突
闘技場には場違いといっても過言ではない二人の乙女の姿に、客席は大いに沸いていた。
その美しさは、互いに天女のようである。(片方は本当に天女であるが。)
「ようやくこの時が来たな、ブリュンヒルデ!お前との勝負、楽しみにしていたぞ!」
ブリュンヒルデに、そう言いつつ、リンドブルムは指輪に収納してある雷鳴の斧槍を取り出した。
雷光が瞬時に斧槍の姿をとる。
「私も楽しみにしていた!さあ、見せてみろ!そなたの可能性をな!!」
ブリュンヒルデも正義の剣を鞘から抜き放ち、守護の盾を装着した。
そして、二人は同時に空へ武器を掲げると、神鎧甲の召喚を行った。
深紅の閃光と、純白の光が闘技場に満ちる。
光が収まると、そこには神鎧甲を纏った二人の乙女が対峙していた。
観客達は、神話に語られた戦乙女の姿を見出した。
二人の戦意は、正に最高潮であった。
ガルガンチュアは、その戦意を察し、即座に決勝開始を宣言した。
「それでは!女性部門決勝!!始めい!!!」
「ヴィーグリーズが第一王女!紅の戦姫リンドブルム!!参る!!!」
「オーディンが戦乙女第一位!!守護の乙女ブリュンヒルデ!!受けて立つ!!」
名乗りをあげ二人の乙女は激突した。
神鎧甲の力を開放した、リンドブルムの踏み込みは、正に閃光の域であった。
「『雷を纏え!!雷鳴の斧槍!!』」
リンドブルムの鍵となる言葉に応え、雷鳴の斧槍が、電刃を形成する。
「『守れ!!守護の盾よ!!』」
ブリュンヒルデもまた、守護の盾の力を開放した。
盾の表面に刻まれた文様が輝き、小さな魔法陣を形成する。
そして、リンドブルムが振りかぶった全力の一撃が、リンドブルムの盾に吸い込まれていった。
ガッコオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
大地を揺るがせるような大音響が、観客の鼓膜を震わせた。
「「「「ウオオオオ!?」」」」
開始早々の決着かと、視線が集まる中、リンドブルムは、盾の下でブリュンヒルデが笑っているのを感じた。
瞬間、リンドブルムは跳び退った。
リンドブルムの胴があった部分を、正義の剣が薙いで行った。
「なにぃ!?」
電刃の効果によって、既に行動不能になっていると思っていたブリュンヒルデの反撃に、リンドブルムが反応できたのは、唯の勘であった。
「良い反応だ!だがまだ甘いぞ!!」
「くうっ!!」
ブリュンヒルデが踏み込み、正義の剣を振るった。
ガッキと交差した武器を間に、二人は言葉を交わした。
「我が電刃を受けて、ピンピンしているとは、驚いたぞ!ブリュンヒルデ!」
「守護の盾の力だよ!この盾には、『あらゆるものを阻む』という真言が刻まれているのだよ!」
「神宝具だというのか!?私の雷鳴の斧槍の力を抑え込むだけの力、そうとしか思えん!」
「その通りだ!!」
再び、二人は離れると、闘いは再開された。
遂に始まった決勝戦、ブリュンヒルデとリンドブルムの熱い闘いが、闘技場を振わせます。