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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter21 12月のホーリーウォー
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†chapter21 12月のホーリーウォー03

 「おい、B-SIDEビーサイドどもっ! 兄貴たちに気安く話しかけてんじゃねぇよ!」

 キャップ男は『帝王』の異名を持つ鳴瀬を目の前にしても、全く怯む様子がない。さすがはマッドクルーのメンバー。頭のネジがどうかしてる。


 「黙ってろチンピラが。飛ばすぞ」

 チンピラ度合いとしてはマッドクルーの連中と大差ない辻堂が、圧倒的な迫力で睨み返した。キャップ男は望むところだとばかりに一歩前に出て、顔を突き合わせる。もはや一触即発の状況だが、その横にいる鳴瀬は身を屈めるとキャップ男の顔をしげしげと眺めた。


 「マッドクルーは、いつからスターダストの子分に成り下がっちまったんだ?」

 「成り下がっちゃいねーよ。強い者が上に立つのは自然の摂理だろうが」

 キャップ男はあくまで辻堂と睨み合いながら、鳴瀬に対しそう語る。辻堂とのその睨み合いは、止められないのだろうか?


 「成程な。まあそれはさておき、お前らMC.BOOエムシーブーに伝言頼めるか?」

 「BOOブーさんに伝言? B-SIDEビーサイドに加入しろって話なら、何度も断ってるだろうが」

 口を歪めるキャップ男。それに対し鳴瀬は得意気に口角を上げた。

 「けど、強い者の下に付くのはやぶさかじゃないんだろ?」


 鳴瀬は不気味なオーラを醸し出すと、ポケットに入れていた左手を前に出した。その手の中にはパチンコ玉が握られている。


 「そりゃあ、俺らの仁義であって、BOOブーさんには関係ねえ。あの人はもう争い事は口喧嘩しかしねえ主義になったんだ。ラブアンドピースつってよ」

 キャップ男がそう言うと、正面で聞いていた鳴瀬が吹き出すように口元を押さえた。

 「はは、BOOブーらしいな。だが、それを聞いて安心した。実はVOLTボルトの八神透がMC.BOOエムシーブーを引き抜こうとしてるっつう噂を小耳に挟んだもんでな。伝言ってのは、八神の下にだけは付くなと伝えたかったんだ」


 「BOOブーさんはこの戦争に興味もねえし、誰の下にも付く気はねえよ」

 キャップ男は帽子の位置を直しながら、そう語る。MC.BOOエムシーブーという人物はマッドクルーのリーダーだと言っていたが、下のメンバーと違い随分平和主義な人物のようだ。マッドクルーというチームの実態がいまいちよくわからない。


 「それだけ確認できたら充分だ。今日は良いことずくめだな、辻堂」

 鳴瀬に言われると辻堂は大きく鼻を鳴らし、拓人と上条を睨んだ。

 「それじゃあ、景気良く喧嘩の華でも咲かせましょうか?」


 辻堂が戦闘態勢に入る。しかしそれよりも先に、拓人は風を体に纏わせていた。こっちだって、戦いたくてうずうずしてたんだよ。


 風が吹く。拓人はその風と共に公園通りの坂を駆け下り、前に向かって力強く右腕を振り抜いた。

 「喰らえ、鎌鼬かまいたちっ!!」


 刃のような風がB-SIDEビーサイドの3人に襲いかかる。しかしその攻撃を冷静に見てた三浦は、一歩前に出ると前方に半球体の障壁を発生させた。鋭利な風がそれにぶつかり、金属がぶつかるような大きな音がそこに鳴り響く。


 「成程、これが『風斬り』の語源か。面白え技、隠し持ってんじゃねえか」

 鳴瀬はそう言って、口髭に指を当てた。余裕ぶった態度が鼻につく。


 「1発喰らえば、面白くもなくなるよっ!」

 再び右腕を振りかぶる拓人。しかし後方にいた上条に肩を抑えられ、その技は不発に終わってしまった。


 「何邪魔してんだよ、圭介くん!」

 「アカンて拓人。鳴瀬は最後のお楽しみにする言うたやろ」

 「けど、流れ的に戦闘になるのは仕方ないだろ!」

 肩を動かし押さえつける上条の腕を外そうとするが、中々どうして力が強く、そこから逃れることが出来ない。


 「何だ? やらねえのか?」

 その様子を目の前で見ていた鳴瀬は、後頭部を掻きながら大きく欠伸をする。


 「やりたいことだけやっといて、そんな理屈が通るとでも思ってんのか?」

 辻堂は『ミノタウロス』の亜人系能力。彼の頭部からは牛の角が短くせり出していた。今まさに牛頭人身の化け物に変化しようとしているところだ。


 「いい、今日は帰るぞ辻堂」

 だが鳴瀬は、そんな辻堂の肩を押さえそう諭してきた。だが辻堂の鼻息は未だ荒い。

 「しかし、売られた喧嘩を買わなかったらB-SIDEビーサイドの看板に傷がつきますよ」

 「辻堂、お前俺に意見するのか?」


 鳴瀬の顔色を見た辻堂は、表情を変えると短く出していた角を瞬時に引っ込めた。

 「いえ、それはないです……」


 緊迫感に包まれていた公園通りの坂に、暫しの静寂が生まれる。


 「何だよ、喧嘩はしねえのか!」

 その静寂に反抗するように、上条に押さえつけられた拓人は声を荒げた。


 「今日は気分がいいから喧嘩する気分じゃねえ。次に会う時を楽しみにしておけ」

 振り返りその場を後にする鳴瀬と三浦。終始睨み続けていた辻堂も、地面に唾を吐き出しそして2人の後を追っていった。

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