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第61話 処刑人と大掃除

 港での一件が解決したわけではないが、先に人身売買組織を壊滅させるべく街のギルドに応援を要請し、夜に攻め込む事になった。

 ライリーらは応援に来た冒険者と打ち合わせをしていた。カセムが冒険者と話している。


「俺がカセムだ。今日はよろしくな」

「ああ。任せな。奴らはヤッたところでまた湧いて来るだろうがどうして王国がこのタイミングで始末する事にしたんだ?」


「関係している密輸組織がいるだろ? ヤツらとの関係性はほとんど無いにしても始末しておいた方が流れがハッキリするからだそうだ」

「それはあるかもしれないな。何せ、魔族のやる事だ。どことどこが繋がっているか、誰と関係があるか、分からないように誤魔化し続けているから少しは遅くなるだろうからな」


「そんなところだ。今回は密輸組織の方がしゃしゃり出てきて誤って倒してもそれは構わない。あっちはあっちでまたどこからか補充されるだろうからな」

「了解した。なら目に入ったら全て始末したのでいいな?」


「ああ。それで構わない。敵味方を識別するための魔道具を貸しておく。お前は優れた処刑人だと聞いているから必要無いかもしれないがな」

「いや。ありがたい。使わせてくれ。俺は二つ名が処刑人なだけで殺人鬼ではないからな」


「へえ。より心強い事だな」


 今回のギルドからの応援はこの処刑人一人だけだが、潜入ルートとどこに敵がまとまっているかが分ればいいのでそう何人も必要ではなかったのと敵がそこまで厄介な訳ではないのでカセム側も全ての兵員を投入する必要も無い。

 夕方になり、屋台からスパイスのかぐわしい香りが漂う。食欲をそそる魚のスパイス焼きが目に入ったので買う事にした。ソフィアと一緒だったのでビールも買ってベンチで食べる事にした。


「かなり大きいね。この魚」

「ああ。大きいが骨が太いので身がそこまであるわけでもないみたいだな。……かなり美味い。ビールともよく合うな」


「……あ! ほんとだ。美味しいねこれ。ピリ辛でこの甘いジュースともよく合うよ」


 魚を食べていると夕方のいつもの事だがキノコモンスターがやってきた。


「よう! お二人さん。今日も俺を炙ってくれ!」

「ん? いいよ」


 そう言うとソフィアは彼を火炙りにした。


「こんなところかな?」

「おお! いいぜ。ありがとよ。ソフィアも大分、俺を炙るのに慣れて来たな。魔法の加減の練習にもなっていいだろ?」


「うん。良い練習台になっていると思うよ。前も言った気がするけど」

「ああ。何かそんな気がするな」


「そっか」

「ところで今日は何か任務か?」


「ああ。今夜は人身売買組織を壊滅させる。ギルドの処刑人も一緒だ」

「処刑人? そういや客でたまに来ているみたいだな。何故か俺がいない時に来ているみたいだからよくは知らないけどな」


「そうなのか? そういうのには興味がない感じに見えたけどな?」

「欲望の種類ってのは、全て方向性みたいなのがあってそれがどこに向くかは人によって違うもんだからな。ヤツは一つの方向に向いていないから優れた処刑人なのかもな?」


「そう言えばそうだな。流れるように倒し続ける処刑人なら一緒に行動するのはかえって危ないしな」

「さて、暗くなってきたし俺は行くぜ。二人も気をつけてな。幸運を祈ってるぜ」


「ああ。では行くとするか」


 暗くなり、ライリーとソフィアは港へ向かった。今回は港湾事務所ではなく倉庫の方でこの倉庫の奥に身売り目的で集められた人間が居るらしい。まず、この人間を解放してから大掃除というわけだ。


『こちらカセムだ。皆、配置に着いたか?』


 カセムが呼びかけると全員が返答し、配置に着いた事を確認した。ライリーとソフィアらは牢に押し込められている人々を解放するのを担当する事になった。

 牢に向かうといくつかの牢があり、その中に魔族や人種、男女で分けられていた。ソフィアが牢の鍵を解錠した。


「……よし。解除したよ」

「皆、助けに来たぞ。声は押さえろよ」


 話しかけると助けられた人は答えた。


「ありがとう。今夜辺りに船が出るとか言っていたからもう少しで帰れなくなるところだったよ」

「それは良かったな」


「でも、私はそうなんだけどこの子は……」

「何か問題でもあるのか?」


 そう問いかけると彼女は答えた。


「実は私はこの街で死んだ両親の店を継いで商売をしていたんだけど、騙されて借金を負わされて街に居られなくなったの」

「ああ。それは逃げるしかないよな。この街じゃ自己破産すれば借金を帳消しに出来るとかそういうのは無いんだろう?」


「自己破産が何のことかは分からないけど、騙されたから憲兵に突き出そうにも騙してきたヤツらは憲兵と繋がっているからどうにもできないんだよ」

「酷い話だ。ここらは金に執着しないって聞いていたのに」


「執着しないからなんだよ。まさかお金の事で騙す人が居るって思わないから騙しやすいんだ」

「ん~。ならどうする? 俺たちは王国軍だから希望するなら王国になるべく近い街まで冒険者を通じて送って、そこで生活する事も出来るが。もちろん、借金は帳消しだ」


「え!? そんな事が出来るの? ありがとう。ぜひ、お願い!」

「わかった。なら、この紙に書いてある宿に明日にでも来てくれ。王国に君の適正等を調べてもらってから冒険者に引き渡す」


『うわぁああ!!』


「血しぶきの音がここまで聞こえて来やがる。思ったより派手に暴れてるな」

 敵が集まってきてもいけないので全ての牢の鍵を解放し全ての人を逃がした。人々の誘導は街の憲兵と王国兵が担当する。

 ライリーらは敵の相手をしているカセムらの応援に向かった。

 通路には返り血がべったりと付いており死体もそこかしこに転がっている。予想していたよりも敵が多いようだ。


「カセム!」

「ライリーか。牢の人は全員逃がしたか?」


「……そらっ! 初めて使ったが凄い切れ味だなこのナイフ。囚われていた人は全員逃がした。一人、借金を背負わされているのが居たから王国に来るか聞いたら行きたいってよ!」


 話している間にも敵がどんどん湧いて来る。処刑人は無言で数秒ごとに一人ずつ始末している。

 しかし、王国製の武器は渡していないのにどうして連続で倒し続けられるのかと思い、様子を見ると倒しては敵の武器を奪い使い続けている。敵を倒すために存在しているような戦いぶりである。


「どれだけ湧いて来るんだ? 何か知らないか?」


 処刑人に尋ねた。


「俺もこの剣が何本目か分からんが、折れた数は二十は超えたな。王国軍は千里眼を使ったんじゃないのか? 敵の数を把握しているんじゃないのか?」


 尋ねられたカセムが敵を倒しながら答える。


「いや。確認したはずだ。倉庫付近に牢に囚われた人と、敵と……どぅらっ! 確か四十くらいだったはずだ」

「俺だけでも剣が二十本以上折れてんだから五十人は超えてるぞ。他の兵士も王国軍の装備は凄いな。……おらっ! 何人倒しても折れてねえ」


「俺も弓は何十発も撃った気がする。ソフィア、幻覚魔法が使われてないか?」

「調べてみる。援護して」


「任せろ。君も援護を頼む」

「了解」


 魔法防壁を展開後、ソフィアは湧き続ける敵が幻覚ではないか調べた。湧き続ける敵を倒し続けているとソフィアが口を開いた。


「ライリー! 幻覚魔法は使われてない。魔道具の類も無いよ」

「分かった。加勢してくれ」


「処刑人はこの街の冒険者なんだろ? コイツらいつまで湧き続けると思う?」

「この街はギャングだらけだからな。もしかしたら人身売買が金になる木になっているのかもしれない。この街には身寄りのない者も多い。いくつかのギャングが組んでいればメンバーも数が多くなるからな」


 彼の予想が当たっているなら新たな問題が浮かび上がってくるのかもしれないが今はひたすら敵を倒すしかない。

 通路に血の臭いと死臭が漂い、鼻がおかしくなりそうだが魔族領の奥に行けば死臭にさらに陰鬱過ぎる波動が全身を包み歩く度に嫌気が差すような場所もあるという。そこに比べればマシなのだろうが、それにしても敵が多い。


―― 一時間が経った頃 ――


「……はあ。今ので最後か?」

「う~ん……索敵しても引っかからないね」


「魔法士、どうだ? 何か見えるか?」

『いえ。こちらも何も見えません。索敵魔法を広範囲にしても何も見えません。それで落ち着いたと思います』


「分かった。引き上げるか?」

「処刑人、どうだ? 流石にもう居ないだろう。索敵魔法にも引っかからないしな」


「ああ。なら大丈夫……と、言いたいところだがこの街はギャングだらけだ。話を聞いた連中が敵意を持ったらまた索敵に反応するのかもしれないな」

「……分かった。全員、しばらく待機。索敵を続けろ」


 そこから一時間ほど待機し、索敵も続けたが何も変化は無かった。これなら今回は引き上げても大丈夫だろうという事で処刑人とも別れ、宿に戻る事にした。


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