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星屑のシャングリラ  作者: 折笠かおる
†chapter5 異形のカリスマ
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†chapter5 異形のカリスマ04

 起毛した真っ赤な高級カーペットが印象的なその部屋で、革張りのソファーに座る上条、拓人、雫の三人は、異形のカリスマと呼ばれる琉王るおうと応接用のローテーブルを挟んで対峙している。

 琉王はにこやかな表情を湛えたまま足を組み替えると、スーツの内ポケットから二枚の写真を取りだしテーブルの上に出した。一枚には赤い宝石が写っているが、もう一枚は上に宝石の写真が重なっているためよくわからない。


 「お金のことは良いんですが、そのかわり君たちに頼みたいことがあるんです」

 琉王は先程の笑顔から一転し、真剣な眼差しを向けてくる。

 予想していなかった展開に困惑した上条だったが、油断はできないと思いその言葉の真意を訪ねた。

 実は盗まれたルビーを取り戻してほしいのだと琉王が言う。テーブルの上に置かれた宝石の写真がその盗まれたルビーのようだ。

 「盗まれたのはこの写真の石なんですが、通称『人間の瞳』と呼ばれる巨大なルビーです」

 「に、人間の瞳!?」

 その悪趣味な石の名前を聞いた拓人は、大きく後ろにのけ反った。

 悪魔の瞳や天使の瞳という名前だったら宝石の名前として相応しいように思えるが、人間の瞳とはどういう経緯でそんな名前になったのだろうか?


 「けど、盗難なら警察に頼んだ方がええんとちゃいますか?」

 上条が当然の疑問をぶつけると、琉王はこの宝石が元々盗品だったものを闇オークションで手に入れたのだと説明した。そういう品物であるなら警察に届ては後々面倒なことになり兼ねない。


 「琉王さんの能力やったら、簡単に見つけられそうやけど?」

 上条の質問に、琉王は目で頷いた。

 「そうですね。実のところ犯人の目星はついています」

 素直にそう言われ拍子抜けした上条だったが、次の言葉を聞いて胸が小さく揺らいだ。

 「ですが確証がないので、あなたたちの協力が必要なんです。あなたたちのチーム、スターダストには『千里眼』の使い手がいますね?」


 千里眼とは物理的な障害物を透視しつつ、遥か遠くまで見通すことが出来る人外の能力の一つである。

 「千里眼……?」

 拓人が首を傾げたが、隣に座る雫は静かに頷いた。

 「佐藤みくるさんね」


 その言葉を受け、琉王は雫の方に顔を向けた。雫は幼い頃琉王と会ったことがあると言っていたが、琉王もそれを覚えているようだ。暫し目線を合わせると、懐かしむように目を細めた。

 「そう、佐藤みくるの持つ千里眼の能力なら、確実に人間の瞳の在り処を見つけることが出来るはず」


 それを聞いていた拓人はよくわからないまま口を開けて放心していたが、すぐに誰のことを言っているのか気付いた。

 「佐藤みくるって、あのツインテールの足出したねぇちゃんか? そういえばあの子は何でここに連れてこなかったんだ?」

 「俺と同じとこでバイトしてるんやからしゃーないやろ。二人でバイト抜けるわけにいかんし、それに……」

 実際バイト先の店は巡査に荒されてしまって今日の営業をすることは出来なくなっていたので、二人でここに来ることは可能だったのだがみくるがここに来なかった理由は他にあった。

 佐藤みくるは異形のカリスマ琉王のことを心底嫌っているのだ。


 「それに……、何だよ?」

 拓人がそう問いかけたが、上条はその言葉を聞き捨てた。

 「琉王さんの百聞の能力でも確証がとれないようなことを、みくるちゃんの千里眼でわかるんやろか?」

 琉王は綺麗に整えてある前髪を指ですくうと、艶やかな金髪がくるんと弾んだ。

 「百聞は一見に如かずと言いますから、私の聞く力より彼女の見る力の方が能力として高いと思います」


 「ふーん、千里眼ねぇ。あの子も亜種なのか、そういえば『オッドアイ』だったもんな」

 拓人はみくるの顔をぼんやり思い出した。

 オッドアイとは瞳の瞳孔の周りにある虹彩こうさいの色が左右で異なる形質のことで、これもアルビノ同様亜種の確率が高く強力な力を持っていることが多い。そういったアルビノやオッドアイのような強力な力を持った亜種は、その中でも『異形』と呼ばれ恐れられている。


 上条は拓人に小声で耳打ちした。

 「みくるちゃんにはオッドアイと異形っていう言葉は禁句やから、会っても絶対に言うたらあかんで」

 オッドアイやアルビノはともかく異形という言葉には差別的な意味合いも含まれているので、拓人は聞きわけの良い子供のように頷いた。


 「それで、さっき犯人の目星はついてるって言ってたけど?」

 拓人の質問に琉王は大きく頷くと、テーブルに置いたもう一枚の写真を表に出した。「恥ずかしいことなのですが」と前置きすると、宝石が盗まれた翌日に一人の従業員が失踪したのだと言う。その従業員の名は南條浩史。主にホールでの接客をこなしていたのだが幾つかの面倒な金融業者から借金があり、よく同僚に金の無心をしていたようだ。

 「主観で言うならば、南條君が私のものを盗むことなど到底考えられないのですが、お話した通りこういう状況ですので彼が一番の容疑者であることは否定できません」


 「なるほど。で、この写真の男がその南條っちゅう奴なんやな」

 そこにある写真を改めて良く見ると、そこにはどこかで見覚えのあるアフロヘアーの男が写し出されていた。

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