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第42話 渓谷沿いを飛ぶ

 馬車に戻った二人は村を見て回っている時に頼んでおいた食事が届いていたのでそれを皆と食べて、これからどうするかを話していた。まずは、カセムから説明があった。


「この村は次に向かう港町まであと数日のところにある訳だが、なにせこの先も道が悪い。そのため、しばらく補給と調整のために滞在しようと思っていたんだが嫌でも滞在する事になってしまった」


「ああ。ここに戻る時にやたらと飛竜が飛んでいるのを見たがそれか?」


 ライリーは尋ねた。


「そうだ。あの飛竜はこの村からしばらく行ったところにある紛争地帯から飛んできた竜で、さっき馬が聞いたら乗っていた兵士がやられたからこの村に飛んできたらしい」


「それはまずいな。取り戻しに来るだけならいいが、ついでに攻めて来られたら面倒な事になるぞ」

「それなんだが、王国に確認したところ既にこちらに向かっているそうだ。この村は物資確保のために攻めて来ると千里眼で確認された」


「ある意味便利な事だが、この紛争に王国が関わるのか?」

「それがな、この紛争の相手は魔王軍だ。それにこの村は王国に昔から協力的な村だから防衛せよとの事だ」


「面倒な事だ」

「お兄さんは正義の味方じゃないの?」


 ふと、外を見ると昼間の少女がいた。ライリーは答えた。


「俺は正義に従った行動を心がけているが、正義の味方ではないと思う。それこそ、ここは魔族領だ。正義が優位な訳ではないし、正義が優位なところへ行きたければ王国へ行けばいい」


「そうだよね。王国に行けばいいんだよね……」


「まあ、でも本当に行きたいと思わないと行っても暮らしにくいだろうし、今回はこの村を助けろとの事だ。なのでこれが片付いたら……」


「いや、それ以上は言わないで。私はきっとまだ王国に行くべきタイミングでは無い気がするから」

「そうか。わかった。それで、敵が攻めてくるって話だろう? 村長の家に行けばいいのか?」


「うん。案内するね」


 そう言うと、少女に案内され、村長の家についた。村長は言った。


「いやはや。お客人には申し訳ない事で……」


 申し訳なさそうに言う村長にカセムが今回は王国軍が助けに入る事が出来るのでどうすればいいかを尋ねた。


 すると、この村には二十人規模の自警団があるが明らかに数が足りないので既に近くの村々に伝令を出しており、ギルドの応援とこの地域にある国の軍隊もきっと来てくれるだろうとの事だった。


 カセムが敵の到着までは馬が飛竜に聞き出した内容からして三日というところらしく応援は間に合いそうにないが、敵の規模からして魔法士が大火炎魔法を使えば、敵を集めて使えば、まず全滅する規模だという。


 問題は密林地帯であり、更地にするわけにはいかないのでどう効率的に攻撃を仕掛けるかが問題である。村長に何かいい場所は無いか尋ねた。


「村長、我々には大火炎魔法が使える魔法士が二人いる。敵の規模は王国から来た情報だと一か所にまとめれば一撃で始末出来る。

 しかし、それでは一帯が更地になってしまう。どこか敵をまとめられる場所はないか?」


「そうですなあ。この村の自警団で対応する時ですが、敵がこの村に攻め入るためには崖を登るか狭い道を通って来るか、飛竜を使って空から来る、という手段になりますな」


「飛竜は既に村に何頭か来ているが、乗っていた兵士が全てやられている事から、相手は空戦が得意か、地上からの狙撃が得意という事なのだろうか?」


「向こうの紛争地帯もこの辺りと同様、密林地帯ですからな。木々の間に隠れて狙撃したり、崖に穴を開けてそこから撃ってきたりとそういう戦い方は多いですな。後は静かに後ろから近づいて倒すというのが多いですな」


「そうなると空を飛ぶこと自体が危ないな」


 話し合いは翌朝まで続いた。戦い方を聞いた感じだと、前の世界で言うゲリラ戦のような戦い方だ。

 この辺りではほとんど弓かボウガンが遠隔武器で、後は魔法を使った攻撃が多いようである。


 こうなると魔法士はなるべく千里眼を使って敵の場所を割り出してから狙撃をして追い詰めるのが得策だろう。魔法士によれば千里眼を使って一人ずつ狙いを付けた後にまとめて一斉に遠隔攻撃を仕掛ければ範囲内の敵を短時間で片づける事も出来るという。


 しかし、その方法は魔力の消費が激しくないかと確認すると一度撃つとしばらく撃てなくなるというのでゲリラ戦で危ないのは隠れていた敵がまとまって出てくる時に対処できるかもあるのでなるべく使わない方がいい手段だろう。


 夜が明けたがまだ二日あるのでその間にやってきた飛竜を調教できないものかと尋ねると、魔王軍にいるのはもう嫌なのでこの村のために戦いたいと言うので特に調教は必要なくなった。


 貨物用や移動用の飛竜と違い、戦う事の出来る飛竜なのでそのまま出る事が出来るのはかなり有利になるだろう。こちらも準備が必要なので周囲の地形と敵が隠れるならどこかの確認、進軍ルートの確認をする必要があるので飛竜に乗せてもらう事にした。


 ファンタジー世界っぽい事が出来る事に感動を覚えたライリーは早速、乗ることにした。ヒロインと飛竜に乗るのは憧れでもあったので、ソフィアと乗る事にした。


「こうして竜の背に乗り、空を駆ける。これぞファンタジー世界だな。俺のいた世界では飛竜にヒロインと乗るのは憧れでもあったな」


「ヒロイン? じゃあ、ずっと一緒に乗ってあげる。この世界でも飛竜に乗る事はあまりないから憧れるっていう人は多いよ」


「なら、これはこの世界でも特別な経験なのか。ソフィアと乗れて最高の気分だ」

「まあ、王国にある牧場に行けば乗せてくれるんだけどね。この世界のほとんどの人は王国民じゃないから特別な経験にはなるのかもね」


「何かソフィアはこの村に来てから言い回しがやさぐれている感じがするな」

「そりゃあ、この村の娘たちの服の隙間を必死に見ようとしているのが分かるから何とも言えない気分になるね。私の事は見ないのに」


「いや? 前に海水浴をした時はずっと見ていたぞ? ソフィア程の美少女から目を離すのは難しいな」

「……何か、恥ずかしくなってきた」


「なら、ちょうど敵が隠れられるところがないかを探さないといけない位置に来たから洞窟とかがないかを探すぞ」

「う、うん。そうしよう」


 これから、渓谷沿いに洞窟が無いかを見ていく訳だがかなり範囲が広く、木が生い茂っているのでかなり骨が折れる事になりそうだ。当然ながら目視だけではきついものがあるのでソフィアの魔法でそれっぽいところがないかも調べていく。

 しばらく飛行し、二時間ほど経った頃だろうかソフィアがもじもじしだしたので一旦、着陸する事にした。


「この辺りは蒸し暑いけど、やっぱり空を飛んでいると体が冷えるね」

「そんなに上空でもないが、ずっと風を切っていると冷えてくるよな」


「……魔物はいないと思うけど、見張っていてね」

「わかった」


 周囲を見てもそれらしい気配は無いが野生動物の鳴き声は常にしているのでこの中にモンスターの鳴き声が混じっていたとしても分からないので気は抜けない。


 そんな事を考えているとモンスターが現れた。が、普通に話しかけてくるので敵ではないようだ。アリアドネのような見た目の植物モンスターで女性の見た目をしている。


「よう。森に肥料をやっているのかい?」

「そんなところだ。ところで、君はアリアドネなのか?」


「そうだよ。私はアリアドネだ。ここらじゃ後はキノコみたいなヤツがいるな」

「敵かと思って心配したが大丈夫そうだな」


「特におかしな行動をしているようには見えないからな。攻撃する必要もない」

「ところで、魔王軍が近いうちに村に攻めてくるんだが、ここらに敵が隠れられるような場所はあるか?」


「この辺りはないよ。ただ、土が柔らかいから穴は掘りやすいのと、急斜面があるので潜んで狙撃するには絶好の場所かもよ」

「なるほど。ありがとう。来るまであと二日ってところだ。君らも気をつけてな」


「ああ。お互いにな」


 そう言うと彼女は去っていった。ソフィアも戻ってきたので偵察の続きといこう。

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