第四章:第十の弦
第4章です。受付終了まで残り10分。ついに、あの「神童」が道場の引き戸を開けます――。
職員室が突きつけた期限の最終日は、道場の屋根を執拗に叩き続ける雨の、灰色の空と共に訪れた。調整卓の上、弓道部の入部届には、わずか四つの署名だけが残されていた。トウジ、イツキ、ミナト、そしてダイコ。名前が一つ足りない。数半世紀に及ぶ歴史が段ボール箱に詰め込まれ、鍵をかけられるのを阻止するための、たった一つの名前が。
課外活動の受付終了まで、残りわずか十分だった。
道場の中央は、張り詰めた空気に満ちていた。ミナトはいつもの苛立ちを隠そうともせず、木床をギシギシと鳴らしながら行ったり来たりしている。ダイコは伝統的な正座の姿勢のまま、デジタルメモ帳を手に、部が存続できる数学的確率を強迫観念のように計算し続けていた。イツキは首筋に冷や汗を流しながらスマホの画面を凝視し、トウジはただ一人、誰もいない的を見つめたまま射線に立ち、己の弓を握りしめていた。
「もう終わりだろ?」
ミナトが苛立ちをぶつけるように空を蹴り、静寂を破った。
「俺たちはボロボロになりながら、あの四つ目の説教に耐えて、主将は的の真ん中をぶち抜いた……それが全部無駄かよ? 学校のクソみたいな事務手続きのせいで?」
「統計学的に言うなら、次の九分間のスロットで僕たちが生き残る確率はゼロ点三パーセントだ」
ダイコは眼鏡の位置を直した。その声に感情はなかったが、タブレットを握る指先には尋常ではない力がこもっていた。
「予測不能な人間という変数が現れない限り、この実験は失敗に終わった」
「クソッ……」
イツキは壁に頭を打ち付け、低く毒づいた。
「三年生の教室のドアを全部叩いて回ったんだ。息も絶え絶えの部に、責任を負ってまで入ろうなんて奴は一人もいなかった」
トウジは何も言わなかった。彼の両手は、指の関節が白くなるほど強く弓の握りを締め上げていた。道場の沈寂が、まるで彼の首を絞めるように四方から迫ってくる。彼は、ここで一人、己の肉体と戦いながら早気を治そうともがいていた何十もの放課後を思い出していた。道場を失うことは、敗北を受け入れることと同義だった。自分が永遠に壊れたままであると、認めることだった。
道場の壁時計が、カチリと機械的な音を立てた。残り五分。
ガラッ。
木製の引き戸が静かに、しかし正確に開く音が空間に響いた。雨の冷たい風が道場に流れ込み、濡れた土の匂いを運んでくる。
四人が一斉に振り返った。
入り口に立っていたのは、制服を完璧に着こなし、使い込まれた黒い革のショルダーバッグを斜めに掛けたユウセイだった。彼の黒髪は、まるで外科医のような冷徹さで道場の内部をスキャンする鋭く冷たい瞳の上に、わずかに懸かっていた。彼は本物のプロフェッショナルだけが放つ、周囲の空気をずっしりと重くさせるような、磁気的で威圧的なオーラを放っていた。
「惨めな出迎えだな」
ユウセイが言った。その声は澄んでいて、鋭く、熱量が完全に欠落していた。
「まるで処刑人を待つ負け犬の集まりだ」
ミナトは顎を強張らせ、拳を握りしめて一步前に出た。
「お前、自分が何様だと思ってんだ? 最後の最後に、俺たちを嘲笑いに来たのか?」
「静かにしろ、ミナト」
トウジが命じた。その声には主将としての威厳が響いていた。トウジは三歩前に出て、新参者に焦焦を合わせた。彼はその顔を覚えていた。二年前の中学全国大会の配信映像が、脳裏に鮮明に蘇る。
「ユウセイ……最可中学の神童。的の中心――的――を決して外さなかった射手」
イツキが飛び上がり、目を見開いた。
「待ちなよ……ユウセイ? あの『完璧な一射』を持つと言われ、去年突然表舞台から消えたっていう? そんな化け物が、なんでうちの公立校にいるんだ?」
ユウセイはイツキとダイコの驚愕を無視し、調整卓に向かってゆっくりと歩いた。制服のポケットから黒い万年筆を取り出すと、極めて正確でエレガントな動作でキャップを回し、トウジを横目で睨み据えた。
「勘違いするな。俺は友情や若者の努力なんていう青臭い演説のためにここへ来たんじゃない」
ユウセイは凍りつくような声で言った。
「この学校の最後の現役部員が、無様な早気に苦しみながら、それでも弓にしがみついていると聞いたからだ。この道場がどれほど衰退したか、この目で確かめに来ただけさ」
直接的な侮辱に、道場は死の静寂に包まれた。ミナトは今にも殴りかかりそうだったが、トウジの身体は微動だにしなかった。ただ、その胸の奥は激しく燻っていた。
「俺の破滅を見物に来ただけなら、なぜその手にペンを持っているんだ?」
トウジが切り返し、ユウセイの鋭い視線を受け止めた。
ユウセイは机の上の入部届を見つめた。
「この職員室の連中によって、弓道がゴミ溜めのように扱われるのを見るのが耐え難いからさ」
ユウセイは万年筆を落とし、完璧で力強い筆跡で、紙の五行目――最後の空白――にその名前を記した。時計は受付終了のちょうど四分前を指していた。
「ただの気まぐれだ。俺が五人目の署名だ。君たちの部は、公式に生存した」
イツキは自分が息を止めていたことにようやく気づき、安堵の笑みを浮かべながら壁を滑り落ちた。ダイコは新しい変数を記録しながら、乾いた音を立ててメモ帳を閉じた。ミナトはただフンと鼻を鳴らし、新しいライバルから目を逸らさずに腕を組んだ。
ユウセイは万年筆をポケットに仕舞い、リュックを再び肩に掛けると、出口へと向き直った。
「だが、思い上がるなよ」
ユウセイは引き戸をくぐる直前に足を止め、傲慢で冷ややかな光を宿した目で振り返った。
「俺は君たちと練習するつもりはない。あの決勝以来、弓には触れていないんだ。素人の集まりと、壊れた主将ごときが俺の意志を変えられると思うな。俺は君たちの道場を官僚主義から救ってやっただけだ。残りの問題は、お前の仕事だぜ、トウジ」
引き戸がピシャリと閉まり、四人の少年が後に残された。
弓道部は公式に廃部の危機を免れた。彼らにはイツキのエネルギー、ミナトの荒々しい力、ダイコの緻密な頭脳、そして今、この地域最大の神童の名前がその紙切れに刻まれた。しかし、トウジは自分たちの間にある技術的、精神的な深淵が途方もなく巨大であることを知っていた。彼らは完全に調和を欠いた、歪んだ音を奏でる五本の弦だった。
だが、二十八メートルの射線は、まだ彼らのものだった。そして、彼らのシーズンは今、始まったばかりだった。
(第四章 終わり)
ユウセイの圧倒的なオーラ、そして弓道部が公式に生存した瞬間をお届けしました!
一挙公開はまだまだ止まりません。リアルタイムの連載状況はX(@Sora_no_TENKAI)でチェックしてくださいね。
続いて、初めての公式練習が始まる第5章へどうぞ!




