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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー25

 目の前にいる水樹がきびすを返すと、その奥の人だかりが二つに割れ中央に進む道が出来た。その付近にいる者たちは、皆VOLTボルトのメンバーのようだ。


 群衆の間に出来た道を進んでいく水樹。拓人たちもその後を追っていく。

 両脇に立っているVOLTボルトメンバーの顔にちらりと目を向けてみる。睨みつける者、嘲笑う者。そういった人物も少なからず居たが、多くのメンバーは何か考えを巡らせるような顔でこちらを見ていた。


 そして人の波を抜けると、車両のないバスターミナルに歩み出た。ビルだらけの渋谷にあって、スクランブル交差点以上に開けた場所。

 数多くのストリートギャングたちが周りを取り囲み、そしてその中央には木製のディレクターズチェアーに座る1人の男がいた。ライダースのジャケットを着た、右頬に大きな古傷のある男。それはVOLTボルト會長、八神透だった。


 「待っていたぞ、スターダスト」

 八神は我々の来訪を歓迎するかのように、座ったまま両手を大きく広げた。案内役の水樹が頭を軽く下げ人ごみの中に消えていくと、上条は前に進みふてぶてしく座る八神と対峙した。


 「こんな大喧嘩になるなんて、俺は聞いてへんかったで」

 「思いの外、街が酷い有様だったからな。お前らもこの戦争、早急にけりをつけたいと思っていただろ?」

 八神は椅子の手すりに肘を乗せ、そう問いかける。


 「それは俺らが決めることやないからな。急いで勝敗決めてわだかまりが残すくらいなら、じっくりやりあって、どっちが上かはっきりさせた方がええやろ」

 上条がそう言うと、八神はあごに手を当てて「くくくっ」と笑う。


 「多少強引でもいいのさ。圧倒的な力でねじ伏せれば文句は言えないんだからな」

 「ほう、凄い自信やな。けどそれ、B-SIDEビーサイドの連中が居っても言えんのか?」


 そう言われ、少しだけ表情が強張る八神。

 「B-SIDEビーサイド? 確かに青いカラーバンドを着けてる連中は来てないようだな」


 「なあ、八神くん。あんたはB-SIDEビーサイドの鳴瀬に負けて、渋谷から去ったんやろ?」

 「……それは昔の話だ。今戦えば負けるはずもない」

 確信を持った顔で八神は答える。だが、そう言えるだけの根拠はあるのか?


 「あの時の喧嘩は、念動力の戦いだったって聞いたわ」

 そこでみくるが話に加わってきた。


 「念動力?」

 「ええ。透の能力は『テレキネシス』、対する鳴瀬の能力は『サイコキネシス』。つまり透は、どっちの念動力の方が優れているかをはっきりさせたかったんでしょ」

 みくるがそう言うが、透は顔色も変えずに黙っている。否定も肯定もしない。


 「あなたは人格によって能力を変えることが出来るのに、わざわざ同じ念動力で勝負に挑んだのね」

 今度は雫が語りかける。


 「ほう。若い連中が俺の強さの秘密を知っているとは驚きだ。もしや、俺らの仲間が口でも滑らせたか?」

 八神は、周りにいるVOLTボルトメンバーにじろりと目を向けた。


 水樹からそのことを聞いていた拓人はぞくりと顔を強張らせたが、雫はそんなことは気にも留めずに持っていた特殊警棒を振りあげ、力強く宙を切った。足元に落ちていたA4の紙が、ふわりと宙を舞う。


 「八神さん。あなたは自分に似た能力を持つ鳴瀬光国のことが許せなかった。だから同じ念動力で戦いを挑んだけど、彼は思っていた以上に力を持っていて、結局本来の力である能力変化を発揮することも出来ずに負けてしまった。つまりはそういうことでしょ」


 周りの人だかりから、物騒な野次が飛んでくる。

 暫し言葉を選ぶように黙っていた八神だったが、口元を緩めると椅子に背中を預け「くくくっ」と笑った。

 「随分攻撃的な女だな。まさかこいつがスターダストの代表だとは言わねえよな?」


 「当たり前や。スターダストのリーダーは俺やからな。八神、お前の相手はこの上条圭介が引き受けたるっ!!」

 上条は六尺棒を器用に回転させ演武を披露する。体の周りを六尺棒は流れるように美しく回り、そして天に掲げると、それを勢いよく地面に叩きつけた。広いバスターミナルに炸裂音が響く。


 何だかんだで結局自分が代表をやらされるものだと思っていた拓人は、ほっとするような肩透かしを食らったような微妙な感情になり、小さく息をついた。けど、圭介くん勝算はあるのか?


 八神は小さく頷くと「まあ、当然だな。じゃあ、もう1人は誰にする?」と聞いてきた。


 一拍置いて、右の眉が上がる上条。

 「……ん? もう1人って何や?」


 「この喧嘩に参加できるのは各チーム2人づつ。何チーム集まるかはわからないが、そいつら全員で乱戦を行う。最後まで生き残った奴がいるチームの勝利。ルールはそれだけだ」


 代表者1人づつのバトルロイヤルだと勝手に思っていたが、一応タッグを組めるようだ。しかし各チーム2人となると話が変わってしまう。


 やはりというか何というか、上条はこちらをじっと見つめている。

 「それやったら考えるまでもない。もう1人はうちのエース、山田拓人が出るで!」


 勝手に決定する上条。まあ、妥当な案なので文句はないのだが、横にいる雫は少し不満そうだ。


 「話が早いな。こちらとしてもうちの副長を潰した『風斬り』に是非とも出て貰いたいと思っていたところだ」


 そうVOLTボルトの副長、氏家時生ときおはすでに倒してしまっているのだ。ということはVOLTボルト側のもう1人は誰になるのだろう?


 「おっ、そんなことをしている隙に来たようだな……」

 視線を奥に向ける八神。そして、それに合わせ拓人たちも振り返る。

 

 VOLTボルトのもう1人の代表が来たのかと思ったが、そこに立っていたのはスコーピオンの総長、梶ヶ谷と副長、東だった。

 

 「お前の二度目の引退会場はここでいいのか、八神?」

 東は前日の穏やかさから一転して、険しい表情で髪を逆立てている。


 「人をゾンビみたいに言うな。そう何度も、引退と復活を繰り返するつもりはねえぞ俺は」

 八神がそう返すと、東の横にいる梶ヶ谷が腰に付けたホルスターから玩具の愛銃を取り出し、八神の顔面に狙いを定めた。


 「引退しないなら、ここがお前の墓場にしてやるよ。八神透を潰すことは、前総長からの悲願だからな!」

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