奴、襲来……
ガリアーノの街からやって来た軍隊を撃退し、次の日の朝を清々しい気持ちで迎えた俺たち。
なんと言ってもDPに余裕があるのが大きい。そっとやちょっとじゃグラつかない程のDPを確保できたからな。
ちなみに現在のDPはこちら↓
104851DP
黙ってても日を跨ぐだけで1万以上のDPが入ってくるんだ。そのうち町全体を要塞化しようかって話も出てるくらいにしてな。
「会長、食後のコーヒーはいかがですか?」
「すまない戸田くん。一杯貰おうか」
「トワ、メグミ、外で振り付けの練習するわよ」
「熱心ですわね。他にすることもないですし、よろしくてよ」
「ああ、身体がうずく!」(←誤解を生むから止めましょう)
「お~い、誰かリビングアーマーで対戦せぇへん?」
「いいデスね、演習を兼ねて一つ手合わせ願いますデス」
「あたしもやる~。もっと防衛戦上手くなりたいし~」
じゃあ俺もエントリーっと。しかし平和だ。こんな日が長く続くとありがた――
ズドン!
「「「…………」」」
物騒な音がコアルームの外から聴こえてきたがアラートは無し、つまりは客人か。豪快な客だなぁと呑気にしているのも束の間、酷く不安を覚える声が聴こえてきた。
「いったたたた、着地に失敗しちゃった。周りには……よし、誰も居ないわね!」
忘れもしない、昨日コンタクトしてきたメンヘラ女の声だ。
「す、すまないが、誰か様子を見て来てくれないだろうか?」
「「「…………」」」ブンブン!
全員が拒否の姿勢。こういう時こそ本郷が出るべきなんだが。
「本郷くん」
「な、何だよ? 俺にメンヘラの相手をさせようってのか? んなもん利根川にやらせとけ」
「いやぁ、さすがの俺も専門外というか……」
まぁ誰も相手にしたがらないわな。だが物事には避けられない強制イベントというものが存在し、時には共演者に対してキバを剥くんだ。このように……
バタン!
「ごめ~ん♪ 待った~?」(←待ってません)
ああ、金髪ショートのすんげ~美人な姉ちゃんが入ってきたよ。スカートも際どい短さだし、嫌でも視線がそっちに行ってしまう!
だがイカン、どんなに美人でも相手はメンヘラ。下手な手出しは身を滅ぼす。
「おい、出番だぞカズト。今こそお前のイケメンスマイルが試される時だ」
「だが待って欲しい、初対面で彼女面をしてきた女の子は1人もいない。これはきっと何かの罠……」
「マ、マジかよ、利根川でもダメなら……」
「クッ! 残念だが敗北だ。今の我々に対抗し得る手段はない……」
カズトのみならず本郷や会長もお手上げときた。こりゃ本格的に……
「だ~か~ら~アンタらぁ! いい加減あたし――コホン、わたくしを危ない女みたいな扱いは止めなさいっての!」
「いやだって、どうみてもこれからデートですって格好してるし……なぁ?」
「そそ、そうだね。あ、貴女のような素敵な女性と出逢えたのはとても萎える――じゃなかった、喜ばしい事なんだけれど、その……デートを邪魔するのは紳士的じゃないと思うんだよねぇ……」
「俺らも忙しいんだよ。今日のところは勘弁してくれねぇか?」
「ボクからも頼む! 今日という平和を失いたくはないんだ!」
「ア、アンタら……」
「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉ!」
バシバシンッ!
「「「ブヘェ!?」」」
空中から平手打ちが飛んできたぞ!? まさかとは思うが本物の天使!?
「そうだっつってんだろアホンダラがぁ! 伊達に長年大天使やってねいわよ!」
「しかも脳内の思考を読み取るだと!?」
「それも朝飯前! 大天使なら余裕よ! つ~か大天使様に対して無礼よアンタら! 罰として男共は全員彼氏候補ね!? 1日1人のペースでデートしてやるから有り難く思いなさい!」
なんか好き勝手言われてるな。
「そもそも罰なのかそれ?」
「そうね、わたくしは寛大だから罰を褒美にしてやるくらい器が大きいのよ、分かる?」
いや知らんがなという台詞をグッと喉の奥へと押し込む。脳内詮索も中止だ。
「さ~て、それじゃあお待ちかねの顔面偏差値チェックしちゃおうかしら~、ららら~♪ ふむふむ……うん、手前のアンタは75点で隣のイケメンは90点、そっちの渋いのは70点に、真面目そうなアンタは80点、奥の幸薄そうなのは65点で隣のチャランポランな感じのは70点かな? グルグルメガネはギャップ萌えも期待して80点にして、デカイのは……汚なっ、顔に飯粒付いてるじゃん! アンタな不潔そうだから-50点よ!」
勝手に採点までされてしまった。ちなみに俺は75点な。
「あ、あの~、貴殿の目的をまだ伺ってはいないのですが……」
「目的? 決まってるじゃない、せっかく異世界の人間が来たんだもの彼氏として同僚や部下に自慢したいじゃない? あたしたち天使と違って人間の生涯なんて極僅かなんだから、終えちゃう前に摘まみ食いしたって罰当たらないっしょ!」
「「「摘まみ食い!?」」」
この女、俺たちを襲う気か!(←違う意味でね)
「って事でぇ……うん、今日はアンタにしとくわ」
「なっ!?」
いきなり俺かよ!
「さ、行くわよ。ちゃ~んとリードしてあげるからお姉さんにまっかせなさ~い♪」
強引に手を引かれてコアルームから拉致られようとしている俺。しかしメンヘラ女が扉に手を掛けようとしたその時……
ガチャ!
「ズルいですよせんぱ~い、自分だけ楽しい思いしようとして~!」
「最初に報告したのはトロンたちなのです! そのトロンたちを出し抜くなんて卑怯なのです!」
ここで新たな人物の登場。入ってきたのはメンヘラ女の知り合い――というか後輩らしい2人組の女の子だ。
どうでもいいけどこの2人も胸元が緩くてミニスカだな。
「ルフォンにトロン!? チッ、まさか尾行されてるとは……」
「先輩ったら終始浮かれっぱなしで気付いてませんでしたからね~」
「これは何か有ると思った名探偵トロンは尾行作戦に出たのです。結果は案の定だったのです」
「だったら何? 尾行するアンタらのほうがよっぽど卑怯じゃないの! 揃いも揃って恋路を邪魔して男漁り? はしたないったらありゃしないわ!」
「いや、そんな際どいデニムミニ履いてる方がはしたないんじゃ……」
「空飛んでたら丸見えです、痴女です」
「うっさいわ! 高速移動してたら見えないからいいのよ! っていうかアンタらだって短いじゃない!」
「「いいえ、先輩より1センチ長いです」」
口論なら他所でやってもらえないか、これが俺たち全員の総意であることは言うまでもない。
「とにかく、あたしが――んん! わたくしがここにいる事は絶対に秘密です、よいですね2人とも?」
「じゃあウチらにも分けてくださ~い」
「ですです。じゃないとクロノス様にチクっちゃうです」
「チッ、しゃ~ないわね。1人だけ好きなの選んで良いからバラすんじゃないわよ?」
「は~い! ウチは面食いなんでハンサムなキミにき~めた♪」
「お、俺かい?」
「トロンは頼れそうな人がいいのでキミにするです」
「あ、ああ……」
どうやら俺と同様にカズトと本郷が選ばれてしまったようだ。このまま拒否権もなく連行されてしまうのか――と思ったその時、またしても違う人物たちがコアルームに入ってきた。
バァン!
「ちょ~っと待ちなさ~~~い! あたしらの仲間を勝手に連れ去ろうとしてる痴女軍団は貴女たちね!?」
外に出たアイリが戻って来たらしく、3人組に対してビシッと指を突き付ける。その後ろではトワとメグミが鋭い目付きで3人を見据えていた。
「フン、あたしは天使よ、人間の小娘ごときが楯突く気?」
「誰であろうと関係ありませんわ。無駄に歳を食ったバ○ァには分からないのでしょうけれど」
「……あ"?」
「我が肉体、いまだ衰えを知らず。代わりにユーたち、お肌の曲がり角というフレーズを存じているか?」
「「……ぁあ"?」」
「アンタらのミニスカなんて見てる恥ずかしくなるわ。どんだけ男に飢えてんのよ。ま、百歩譲って見た目はともかく、中身が伴ってなきゃねぇ?」
「「「はぁああああああ"!?」」」
ここで謎のカウントダウン。
3
2
1
「「「ざっっっけんなよ小娘どもがぁぁぁぁぁぁ!」」」
はい、嵐の前の静けさが一瞬で消し飛びました。
「こちとらこの美貌を何百年と保ってきてんだよぉぉぉ! それが数年しか生きてない人間の小娘に分かるかっての!」
「分かるわけないじゃない。そんなのそっちの事情でしょ? それにね、たかが数年の小娘にアンタらは負けてんのよ」
「あ~も~あったまきた! 先輩、コイツら○っちゃいましょう!」
「賛成です。人間に舐められたんじゃ天使の名折れです」
おいおい、物騒になってきたぞ!?
さすがに止めに入ろうとしたら加瀬から思わぬ提案が。
「ほいほい、理由は分かったで~。お互い自信があるんやから、ここは1つ美人コンテストでも開こうやないか!」
「「「美人コンテスト!?」」」
説明しよう。美人コンテストとは――まぁ説明は不要だろうが、誰が一番の美人かを決めるコンテストだ。舞台裏へと引っ込んだ美女たちが思い思いの衣装を披露してくれることだろう。
なお、衣装と特設会場の準備で以下のDPが消費されたもよう。
104851DP→104611DP
「レディーーース、エーンド、ジェントルメーーーン♪ これより第一回、ライジングバレー美人コンテストを開催するで~! さっそく1人目の紹介や!」
急遽広場に設置された会場。マイクを握りしめた加瀬が司会を勤める。
「フリッフリなメイド服に限界を極めたミニスカ! これぞキュート、これぞKAWAII、これぞメン――」
「…………」ギロッ!
「――コイ……めんこい、大天使のアズールだぁぁぁ!」
「お帰りなさいませ、ご主人様~♪」
良い、大変良い、あの言動がなければ完璧であり、知らずにいれたならと思わざるを得ない。
「続いて2人目や! こちらも同じくメイド服で対抗、クラスではわがままツインテールの異名を持つ小悪魔、神崎~~~藍梨だぁぁぁ!」
「――ってコラァ! 誰が我が儘よ!」
「怒ったところもまたプリティ! さぁ、男性陣に向かってアピールやぁ!」
「いいアンタたち、私が一番だからね? 絶対だからね!?」
俗に言うツンデレ――いや、思い返せばデレた事は一度ないな、うん。
「続いて3人目! 天使と言えばウチ、ウチが本物の天使と豪語する黒髪ロングな撫子天使、ルフォ~~~ン!」
「フフン、貴方のハート、物理的に射ち抜きますよ」(←ソレはダメやなつ)
姫武将みたいな格好での登場だ。うん、凛々しくて美しい。
「そんでもって4人目は、美しさなら誰にも負けない、地上の美はここに有り、出るとこ出ている魅惑のボディ、綾小路~~~、永遠ぁぁぁ!」
「フフ、ごきげんよう」
さすが自称お嬢様、貴族令嬢っぽく着飾っての登場――って、えええ!?
バッ!
「フフ、どうかしら?」
「おおっとぉ、これは不意打ち! お嬢様ファッションと思わせながらも、服を脱ぎ捨てれば大胆な水着だぁぁぁ!」
おぅふ! 胸元を強調された漆黒の水着! これは文字通り不意打ちだ、しっかりと目に焼き付けておこう。
「ちょっとトワ、卑怯よアンタ!」
「そうよ! アンタもファッションで勝負しなさいよ!」
「これでは鎧姿のウチがバカみたいではないか」(←否定はしない)
「あらあら、どこからか負け犬の遠吠えが聴こえますわ、オ~~~ッホッホッホ!」
「「「ムキィィィ!」」」
悔しがる前半の3人。だが悲しいかな、ルール上は問題ナッシングなのだ。
「さぁどんどん行くでぇ! 5人目はこちら、童顔でありながらも破壊力抜群な山と谷間! 胸囲の格差社会はかくも残酷であると言わざるを得ない! これが天使の頂点なのか、トロ~~~~~~ン!」
「は~~~い♪ もっと寄せちゃうですぅ~?」
ムギュゥゥゥ!
「うおおおおっ!? これは見事なだ○ちゅうのポーズ! ビキニて登場の上に寄せて上げた効果は抜群だぁぁぁぁぁぁ!」
ヤベェ、冗談抜きで破壊力がヤバい! 完璧なロリ巨乳だ!
「ちょっとぉ! お子様のくせにわたくしより目立とうとして!」
「お子様じゃないです!」
「そうよね、トロンは300年は生きてるもの」
「「「つまりロリババァ」」」
「……あ"」
「おい、いつまでまたせる気だ、早くしないと世界の半分を闇で覆うぞ?」
ここでまた喧嘩が始まりそうになるも、最後の1人、メグミがステージに上がってくる。
「あ~スマンスマン、こいつらよう喧嘩するもんで――って、んなはぁぁぁぁぁぁ!?」
「「「うぉう!?」」」
俺も会場も司会の加瀬も、メグミの姿を見て仰天する。
「どうした、何を狼狽えている?」
「ど、どうしたって――ハグァ!?」
混乱している加瀬にアイリからの飛び蹴りが炸裂! 会場の外へと吹っ飛んでいく。
「メグミィ! アンタなんつ~かっこしてんのよ!」
「ナンツーカッコ?」
「格好です格好! それでは裸同然ではありませんか!」
そう、あろうことかメグミはマイクロビキニで登場してのだ。故に男たちの視線はメグミに集中。事態を重く見たアイリたちが動いたというわけ。
というかどけろアイリたち! それだとメグミの姿が見えん!
「ルフォン、トロン、あたしたちも盾になるわよ! このままだとハレンチな中二病女が優勝しちゃうわ!」
「「ラジャー!」」
あ~クソゥ! 天使まで邪魔すんのか!
「…………」マジマジ
「会長? どこを見てらっしゃるので?」
「ハッ!? ち、ちちち違うんだ戸田くん、ボクはステージを見ていただけで――」
「問答無用です――テヤァ!」
「ぐはぁ!」
「ひぃ!? か、会長――」
「貴方もですよ、瓶底くん!」
「オゥチ!」
副会長の肘打ちで会長と瓶底がダウン!
「本郷覚悟!」
「ぐえぇ! な、なにじやがる……」
「キミもだよ、小早川くん」
「ンギャァァァ!? 目、目がぁぁぁ!」
不味いぞ、次々と男たちが倒されていく。
「だが俺だけは諦めない! 絶対にメグミの裸を拝んでや――」
「鳥居く~ん?」
「ん?」
「ステージ見ちゃダ~メ♪」
「み、緑川……さん?」
ちょちょちょちょ! そんなにスカート持ち上げたらアナタ、中が見えちゃって大変なことになりますよ!
「ンフフフ~♪」
スス……
「そ、それ以上はまずいって! 18禁コーナーへの移動を推奨されてしまう!」
「はい終了~!」
「あ、あれ、もう終わり?」
「だってメグミちゃんが着替えるまでの時間稼ぎだも~ん! 見事に釣られてて大草原なんだよ!」
「しまったぁぁぁぁぁぁ!」
なんてこった、既にメグミは私服にもどってるじゃないか! 一生に一度の大チャンスを逃してしまうとは!
「ふぅ、ぶつけた頬が痛むでぇ……。さぁ気を取り直して最後の出場者や!」
ん? 全部で6人だったと思うか……
「ラストはこちら! 任されてる仕事は数知れず、仕事一筋ウン百年、美しくも凛々しいその姿は仕事のできるキャリアウーマン! これこそが大人の魅力だ、クロノ~~~~~~ス!」
「ンフ♪ 宜しくね坊やたち」
ビシッとしたスーツを着たクロノスという女性。一言でいえばOLである。
「あの~、クロノスさん。いったいいつの間に来られたので?」
「ついさっきよ。ダンジョンの様子を見てたらサボタージュ決め込んでる悪~い天使たちを見つけてね。そうよね? アズール、ルフォン、トロン」
「「「…………」」」
クロノスさんに睨まれて硬直する3人。どうやらこの人の方が上の立場らしい。
「まったく、本来の仕事を忘れるなんて、しょうがない子たちね」
「「「すみましぇ~~~ん!」」」
「まぁいいわ、今はこっちの方が優先だし。ねぇ貴方たち、ちょっと時間を貸してくれないかしら?」
俺たちは顔を見合せながらも了承することにした。
「かくも時の流れというものは早いものですな。あっという間に第2章ですよ。ええ、それはもうカレーのルーのトロみのような流れであると断言できますな。そう、全ての事象はカレーで例えられるのです。それではわたくしカークランドがご案内しましょう、いざカレーの世界へ!」
登場人物の紹介
名前:ルフォン
性別:女
年齢:?
種族:天使
備考:大天使アズールの後輩でトロンの同僚。黒髪ロングのため見た目だけなら清楚なのだが、面食いでイケメン好きな面がある。
名前:トロン
性別:女
年齢:いくつでしょ~?
種族:天使
備考:大天使アズールの後輩でルフォンの同僚。セミロングのピンクで童顔、天使の中では巨乳である。力自慢な男に引かれる傾向あり。
名前:クロノス
性別:女性
年齢:♯♯♯
種族:神
備考:この世界のダンジョンを管理している女神。ダンジョンとは異次元に存在するものであり、世界と世界の狭間とも言われているが……
「フムフム……。――む? むむむむ! コレですコレ! スパイシーな中にあるまろやかな甘味、これこそがカレーの美点! ああ、これだけで一週間は過ごせそうです! ああ神よ、感謝しますぞ!」