第2話 新たなる世界①
暖かな光が窓から差し込んでいる。上品なベッドに良質なシーツ。これぞ貴族の客間という光景だと感心していると、ふと横を向くと少女の寝顔があった。転移したのが夢でなかったというのと、こんな可愛い子が隣で寝ているというのが夢ではないというのは何と幸せな事だろうか。
夢に出てきた女性は体がすごく軽くなっていると言っていたが確かに軽い。前の世界での体の重さが嘘のようだ。次に具現化能力であるがこれは作るものや現実化するとこの世界にとっても都合の悪い事になるものとかがあるかもしれないので慎重に使っていく事にしよう。とは言っても、まずは起き上がらなくてはならない。
起き上がると少女も気が付いたのか目を覚ました。
「おはよう。ポーションを飲んだら急に寝ちゃったから部屋に運んだんだよ。何かあってもいけないしと思って横で見ていたら私も寝ちゃった」
「ありがとう。俺も酔いすぎたな。迷惑をかけた」
「ううん。それはいいんだけど何であんなに酔っていたの?」
「向こうの世界では仕事やプライベートが酷い有様でね。会社では嫌がらせをされ続けて体を壊してしまって仕事を辞めたんだ。いくら頑張っても恋人も出来ないし、友人たちは結婚して幸せそうにしているが、俺にはいない。良い未来が全く想像できないこの地獄から抜け出したいって思っていたんだ。
そんな時、友人が酒でも飲みに行こうと誘ってくれたので飲みに行ったんだ。飲み屋で憂さ晴らしに酒を飲みまくった。それが理由だよ」
「そんな酷い毎日を送っていたの? 可愛そう……」
「だろう? 普通、ああいう苦しい時って理解ある彼女が出来て、癒してくれて心身ともに健康になって彼女のために、新たに生まれる家族のためにと仕事を頑張ろうとか思うが、そんな事は全くなかった。誰も俺を愛してくれなかった……。
もうあの世界には帰りたくないな。愛がない。愛が無さ過ぎてもうあの世界では生きていけない。まあ、あの世界では地獄みたいな人生を歩む運命だったのかもしれないが?」
「そう! それを言おうと思ってたんだ。あなたが元の世界に帰る方法はわからないんだ。それにあの扉がどういう理由で異世界に繋がったかもわからないし。でも、帰りたくないなら安心したかな。私の名前はソフィア。あなたは?」
「そうだなあ。前の世界の名前だと違和感がありそうだから、この世界ではライリーとでも名乗っておこう」
「向こうの世界での名前はなんだったの?」
「一郎だよ」
「そうなんだ。じゃあ、ライリー、これからよろしくね」
「ところで昨日の夜は魔法でポーションを作ってたのか? 俺のいた世界では魔女が大釜でポーションとか、若返りの薬とか色々と作るってのがあったんだ。まあ、遥か昔の話だけど」
「そうなの? あの釜は薬とかを作る用の釜だから薬草とかを煎じたり、煮たり、炒めたりする事がほとんどだよ。魔法は使ってないよ」
「そうなのか。じゃあ、あれは薬を煎じていたっていう事になるのか?」
「そういうこと。あのポーションは領地の農家のみんなが収穫期で疲れていると思って飲んでもらおうと作っていたんだ」
「へえ。俺も向こうの世界では薬草を使った薬を治療のためによく飲んでいたよ。こっちに来てからは健康になったみたいだから飲む機会は減るかもしれないな。それに農業も仕事としてやってみたいなってのは思っていたな」
「じゃあ、私の家で働かない? 薬を飲んでいたのなら領地で作っている薬の効果も何か分かるかもしれないし、農業もこの領地は農業が盛んだから色々とする事があるよ。そういえば本業は何をしていたの?」
「事務仕事とかをしていたよ。雑用も多かったけど」
「まさに適材だよ。私の家は領地の管理もしているから、その管理の仕事の一部もしてもらえるとありがたいんだけど、どうかな?」
「俺に出来る事があるなら喜んで引き受けるよ。住むところとかも無いからこのまま住み込みでいい?」
「住み込みでもいいし、空き家があるからそこで暮らしてもいいよ。私はここで住み込みで働いてほしいかな」
「う~ん……じゃあ、普段はその空き家で生活して必要な時にこの屋敷で生活するというのはどうだ? その方が俺も気が楽だしな」
「え……うん……そう。じゃあ、お父様に話してくるね」
「ん? ちょっと待て! その恰好で行くのか?」