第58話 怪しい港に行く
夢で語り合った後、目が覚めた。横にはソフィアも寝ている。前の夢でもそうだったがやはりソフィアと一緒に寝ているとあの女性も夢に出て来やすいようである。
ソフィアと似ているのかとこうしてじっと見つめているわけだが、どう思い出してもやはり似ていない。あの女性はどこから来ているのかは分からないが、ソフィアに似ていると思う時もあるので場所によって夢に出てくる姿が多少、変わるのかもしれない。
しばらくまどろんでいると日も高くなり、そろそろ起き上がろうと思い起きようとするとソフィアが服を掴んで離さない。もう起きたのかと思い、体を揺らしてみるが特に反応はない。
しかし、掴み方がどうにも起きている気がするので変顔をして顔を近づけたら耐えられなくなったのか吹き出したのでそのまま一階に一緒に行く事にした。
「ねえ、ライリー。おはようのキスもしてくれないの?」
「え? してほしかったのか? したらしたで酒が残っているからまた寝てしまうと思うけどな」
「ああ。それもそっか」
朝食をソフィアと食べているとカセムもやってきた。
「昨日の夜は何とも言えない気分だったな」
「まあな。見ている方も興奮したりヒヤヒヤしたり汗が吹き出したり忙しかったな」
「結局、心配は無いみたいだったな。まだ王国から結果は来ていないようだが?」
「ああ。夢に出て来た聖女が言うには心配ないし、裏切る事も無いそうだ。王国にも行きたいようだが、農場あたりと最初に行った港街で数年を過ごさないと王国領には入れないって言っていたぞ」
「それなら大丈夫か」
「あっさり信用するんだな?」
「前にプリーストのメアリーも言ってたじゃねえか。お告げをする存在だって」
「俺はエリンという少女からも聞いたが? 王国ではそういう存在が一般的にいるという事か?」
「一般的というより、当然というところだね。いつも私たちを見ている高度な存在がいるという事は分かっていて違う世界から見守っていて、一人で一人を担当している事もあれば一人で複数人を担当している事もあるし、一人に何人も担当している人がいたりと、色々だよ」
「でも、前の世界では別の人間か? みたいなのも夢にしょっちゅう出てきてはもっともらしい事を言うのも何人も居たが当たった試しがなかった。まあ、多分、この世界とじゃ訳が違うんだろうけどな」
「ライリーにも王国の兵器工廠から渡された専用チョーカーがあるよね」
「ああ。コレか」
「そう。それは夢でも目が覚めててもそうなんだけど、悪意ある存在を生きているかどうかは関係なくなるべく近づいてこないようにするためのものなんだ。人によって魔力も違うから専用になってるんだけどね」
「だからか。前の世界じゃいくらお守りを持っていても嫌なヤツがしょっちゅう現れていたがこのチョーカーを装備してからはそういうのが寄ってきたというのが記憶にないな」
「といっても、必要な場合は近づいて来るようになっているよ。王国である程度は操作できるからね」
「それは初耳だな」
「そういえばライリーはかなり急かされて行かされたのもあるけど、装備については実地で理解するようにするって言っていたからそれじゃない?」
「確かにそう言っていたと思う。が、整備兵は何も言ってくれなかったんだが?」
「それはライリーが自分で手入れをしていたからじゃない?」
「普通はそうするもんじゃないのか?」
「ある程度はするんだけど、ある程度は使ったら整備兵に渡すか、武器屋で調整してもらうよ」
「まあ、要はそこまで使ってないということだな。穏便に済んでいるので良いことじゃないか」
「ああ。それなんだがな、今回の作戦が終わったらどう見ても再調整しないといけない状態なので預かる事になると思うぞ」
「ファンタジー世界と言えば武器屋なのにまだ入った事がないので王国に戻ったらどうやっているのか見る事にしよう」
そんな事を話しながら朝食を食べ終わると、昨夜の娼婦と魔族が密輸をしている現場を押さえるための打ち合わせをしないといけないので馬車の修理が終わっているかを見に行く事になった。
大通りをしばらく歩くと整備工場に着いたのでどうなのか尋ねようとしたらまだ外装の修理をしていた。
「そこの鉄板の位置は、あと数ミリ下! あ、いや右だ右!」
「この位置に固定するとフレームに当たるぞ。もう少し上だ! もっと、もう少し、あ、いや後もうすこし下だ」
少々、手こずっているようではあるがほとんど仕上がっているように見える。見ていると作業員が近づいて来た。
「よう。あと少しで仕上がるぞ。昼過ぎには渡せると思う。このフレーム近くの鉄板が多分、森の中でも通って来たんだろ? 硬い木にでも当たったんだろうな張り替えないといけない状態だったから張替えてるところだ」
「そうか。ならよろしく頼む」
打ち合わせはなるべく話を聞かれないようにする必要があるので快適で安全な馬車の中が望ましいがまだ修理が終わっていないのであれば宿の部屋で魔道具を使ってするしかないだろう。
しばらくして宿に戻り、カセムの部屋に集まり盗聴対策をしてから打ち合わせをはじめた。カセムが作戦について話す。
「さて、ちょうどさっき王国から作戦について情報が送られてきた。彼女についてはライリーが言った通りだった。これから作戦に加わってもらう」
「そう。よろしくね。これからどうすればいいの?」
「まずはコレが港の見取り図だ。多分、奴らは普段この部屋に集まっているんじゃないか?」
「そう。そこよ。後は、この部屋に怪しいものでも隠しているんじゃないかしら。いつも鍵をかけて注意深く出入りしているのを見るわ」
「ん? 仕事で行った事があるのか?」
「ええ。あるわ。というか、あそこに密輸品を集めていたのかしら。かなり目立つ場所だと思うんだけれど」
ライリーは言った。
「怪しいものでも堂々として怪しくないと思わせる方法もあるからな。俺も前の世界でそれらしいものを見た事がある」
「そうなると私は前に行ったこの部屋で魔族から話を引き出せばいいのかしら?」
「そうだ。魔道具で何を聞き出すかは随時、指示する。まずは倉庫のブツをどこに輸出するのか、どこから仕入れたのか、密輸する魔道具は何に使うのか。最低限、この情報は必要だ」
「わかったわ」
打ち合わせも終わり、夜になると魔族が店に現れた。これから港について来ないかというので娼婦も着いていった。
通信で連絡が入ったのでカセムらも港の近くに向かった。
店の近くに海岸があるが、そこをしばらく歩いたところに港がありそこの港湾事務所のような建物に入ると例の魔族がいた。
カセムらは娼婦と魔族を監視する部隊と指示を出す部隊に分かれて待機する事になった。指示を出す部隊はカセムと魔法士らで構成され建物の使われていない部屋で盗聴対策をした上で指示を行う。
監視する部隊はライリーらで隣の部屋から様子を伺い、娼婦が危険な状態になったり、いざとなったら透過矢で魔族を倒すという算段である。
『こちらカセムだ。ライリー、位置に着いたか?』
「ああ。着いた。魔道具で様子を見ているが部屋には五人の魔族がいるな。人間も一人いる」
『よし、では作戦開始だ』
娼婦が魔族と話しだしたので皆、息をひそめて武器を構えた。




