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 難なく侵入者を撃退した俺たち。勝利の余韻(よいん)(ひた)るのは後にして、まずはDPの確認だ。


 2137DP


「「「――って減ってんじゃねぇか」」」


 俺と本郷と小早川の声がハモる。そこで今回の功労者である和人が透かさずフォローしてきた。


「ま~ま~、こっちも色々とあったんだよ。こんな状況だと過剰なストレスは団結を揺るがすって話になってさ、各々の個室と大浴場を追加したんだ。それに死体は吸収前。DPに加算するのはこれからさ」


 大浴場は……まぁ魅力的か? 不潔で過ごすよりかは百倍マシだが。あとDPの加算がこれからと聞いてひとまず安心した。


「だから言ったじゃん、個室にバスルームを完備してって。そうしたら大浴場は要らなかったのに~」

「でもそれだと会長が予算オーバーがどうとか騒ぎ出したのですわ。やむ無く大浴場で妥協して差し上げましてよ」

「藍梨くんに永遠くん、それをやると2000ポイント以上は確実に消費すると言ったではないか」

「も~ぅ、会長の石頭!」

「所詮は会長も小早川と同じ穴の(むじな)という事ですわ」

「いや、俺は石マニアであって石頭じゃないんだけれど……」


 一連の流れを見て「な?」と言いたげに肩を(すく)める和人。なるほど、無駄を省いてコレになったと。なら納得せざるを得ないな。


「ですが皆さん、ここで注目デスよ。今回の侵入者で何ポイント入手できるか、それによって生活基準も変わるのデス」

「「「おお!」」」


 瓶底の台詞でにわかに活気付く。そうだよ、1人で千や万を越えればもっと余裕が出てくるじゃないか。


「では行くデスよ、DP変換!」


 2137DP→2241DP

 2241DP→2363DP

 2363DP→2454DP


「「「お、おぉぉ……」」」


 まるでバーディーパットを外したプロゴルファーに送られるようなタメ息が辺りに漏れる。1人当たり100ポイントとは何とも微妙なところだ。

 考えてみりゃそうか、あのダンマスで22ポイントだったんだ、かませ犬ポジのモヒカン共に高値が付くはずない。


「合計で317ポイントだったんだね~。これって装備品も込みだから~、やっぱりショボ過ぎて草なんだよ~♪」


 いや言うてる場合か緑川さんよ。こんなん大恩寺の三食で軽~く吹っ飛ぶがな。


「だが望みはまだある。鳥居くんたちの報告によれば、外にはまだモヒカン連中の仲間がいそうじゃないか。ならば彼らをここに誘導し、ボクらの糧となってもらうのだ」

「それな。プライベート空間の設置は一旦中断しといてやな、まずはトラップを充実せなアカンやろ」

「うむ。加瀬くんの意見はもっともだ。外の探索は後回しにしてダンジョンの防衛力を高めるとしよう。それでは入口、中間、深部、最深部の4つに分かれてアイデアを出し合おう」


 つ~わけで次はトラップの設置だ。ポジティブな俺とステゴロに自信がある本郷、弓道部のお那須(なす)さんに歴女の安土(あづち)で入口を担当する事になった。

 あれ? 俺の説明だけポジティブだからとか、ひょっとしてバカにされてね?(←気のせいです) まぁいいか。


「なぁ、1つ思ったんだけどよ、落とし穴で足の踏み場を無くしちまえば絶対に進めなくならねぇか?」

「らしくないなぁ本郷。お前から戦闘を拒否するなんて」

「これが俺1人ならこんな提案しねぇよ。けどよぉ、俺が死んだらお前らだって巻き添えで死ぬんだぜ? んなもんあの世で顔向けできっかよ」


 つい失念しそうになるが、俺たち15人は各自で行動できる代わりに誰か1人でも死んだら連帯責任みたいな感じで全員が死んでしまうんだ。

 厳密には死んでから24時間以内に蘇生しなければ全滅するらしい。今の俺たちに蘇生する(すべ)はないし、実質死人が出たらゲームオーバーってわけ。


「本郷の言う通りだな。戦闘を避けるのは生き残る上で重要と言えるだろう。しかしこの世界は未だ解せない部分が多い。人が越えられない範囲の落とし穴では設置できないらしい」

「「え?」」


 お那須さんに言われて俺と本郷も設置を試みるも設置不可との表示。どうやら入口からダンジョンコアまでのルートは絶対に確保する必要があり、侵入を鉄壁に阻止するのはシステム的に不可能という事が判明した。


「どうあっても戦えってか? 上等じゃねぇかゴルァ! いざとなったらステゴロで相手してやんよ!」

「本郷、自分で言ったこと忘れんなよ……」


 しかし本格的に頭を使う必要があるな。トラップを避けられた後の事も考えなきゃダメだ。

 取り敢えず頭の使えない本郷には後々拳で語ってもらう事にして、残る3人で知恵を絞ることに。


「やっぱシンプルに落とし穴をテキトーに配置して嫌がらせするのが一番か?」

「しかし鳥居、それだと運任せになってしまう。仕留めることが出来なくとも相手の行動を限定的なものにさせ、対処しやすくするというのも1つの手ではないか?」

「おお、さすがお那須さん良いこと言う。それで具体的には?」

「あ、後はお前が考えろ!」


 はい、ノープランと。その考えるのが難しいんだけどねぇ。

 しかしこれまで黙っていた歴女の安土が口を開く。


「考えたのだけどね、罠を二重三重にして1つを外しても他で仕留めるという仕組みを作るのが最良だと思うんだ。そこでだ、ボクが提案するのはこのようなトラップさ」


 落とし穴→何も無し→落とし穴→何も無し→落とし穴


「おいおい、それだと単純に並べてるだけじゃないか」

「その通り。1つ目と2つ目の落とし穴は連続では置けない、それでも置くのならこの形になるのだが、これだと次の落とし穴も予測されてしまい非効率的だ。そこで……」


 落とし穴→何も無し→落とし穴→何も無し→落とし穴に偽装した地面→落とし穴」


「このように施す事で侵入者は無駄な回避行動を取るようになり、その結果警戒していたはずの落とし穴に掛かってしまうというオチさ。織田信長公の三段構えとは少々異なるけれどね。言うなれば三段構えならぬ三段落ちというところかな」

「なるほどな!」


 各班に割り振られたDPは200、落とし穴は10ポイントだが3つのうち1つは元から設置されてたんで20ポイントの消費で済む。偽装は手作業でそれっぽく作ればいいから20ポイントでワンセット完成か。


「良いんじゃないか? 他にも作ってみようぜ」

「うむ。次は落ちてくる天井だが――」


 安土の提案で次々と罠を設置していく。落とし穴の他には落下天井(←ゆっくりと落ちてくる天井)と壁弓(←壁から発射される弓矢)、それからモンスタートラップ(←踏んだら魔物がでてくる罠)も追加したぞ。これで合計140ポイントだからまだ余裕はある。


「凄いな安土、よくこんなに思い付くもんだ」

「フフ、ある有名作家は次のように述べたそうだよ。空白の部分を考える、それが私の喜び――とね」


 その空白が見事に埋まった感じだ。トラップ全般は安土に委ねるのもありか。


「こりゃもう安土に足向けて寝れな――」

「ちょっ鳥居! そこに小早川から借りた工具箱が――」

「へ? ――イデッ!?」


 本郷の忠告も虚しく俺の足は工具箱を蹴ってしまい、そのまま前方に倒れ込む。そこにはお那須さんと安土が立っており、2人を巻き込む形で転倒した――



 ムニュ……



 ――だけならまだよかった。だが俺の両手には柔らかい2つの感触が……


「ん? この手触り……ダンジョンってこんなに柔かったっけ? もっとゴツい感じだったと思うんだが――ひぃ!?」


 顔を上げた先には、鬼の形相をしているお那須様と絶対零度の瞳で見下ろしている安土様がいらっしゃいました。


「貴様……どさくさ紛れに何をしている……」

「あ、いや、これは故意ではなく、不可抗力というやつで!」

「……で、キミはいつまで触っているんだい? このまま続けるのなら変態という烙印を押さなければならないのだが?」

「え? それだけで良いの?」

「「良いわけあるか!」」



 バチバチ~~~ン!



 こんにちは、鳥居進です。すっかり紅葉の季節が訪れたようでして、俺の両頬にも真っ赤なモミジが彩っております。明日には消え去るので今日が見納めでしょう。


「という事ですみませんでした!」

「何が――という事なのか分からないが、反省してるのなら許すとしよう」

「そうだね。他の班も気になるし、休憩がてら様子を見に――」



『キャーーーーーーッ!』



「今のは藍梨の声! まさか入口以外から敵が!?」

「急ぐぞお前ら!」


 瞬時に反応した本郷を先頭に奥へと走るのだが、先に現場に着いていた会長から聞かされたのは何とも拍子抜けするものだった。


「見ての通りだよ。大浴場から戻ろうとした藍梨くんと入ろうとした利根川くんがブッキングしたのだ」


 道理で和人が裸なわけだ。


「ほんっと信じられない! アンタ最低よ、この変態キザ野郎!」

「俺は悪くねぇよ! 今の時間は男が使う時間帯だろ!? 何で藍梨が入ってんだよ!」

「だから上がろうとしたんじゃない! なのに堂々と入って来たのはアンタよ!」

「時間過ぎてからじゃ遅ぇんだよ! だいたい下着しか見てないんだからそんなに怒んなよな!」


 一応補足すると、大浴場は男子の時間帯と女子の時間帯を2時間置きで設定してるんだ。藍梨が時間をオーバーしたせいで鉢合わせたんだろう。


「落ち着きたまえ2人とも」

「「でも会長!」」

「つまるところ、キミたち2人はサボタージュという事だね?」

「「あ……」」


 はい御愁傷様~。今晩のオカズは1品のみの刑な。



★★★★★



 突然だが俺様の名はボレガー、ちょいと名の知れた盗賊団ハングリーズの幹部だ。今日は守備の手薄な町があるってんで遠路遙々(えんろはるばる)やって来たのさ。


「ボレガーさん、これで町の北側は全滅でさぁ」

「おぅ、ご苦労だったな。後は南側が終わるのを待つだけだが……ま、大丈夫だろ」


 せっかく来たんだ、向こうが終わるまで略奪タイムと洒落込もうかぁ!


「ボ、ボレガーさん大変だ、団員3名が屋内に入ったまま行方不明になりやした!」

「なにぃ!?」


 罠にでも掛かりやがったか? ったく、これだから無能な下っ端は面倒なんだ。


「どこで行方をくらませた?」

「こっちです!」


 案内されたのは何の変哲もない倉庫だ。


 ギィィ……


「中は空か」


 樽と木箱が隅に積まれてやがるが他は何もない――いや、人1人がやっとこ入れる入口みてぇなのが奥に見える!


「連中はこの中だろう。――おい、誰か様子を見てこい」

「へぃ!」


 中に入った団員がすぐに戻ってきた。


「ボレガーさん、中は洞窟みてぇな造りになってやすが、隠し通路にしちゃ広すぎまさぁ。こりゃきっとダンジョですぜ」

「ダンジョンだと!?」


 ダンジョンっていや奥にお宝が眠ってるって言われてる場所だ。聞いた話じゃエリクサーを持ち帰った奴もいるらしい。

 けどダンジョンマスターっていう厄介な奴が管理してて、侵入者を殺すためのトラップや魔物をたんまりと設置しているとか。


「まさか3人が返り討ちに合ったってのか? へっ上等だ、殺せるもんなら殺してみろってんだ。逆に宝だけキッチリ奪ってやる。行くぜ野郎共ぉ!」

「「「へぃ!」」」


 さぁて、何が出てくる? 町の連中は手応えがなくて面白くねぇと思ってたんだ。


「うわぁ!」


 先行していた下っ端の叫び声。肝心の姿が見えないと思ったら、静かに地面が閉じていきやがる。つまり下っ端は落とし穴の中だ。


「チッ、バカ野郎が。落とし穴なんぞにハマりやがって」


 こりゃ行方不明の3人はトラップで殺られたかもなぁ。


「いいか野郎共、地面をよく見ろ。トラップと普通の地面は見た目が違う。扉状になってる繋ぎ目を飛び越えるんだ!」


 よ~く見てりゃ避けれるトラップだ。それにこういったトラップは立て続けに置いてたりはしない。舐めてんのかとも思うが舐めてくれるんなら有難い。


「落とし穴は全部で3つか、俺が一番乗りだぜ!」

「バカ言え、俺が先に――」


「「――うわぁ!?」」

「「「!?」」」


 3つ目を飛び越えたはずの2人が有るはずのない落とし穴で中に消えた。


「……ど、どうなってやがる、トラップは連続して設置されないはず。まさか法則は嘘だってのか!?」

「いえ、違いやす。原因はコレでさぁ」

「ん? ――って、何だこりゃ!?」


 団員が足で擦っただけでトラップの模様が消えちまった。まるで落とし穴が有るかのように描かれた地面の先に、本物の落とし穴が待ってやがったのか!


「ダンジョンマスターってのは少しは賢いらしい。お前ら、油断してっと命はねぇぞ!」

「「「へぃ!」」」


 改めて団員に渇を入れて先に進む。町の襲撃には殆ど無傷だってのにダンジョンに挑んで犠牲を出したんじゃ意味がねぇ。



 ググググ……



「あん? 何の音だ?」

「ボレガーさん、天井が!」

「天井? ああ、落下天井か。――テメェら落ち着け、先行組だけ奥に走れ! それ以外は手前に引き返すんだ」

「「「へぃ!」」」


 落下天井の速度は遅い。気付くのが遅れない限り回避するのは容易だ。少し経てば上に戻るし、そん時に進めば楽勝ってな!

 だが駆け抜けた連中の声は俺の予想に反するものだった。


「な、なんだ、先に進めな――うわぁぁぁぁぁぁ!」

「クソッ、ダメだ、進めないし戻れな――グゲェェェ!」

「お、おお、お頭ぁぁぁ――ガァァァ……」


 今のは断末魔!? 通路の先は続いていたはず。いったい何が起こったんだ!?


「ボレガーさん、階段が!」

「なっ!?」


 よく見りゃ落ちてきた天井の上っ面に階段が備わってやがる! 上に行くのが正解だってのか!?


「どうしやすボレガーさん?」

「……一旦見送れ。通路の先で何が起こったのか確かめるんだ」


 天井が元の位置に戻るのを見届け、通路の先に目を()らす。


「……どういうこった? 俺には普通の通路にしか見えねぇ」

「アッシもでさぁ。けれどアイツら、死ぬ間際に進めねぇとか言ってやした」


 進めない? 見えない障害物でも有るってのか? そんなトラップは聞いたこともないが。


「…………。おい、誰か弓を持ってる奴、奥に向かって撃ってみろ」

「へぃ、俺がやります」



 シュッ――



 ――カン!



「何ぃ!? 空中で弾かれただと!?」


 なんてこった、マジで見えない壁じゃねぇか! クソッ!


「ど、どうしやすボレガーさん、このまま進むのは危険なんじゃ……」

「ああ!? ここまでコケにされて引き返せってのかぁ!?」

「とととととんでもねぇ! ボレガーさんに付いて行きやす!」

「フン。だったらもう一度落下天井を作動させて来い」

「へ、へぃ!」


 ここまでで既に6人も――いや、最初の3人を含めりゃ9人も殺られた事になる。残りの団員は8人、何としてでも宝を強奪しねぇと割に合わねぇ。


「落ちてきやしたぜ」

「おぅ、階段を上るぞ」


 そのまま天井に潰されんじゃないかとヒヤヒヤしたが、更に上にスペースが空いてやがった。少し進むと今度は下り階段になり、最後は5メートルくらいの高さで途切れた。


「フン、こんくらいの高さなんざ何にも問題ねぇ、落ち着いて飛び降りれ――ん?」


 飛ぼうとしたが、何かの血が透明な何かに付いてるのが目に止まる。位置的に先行させた奴らの血だ。


「ハッ、なるほど。この透明な壁に邪魔されて先に進めなかったわけだ」


 ガラスとは違う。踏んでも割れない強度を持ってやがる。

 でもって下りた先には左右への分かれ道ときた。


「どうしやす?」

「よく見やがれ、右方向の壁には穴が見える。ありゃ弓矢が飛び出てくるトラップに違ぇねぇ」

「分かりやした、左に進みやす」


 次も同じ仕掛けの分かれ道、その次にも同じのが出てきやがった。


「今度は左に穴が見えまさぁ。右に行きやすぜ」


 だが俺は失念していた。ここのダンマスは頭が良い。単純な罠は仕掛けてはこないって事を。



 ガコン!



「ひぇ~~~!?」

「おい!? ……クソガッ!」


 油断した! 壁に目が行くあまり足元の落とし穴を見逃してたか!


「って事は左が正解っすね――」

「いや、待て、早まるな!」



 ザクザクザクッ!



「――ギヒャーーーッ!?」

「チッ、だから言ったろうが!」


 左は見えてた通り壁弓のトラップだ。だが正解が無いわけがない、必ず最深部に辿り着ける構造にはなってるはず。


「分かりやしたぜボレガーさん! この行き止まりに見せた壁、ここにスイッチが有りまさぁ!」


 ポチッ!



 ゴゴゴゴゴゴ……



 なんて事はねぇ、行き止まりだった壁が上にスライドしていきやがる。そんで本物の通路とご対面か。

 クソッタレが、悪趣味なダンマスだぜ。


「テメェら、足元や天井、壁にも目を凝らすんだ。絶対に引っ掛かるなよ!?」

「「「へぃ!」」」


 そこから間も無く、初めて開けた場所に辿り着いた。いよいよ大詰めか?


 ゴン!


「イデッ!」

「あん? どうした?」

「見えない壁ですボレガーさん! それに所々に壁や鏡があって、進みずらくなってまさぁ!」


 進みにくいだけか? それならトラップよりマシだ。そう思ったのだが……


「うわぁ!? で、出たぁぁぁ! 魔物が出たぁぁぁ!」

「魔物だと!?」


 団員の1人がそう叫ぶが、魔物の姿は見えない。鏡で見間違いやがったな?


「おい、落ち着け!」

「い、嫌だぁ、死にたくねぇぇぇ!」


「うわっ!? 止めろ、剣を振り回――ぐわぁ!」

「バカ、落ち着け――グホォ!?」


 マズイ、1人がパニックを起こして無差別に仲間を斬りつけてやがる!


「止まれ、バカ野郎がぁ!」

「グエェ!?」


 やむ無くパニクった奴を斬り殺した。これで残りは5人、進むには無謀か?

 そう思った矢先、団員の1人が泣きながら逆走を始めた。


「も、もうダメだ、みんな死んでしまうぅぅぅ!」

「お、俺だって嫌だ、こんなところで死にたくねぇ!」

「おいテメェら!」


 更に1人が同調しやがった。残ったのは負傷した団員2人と俺だけ。悔しいが引き返すしかない。


「チッ、撤退だ」

「「へぃ」」


 幸い道は覚えている。戻るだけなら簡単だ。侵入者が帰るってんならダンマスも手出しはしないだろう。




「うわぁぁぁ!? く、来るなぁぁぁ……アガァァァ……」


 マジかよ!


「キシャァァァァァァ!」

「ひ、ひぃぃぃ!?」


 駆け付けてみりゃ逃げた2人のうち1人が魔物に食われてやがった。もう1人は腰を抜かして尻餅ついてやがる。


「ボレガーさん、カオスセンチピードですぜ!」

「分かってる!」


 4、5人で囲んでから対処するのが当たり前の魔物だ。だが今は相手できる状態じゃねぇ。


「ど、どうしやすボレガーさん?」

狼狽(うろた)えるな。()()を食わせてる間にすり抜けるんだ――こうやってなぁ!」

「え……ひぇ!?」


 腰を抜かしてた奴を魔物に向けて投げ付けてやった。最後くらいは役には立たせないとな。


「ボレガーさん、アレを!」

「ん? 緊急……脱出ボタンだと!?」


 目の錯覚かと思ったが、間違いなく壁に書いてあった。


「迷っちゃいられねぇ。後ろに魔物が居るんだ、脱出できりゃ何でもいいぜ!」



 ポチッ!



 ガコン!



「お、落とし穴だと!? クッソォォォ!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

「ひぃぃぃぃぃぃ!」


 こ、この俺様がこんなところで……



★★★★★



「コラ~安土! 私が作ったミラーハウスに敵を誘導してんじゃないわよ! 血で汚れちゃったじゃない! せっかく遊ぼうと思って作ったのに……」

「これは失礼。でも侵入者は命懸けのスリルを味わってくれたよ。代償は高くついたけれど………ね」


「ヤッホ~♪ とってもキュートなみんなのアイドル神崎藍梨だよ~! え? 本郷の番じゃないのかって? ノンノン、今回の進行役はわ・た・し♪ そこんとこ間違えちゃダメだかんね。じゃあ張り切って登場人物の紹介行ってみよ~!」


 名前:八重樫憲語やえがしけんご

 性別:男

 年齢:16歳

 誕生日:4月1日

 備考:生徒会長に自ら進んで立候補し、見事生徒会長の座に。責任感が強く、クラスの和を乱す行為を見逃さない。真面目すぎて堅物の傾向が強い。


 名前:戸田優奈とだゆうな

 性別:女

 年齢:15歳

 誕生日:7月30日

 備考:生徒会長の八重樫憲語に片想い中で、彼との距離を縮めるため副会長に立候補し、見事副会長の座に。前髪パッツンのショートカット娘。


 名前:瓶底学びんぞこまなぶ

 性別:男

 年齢:15歳

 誕生日:9月3日

 備考:独走状態でトップの成績の天才クラスメイト。いち早くダンジョン機能を理解し、みんなのサポートを行っている。グルグル眼鏡がトレードマークで、語尾のデスを強調する癖がある。


 名前:ボレガー

 性別:男

 年齢:38歳

 種族:人間

 備考:盗賊団ハングリーズの幹部。町の襲撃を行っていたが偶然にもダンジョンを発見し、お宝に釣られて手下と共に挑むことに。しかしトラップの応報で次々と手下を失い、何も獲られず逃走を開始するも逃げ切れずに死亡。


 名前:カオスセンチピード

 種族:ワーム

 備考:最初からダンジョンに召喚されていた巨大ムカデ。冒険者単独での撃破はかなり難しく、主人公たちにとっては頼れるモンスターである。


「さてさて、後書き終了の前にリスナーからの質問が来てるんだよね~。だからサクッと読み上げちゃうね~」(←いつ来たんだよ)


『スクールアイドルでご活躍中の神崎藍梨さんに質問です』

「いいよいいよ~、何でも聞いちゃって~」


『なぜダンジョンにミラーハウスを作ったのですか? 意味が分かりません』

「な~んだ、そんなこと。いやだってさ~、トラップとか考えてたら遊園地のアトラクションが脳裏に浮かんじゃったのよ。そしたら久々にミラーハウスに挑みたくなったってわけ。簡単でしょ?」(←それを単純と言う)


「あ、もう時間無い? 残念だけど今回はここで終了~。まったね~♪」

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