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マスコット

「全て運びました。いつでも吸収できますよ」

「了解、では吸収するデスよ。今回は数が多いので一気にいくデス」


 4820DP→65782DP


「「「ふぉ~~~!?」」」


 懐かしのレイ○ーラモンかのような叫び声がコアルームに木霊(こだま)する。ある程度は予想していたとは言え圧巻の数値だ。


「1人あたり200ポイント以上デスね、1個部隊を壊滅させた成果としては上出来デスよ!」


 誇らしげな瓶底の台詞に全員が頷く。


「これだけ有れば拡張だって余裕っしょ! ねぇねぇ、早く拡張しよ~よ!」

「待ちたまえアイリくん、気持ちは分かるが先走り過ぎだ」

「ま~た会長ったら慎重過ぎるんだから。こういうのは思い切りが大丈夫じゃん、ね~瓶底く~ん?」

「え!? ま、まぁ、どうデスかね……」

「こらこら、変な色仕掛けは止めないか」


 けど実際もんだいどうなんだろうなぁ。収入の宛がなきゃすぐに破綻するだろうし。


「ワイもアイリに賛成やで」

「加瀬くん!」

「まぁまぁ会長、落ち着き~や。要はな、前に会長が言うとったネ○フ保管計画みたいな話をしとったやん?」

「DP保管計画だ!」

「そうソレ。でな、必要なDPさえ確保できれば何も問題あらへんのよ」

「そんな事は百も承知だ」

「だから最後まで聞きなはれや。そのDPの元となるマジックアイテムをトルネオはんに買うてきてもらうんや、領主様の懐を頼ってな」


 なるほどな。素晴らしいという声が出そうになった。(←いや言ってやれよ……)

 ライジングバレーは非常事態であることには変わらないし、助かるためなら喜んで出してくれるだろう。


「良いんじゃね? まっとうな意見じゃん」

「俺も賛成」

「あたしも賛成~!」

「私も賛成する。加瀬にしてはまともな意見だった」

「一言余計やでお那須さん」

「最終的にはお金が解決するのですわ」

「トワはん、悪徳令嬢みたいなこと言わんといてくれまっか?」


 賛成多数の現状を突き付けられ頭を抱える会長。


「むぅ…………」

「でもこれはチャンスなんやで? この町がダンジョンなっとるなんて事、いずれはバレるに決まっとるやん。だったらバレる前に多少は無理してでも整えとくんが正解なんちゃうんか?」

「はいデス、加瀬くんの言う事も間違いではないと思うデス。町の南側に拡張すれば、街灯からの徴収も増えるデスよ」

「そう……か。うむ、確かにそうかもしれないな。今はスピーディーな行動が要求されるとあらば、それに乗るしかないと。……よし、思い切って拡張してもらおう!」


 賛成多数と瓶底の後押しもあり、ダンジョンの拡張が決定した。


「ところで利根川くんはどこに行ったのかね? さっきから姿が見えないが」

「あんちゃろうだったら領主んとこに行ったぜ。領主の娘――テルミアだっけか? ソイツに会いにな」

「はぁ、まったく利根川くんは……」


 会長のタメ息も理解できる。アイツは異世界に来てまで同じことしてるもんな。何せ初めての登校日にスクールアイドル3人組を同時にナンパした猛者だ、そうそう性格は変わんないと。


「ま、まぁ利根川くんはともかくだ、ダンジョンの拡張は引き続き瓶底くんに任せるとしよう」

「任せてほしいデス」


 そして朝の会議で決まったマジックアイテムの買い付けをトルネオさんにお願いし、3つの班に分かれて探索に出掛けた。

 A班は町の南側、B班は町を北に出たところの西側、C班はB班の反対側だ。



『では皆さん、気を付けて探索を行って下さい。もしも危険が迫ったら、上空から見張っている居残り組からお知らせしますデス』



 さて、いよいよ探索開始だ。俺は会長と副会長、それと小早川のC班4人組となっている。


「珍しいな? 会長が外に出るなんて」

「鳥居くん、キミはボクの事を引きこもりか何かと勘違いしてないかね?」

「「え、違う?」」

「違うとも! ――というか小早川くん、キミもかね!?」

「だって……ねぇ?」

「まぁな」


 いかにも虚勢を張ってる陰キャって顔してるし、自室に籠って怪しいサイトを回覧してそうだし、周囲にばれないようにFA○ZAに課金してそうだし、もうトリプルテンパイっすよ。


「いいかね? 言っておくが、ボクは引きこもりではない。そう見えるだけであって、事実とは異なるのだ」

「「ふ~ん?」」

「なんだねキミたちその顔は? こ、これでも昔はだね、その……空手道場に……か、通っていたくらいは陽キャなのだ」

「「…………」」


 嘘くせぇ! これでもかってうらい嘘くせぇ! でも副会長さんはすっかり信じ切ってしまい……


「す、凄くカッコいいです会長! 帯はどのランクまで上がったのです!?」

「う……うむ……」



「あ、あれは……う~む、何色だっただろうか。確か……全ての色が溶け合わさったとてもカラフルな色合いだったような……」

「「「…………」」」


 これは……嘘松確定かな~。


「か、会長、これから頑張りましょう! そうです、どうせなら空手教室を作りましょう。そこで会長を鍛えて差し上げます」

「い、いや、それは遠慮願いたいというかだね……。だいいち教える立場の人間が――」

「これでも私、黒帯ですので!」

「「「えっ!?」」」


 聴こえてはいけないものが聴こえた気がした。居間のはスルーしよう。


「さ、男子の皆さん、テキパキと探して行きますよ。サボッたりしたら容赦なく(かかと)落としですからね? もちろん会長も!」

「「「…………」」」


 ヤベェ、副会長様が妙に張り切ってらっしゃる……。それもこれも会長のエアー空手が原因だ。踵落としを食らいそうになったら会長を生け贄に捧げることにしよう。


「あ、そうそう、忘れるところでした。瓶底くんから探知機を貰ったのですよ」


 65782DP→65332DP


 お1つ150ポイントのドラゴ○レーダーだ。魔力を放ってるものにだけ反応するらしい。


「え~っと……一番近くですと、もうちょい先の……ああ、あの草むらですね」


 傍目には雑草にしか見えないのだが、確かに副会長はそれを指していた。この辺り全体がぼんやりと反応しているらしい。


「まさかこの草そのものが反応してんのか」

「取り敢えず採取してみる?」

「あ、反応が少し消えました」


 小早川が引っこ抜いた雑草が反応しなくなったらしい。


「デデ~ン、小早川アウト~!」

「小早川くん、キチンと手を洗ってるのかね?」

「小早川くん不潔です!」

「俺のせい!? てか手はちゃんと洗ってるっての!」


 茶化すのはこのくらいにしてだ、どうして反応しなくなった?


「ふむ、もしやこの草は土から出してはダメなのかもしれん。土ごと回収してはどうだろう?」


 物は試しと丁寧に土ごと採取してみた。すると……


「反応は残っています。どうやら会長の言った通りのようです」

「やはりか。しかしコレを全部となると骨が折れる。確か倉庫の中にスコップがあったはず。それを使わせてもらおう」

「だったら荷車も拝借しようぜ。倉庫の隣に置いてあったろ?」


 町はすぐ側、全員で戻る必要はない。誰かがパパッといって戻ってくるだけだ。

 さ~て問題、誰が戻るべきでしょ~~~かっと。


「「「…………」」」


「「「ジャンケンポン!」」」



★★★★★



 というわけで、みごと一発で玉砕した俺が通りますよっと。

 は? お前ジャンケン弱いだろって? そんなことはない。今回だって、最初はグーから始まると思ったんだ。そう、つまり他の3人はパーを出しやがったんだよ。ジャンケンつったら最初はグーが基本だろ? おかしいよ絶対!(←気持ちは分からんでもない)

 けどまぁアレだ、最近はちょいと陰が薄いみたいだしね、多少は目立っとこうかと思ったりね。(←苦しい言い訳)


「さぁ~てと、スコップスコップ――」

「チュイチュイ♪」

「ん?」


 気付けば足元に妙な生き物が。


「なんだコイツ、トカゲみたいな顔してんなぁ?」(←ならトカゲじゃないですかねぇ)


 緑っぽい色のトカゲが俺の足元で踊ってやがる。警告に引っ掛からないし、単なる小動物ってところか。


「そういや緑川がペット飼いたいとか言ってたっけな。ペット生活してみるか?」

「チュイチュイ♪」


 おお、ノリが良いな。見た目も可愛い感じだし、動画に乗せたらバズりそうだ。って異世界じゃ無理か。


「俺もお前みたいな陽キャっぽかったら人気出たと思うか?」

「ププゥ♪」

「…………」



「お前、今笑ったろ?」

「…………」ブンブン

「い~や笑ったね、絶対笑ったね」

「…………」ブンブン

「なんだ、器用に首振りやがって。違うってのか?」

「…………」コクコク

「でも内心じゃ不人気乙とか思ってんだろ? そうなんだろ?」

「…………」コク――ブンブン


 コイツ、今頷きかけたな。


「じゃあホントに偶然なんだな?」

「…………」コクコク


 なら仕方ない。スコップも積んだし、さっさと戻るか。


「チュイチュイ♪」ドサッ!

「…………」



「あのさ、何でお前まで荷車に乗ってくるわけ?」

「チュ~イチュイ♪」

「いやいや、肩を竦められても意味わからんし」

「チュチュ~イ♪」

「もしかして気にすんなとか言ってる?」

「チュイ!」コク

「…………」


 よく分からんが害はなさそうだ。


「まぁいいや。町の外で作業するけど邪魔はすんなよ」

「チュイ!」


 変なのに絡まれたが早く戻ろう。副会長の踵落としは食らいたくないしな。

 ――ん?


「ねぇ、ホントに合ってるの? さっきから同じところグルグル回ってない?」

「まったくですわ。犬の散歩とは違いますのよ?」

「っせ~な、ドラゴ○レーダーが反応してんだから間違いねぇだろ」


 あれは南をの探索中のA班だな。


「お~い、何やってんだ?」

「おぅ鳥居か。いやな、この辺りに反応してんだけどよ、どうもターゲットが動いてるらしくてな、なかなか正体が掴めねぇんだ」

「じゃあ生き物か?」

「多分な。鳥居はそれっぽい奴見なかったか?」

「見るわけないし、見ても分からん」

「だよなぁ……。ったく何で見つからねぇんだよ……」


 頭を搔きながら戻って行く本郷。何を探してたのかは知らんが、A班の健闘を祈りつつ俺も町の外へと向かう。せめて見た目がレーダーで分かるんならもっと楽なんだけどなぁ。



★★★★★



「――で、連れて来たと」

「連れて来たと言うか勝手についてきた感じだけどな」

「でも良いじゃないですか、会長より可愛い顔してますし」

「何ぃ!? こんな小動物よりボクが劣るだとぅ!?」

「はい。会長どころかあのスクールアイドル3人組より可愛いかと」

「「「それほどかよ!」」」


 早くも波乱の予感。なんだこの展開……。


「ま、まぁいい、さっさとこの辺りの草を採取しようじゃないか」

「そうですね。上手く育てれば増殖するかもしれませんし、可能性は――ん?」

「どうしたのだね戸田くん?」

「ドラゴ○レーダーが強い魔力を感知してるようです。場所は……その荷車!」

「「「荷車!?」」」


 慌てて荷車に詰め寄る俺たち。そこでは図々しくも呑気に昼寝をしている例のトカゲが居るのみ。だが……


「多分ですけど、この生き物に反応しているのかと」

「コイツが? 何かの間違いじゃ……」

「でも他に魔力源となりそうな物はありませんし、間違いないでしょう。せっかくですし、草と一緒にダンジョンに連れ帰ってみましょう。もしかしたらダンジョンのマスコットになるかもしれませんし」


 マスコットねぇ……。そんなものがダンジョンに必要か? いや、長く続くであろうダンジョン生活なら癒しは必要か。


「せっかくですし、名前を付けたらどうですか?」

「え、俺が決めんの?」

「だって見つけたのは鳥居くんですし」


 う~ん……




「グリーンリザード……とか?」

「なんの捻りもないですね」

「つまらん男だなキミは」

「ダサい命名乙~」


 クッ、ダメだ。神はネーミングセンスというものを俺には授けなかったらしい。


「じゃあ緑丸(ミドリマル)で」

「さっきのよりはマシですね」

「シンプル過ぎる気もするが……まぁ良いのではないかね?」

「名札でも付ける?」


 こうして俺たちのダンジョンに妙に馴れ馴れしいマスコットがやって来た。いったいどれくらいのDPを提供してくれるのやら。

 

那須葉子なすようこだ。…………。と、とと、登場人物の紹介を、行う……」(←緊張している)


 登場人物紹介


 名前:緑丸ミドリマル

 性別:雄

 年齢:?

 種族:魔法生物

 備考:緑色をしたトカゲのような生き物。モンスターとは違って食事の必要はなく、他の生物を襲うこともない。ペットを飼いたいが面倒を見たくないという貴族に最適。


「い、以上。――解散!」(←やけくそ)


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