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第73話 寝床に猫がいる

 妖精たちのアジトの支部長に今夜は泊って行けばいいと提案され泊る事にしたライリー達。ライリーはこのベッドを使うようにと言われたベッドで横になっていると眠気が来た頃に三匹の白猫がやってきた。


「三匹も来るとは思わなかったな。一緒に寝るか?」


 ライリーは三匹に尋ねると三匹とも答えた。


「はいにゃ」

「一緒に寝るにゃ」

「そうするにゃね~」


 暖かく優しい気持ちになる可愛い猫たち。よく見ると体格差がある事に気が付いた。猫の状態になる前を全て見ているわけではないのでハッキリとした差は分からないが獣人の姿になっても差があるのか尋ねてみた。


「なあ、みんな少しづつ体格に差があるみたいだが獣人の状態になっても身長とかに差があるのか?」


「あるにゃ」

「あるけど、多少くらいかにゃ?」

「私はかなり背が高いのも見た事があるにゃ」


「そうなのか? 王都で見たクレールと……どれがさっきまで一緒にいた猫か分からないがほとんど同じ身長に感じたけどな」


「私にゃ。私は一般的な身長の高さにゃ」

「私は多分、少し低めにゃ」

「私は気にしたことが無いにゃ」


「そうか。じゃあ、これからまた旅に行かされるのでまだ見ぬ変わった猫妖精も見る事があるかもしれないのか」


「それは分らぬにゃ」

「見れるかもしれないにゃね」

「ぐぅ~……」


「一匹は寝たみたいだな。俺も眠くなってきたな、もう寝るか。みんなお休み」


「お休みにゃん」

「すぅ……すぅ……」


 なんでライリーのベッドに集まったのかは分からないが、他の二人もベッドを使っているから猫の状態になって譲ってくれたんだろう。

 前の世界でも動物には好かれる事が多かったが、この子たちは妖精であり動物でも無いので猫たちを撫でながら、これはこれでハーレムだなと思いながら眠った。


◇◇◇


 翌朝、目が醒めるとカセムと魔族の男は身支度を整えていた。アジトの支部長にまた来る時は場所を覚えておくようにと言われたが、出来れば来たくはない街である。

 ライリーとカセムは妖精と魔族に城壁まで見送られ、そこから徒歩で転移陣を展開できる場所まで歩いた。


「朝だって言うのに街の悪臭とこの灰色の空。清々しさとは無縁の朝だな」

「まあなあ。俺も前に来た時はいつもこうだったぜ。でもあの飲み屋は良かったな。俺はああいう店に行くと生きている実感が湧くぞ」


「俺は前の世界でもああいう店に入った事はあるが何か心の壁をずっと感じて楽しめなかったんだよな」

「そりゃ、向こうもそういうもんだと思って接客してるからな。でもそれから本気になってくるのかを見極めながら楽しむのがいいんだ」


「まあ、その方が楽しいよな。俺はそういう楽しみ方が出来なかったってところだな」


 しばらく歩くと、周囲が開けた森の広場に出た。敵も魔獣も居ない事を魔道具を使いしっかりと確認した後、転移陣を展開し王都へ帰還した。


◇◇◇


 三回ほど転移を繰り返すと王城の転移陣へと転送された。今回も色とりどりの花と美しい青空。そしてメイドたちの美しい姿が見えた。

 そこで待機していたメアリーとソフィアは今回はライリーは大丈夫なのかと不安な表情をしていた。


「ね、ねえライリー。今回は大丈夫なの? さっき屋敷から来たところだから転移に間に合ってよかったけど……」

「ああ。ソフィア」


 そう言うとライリーはソフィアを抱きしめた。


「このソフィアの感触とこの美しい庭園の花々。そしてそれらが漂わせる爽やかで安らぐ香り。やっと帰ってきたんだな」

「メアリーさん。やっぱり今回もおかしいんじゃ……」


 プリーストのメアリーは魔法で診断し、結果を伝えた。


「いえ。大丈夫です。前みたいな興奮も見られません。魔族領の中枢都市は街中がドブと糞尿の悪臭に包まれていて死体もそこらに転がっています。

 この庭園みたいに爽やかな香りが漂うところもまずないし、人も街の臭いが服とかに染みつくので臭いんですね。なので今、言っているのは単に感想を述べているに過ぎません」


「そうなんですね。よかった」


 安堵したソフィアにメアリーが言った事からして臭いのかと尋ねると装備に防汚処理がされているので臭く無いと言っていたので安心した。

 その後、会議室に呼ばれたライリーらは魔族領の現状について説明をした。王族、貴族による圧制は向こうではいつもの事であろうが最近では国費の浪費があまりに顕著であった。


 指揮官によれば、その貴族の浪費が度が過ぎており貨幣価値が変動する事態となった事については王国でも予想はしていたというがそれによって千里眼が使えなくなるほどの状態になっているのは問題であると言っていた。

 義賊のような魔族に王国製の魔道具が渡っている事については黙認した事を告げるとそれはそれで牽制になっている可能性があるためその魔族の男には定期的な魔道具の提供を続けても良いかもしれないという話になった。


 権力者の汚職はどこの世界でも民を苦しめる結果になる事が多いが今回の件はこのまま続けば更に情勢が悪化し、千里眼も使えなくなり分からなくなる可能性が高いので伝令を配置する事にするのだという。

 汚職に関係した王国の者は魔道具から凡その見当がつくそうでいずれ処分が下されるであろうとの事であった。ライリーらは報告を終えたところで城から出て城下町へ向かった。


◇◇◇


 しばらく大通りを歩いているとまたもエリンが現れた。驚いた顔をして身構えているがどこか表情がニヤけているようにも見える。


「ラ、ライリーさん! 今回もお仕事ご苦労様です!」

「ああ。本当に疲れた。やはりこの世の地獄になんて行くもんじゃないな」


「あれ? 今回の転移は大丈夫みたいですね?」


 それについてソフィアが答えた。


「うん。私も不安だったんだけど、今回は大丈夫だったよ。抱きしめて数分間、離してくれないから不安だったけど」


 そんなに長かったかと疑問に思ったライリーはソフィアに尋ねる。


「そうか? 一分も無かったような気がしたけどな? 時間の流れが遅いところに居たから感覚が変わったんだろうか?」

「どうなんだろうねえ? そういう話は聞いた事がないよ」


 そんな新たな疑問が生まれた瞬間、都合よく吟遊詩人のオディロンが現れた。今日はリュートを持っているのでフラメンコギターを弾けば良かったのかと思ったのか微妙な表情をして近づいてきた。

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