小筒
優しくなりたい。そう思うけれど、どうしてもからっぽしか渡せなくなっていたりする。
いつのまにか、歌えなくなっていました。
私がみんなの声を濁す。前に立ってる人が小首傾げるのが辛くて。
自分貫き過ぎないで。
君ならすぐ音とれるから。
君が頑張ってくれれば戦力になるから。
ありがとう……な、はずなのだけれど。
ひとりで歌えば、楽しく歌える。
——自分に酔ってるから?
ふたりで歌えば、不安が募る。
——マチガイはどちら?
みんなで歌えば、声が出ない。
——心が掠れてく。
結果、相変わらずぶっ飛んで掃除の時間、ゴートゥー保健室でした。
先生がいないタイミングでも入れてもらえるようになった私の成長振り……否か。
薄暗い、保健室のもう一つの顔。
黒の寝台の上に座って、
昨日は、ごめんなさいが溢れてきた。
今日は、いつになく朦朧としていた。
保健室前の廊下担当なのか、元副部長の声が頭を貫く。気がつくと、唇を噛み締めていました。
何気なく手に取った、制服のポケットの中のリップクリーム。
蜂蜜の香り。
中学で初めて好きな人ができた香り。
あんまり女の子っぽくない私は、いつも。女子になろう、と思い、その香りをまとって休み時間に会いに行ったものでした。
その人は、いまは手を繋げるほど側にいてくれてる。
霞む景色の中で。そのリップクリームはあったかく、震える手の中に収まっていました。




