社畜 憤怒の炎
『これは……』
『ニワトリくん！』
『嘘だろ』
『流石に一人は無茶だったんだ』
『分身が出た時点で撤退すべきだった』
『死んだか……？』
リスナーは皆、蓮二が死んだと考える
生存は絶望的
天音と一鬼も異変に気付く
「嘘……」
「鶏くんがやられた？ マジ？」
（一人で対処は無理だったか、くっそ、私の判断ミスだ。撤退は……出来るか？）
一鬼は撤退を考える
蓮二がやられた場合、勝ち筋は無い
突如拳状に束ねられた触手が焼き払われる
『え？』
『あれ？』
『鶏君！？』
『おぉまじか』
『あの触手の束を焼き払った』
『まじか死んだと思った』
『おぉ！ 生きてたぁ！』
そして炎が魔物目掛けて飛んでいく
魔物は触手で炎を防ぐ
「まだ足りない」
胸を強く叩く
まだ異能の強さが足りない
一人で倒すにはまだ十分ではない
魔物目掛けて複数の炎を放つ
触手を盾のように広げて炎を防ぐ
触手は焼かれボロボロと焼き崩れる
「生きてたか」
一鬼は蓮二の炎を見て安堵する
もし蓮二が死んだら自身の判断ミスで死なせた事になる
罪悪感が強い
（早く倒して援護しないとな！）
槍を振るって分身に攻撃を叩き込む
「とっととくたばれ！」
怒涛の連撃を分身に叩き込む
「鎖よ縛って！」
分身の体を縛り上げて剣を振るう
触手が剣を防ぐ
天音は疲れが出始めている
長期戦は体力を持っていかれるそして剣の能力でさらに体力を奪われている
（蓮二さん生きてた良かった）
蓮二が生きていた事に安堵する
「邪魔！」
触手を切り裂き突きを繰り出す
二人が焦る
本体相手は蓮二一人では無理だと判断した
今回は生きていたが次がどうなるか分からない
頭蓋に槍を突き刺す
風の短剣を頭に突き刺す
ほぼ同時に二体の分身は消滅する
『倒した！』
『おぉ！』
『すげぇ！』
『まじか』
『分身倒した！』
二人の戦いを見ていたコメント欄が盛り上がる
『天音ちゃん単騎で倒した！』
『すげぇ！ 天音ちゃん』
『強いなぁ』
『おぉ！』
『強えぇぇぇ！』
『分身単独撃破！』
『分身が弱かったんじゃ』
『それは戦った本人しか分からない。それよりもこれで三人揃った』
『後は本体だけ！』
『ほぼ同時か』
『頑張れ！』
『天鬼鶏行け！』
分身を倒した一鬼と天音は見合う
自分が相手をしていた分身を倒した後は二人とも合流して本体よりも弱い分身を優先して倒すつもりであった
互いが分身を倒した事を理解する
「まじか、やるな天音、後は本体を殺れば」
「獅子神も倒した……なら後は本体だけ！」
二人は蓮二を見る
蓮二は炎を纏っている
見て分かるレベルで火力と量が増えている
「この炎」
「条件は怒りか」
二人は合流して蓮二の元へ向かう
本体は分身がやられた事に気付く
そして一部の触手が二人に襲いかかる
「天音！」
「鎖よ縛って！」
異能で五本の鎖を召喚して触手を縛る
一鬼が前に出て槍を振るい触手を叩き逸らす
「やっぱり硬いな」
「作戦通りに行く？ それとも」
「私達じゃ本体の相手は無理だ、作戦通り一部の触手を引きつけて出来る限り負担を減らす」
「分かった」
風を纏めて弾丸のように放つ
一点集中の威力を高めた一撃
魔物の頭を撃つ
少し傷が付くがすぐに再生する
（今のは）
天音の攻撃だと気づき後ろを一瞥する
二人を確認する
「二人とも倒したか」
『これで優勢！』
『行けるぞ！』
『ニワトリくんファイアー！』
『頑張れぇ！』
『いけぇぇ！』
『これなら勝てるぞ！』
『触手の一部を二人が引き付けてる。だいぶ余裕が出来たんじゃないか？』
『攻め込むチャンスが出来た』
『分身を召喚しないとは限らないから攻めるなら今のうちかも』
『次は流石にキツそう』
『天音ちゃんかなり疲れてるから多分無理、獅子神さんはまだ余裕あるけど』
「天音、今のうちに体力を回復させろ。剣使ってたろ」
「分かった。触手切れない？」
「ワンチャン切り裂けないかと思ったが今の感覚的に無理だ」
「何か良い形状変化無いの？」
「残念ながら無いな」
触手を槍で叩いて逸らす
（これは完全に鶏くんを警戒してるな）
二人に対して攻撃を仕掛けている触手の数が少ない
蓮二を警戒している為、余り使いたくないのだろう
「天音本体に攻撃出来るか？」
「出来るけど一人で行ける？」
「この数なら問題ない」
「分かった」
本体を鎖で拘束して風の弾丸を放つ
少しでも意識を割かせる
蓮二は一本の炎の刀を作り触手を切り払う
接近する
炎の刀の攻撃でやれなかった触手を血を纏った剣で切り裂いて進む
炎を指輪に貯める
（足りねぇ）
炎を放ち焼き払う
大量の炎の玉を飛ばして攻撃を仕掛ける
魔物に直撃するが致命傷には程遠い
再生をし始める
『攻めろ！』
『燃やせ！』
『攻めて攻めて攻めまくるんだ！』
『ファイアー！』
『ファイア！』
『ニワトリさんやっちまえ！』
触手よりも胴体の再生を急ぐ
炎の刀に触れてぶん投げる
胴体の再生に力を割いていた魔物は残った触手では防ぎ切れず炎の刀に貫かれる
身体が燃え上がる
炎を足場にして空を移動する
僅かに再生が早い
指輪に貯めた炎を放出して焼く
一瞬コアが剥き出しになる
「そこか」
剣が届く距離まで接近する
触手で攻撃を仕掛けるが天音の鎖に縛られ接近していた一鬼が残りの触手を勢いよく叩いて逸らす
今の魔物は無防備
（届く）
剣を構える
纏う血を増やして血の刃を生成して長くする
そのまま勢いよくコアに剣を突き刺す
「終われ！」
突き刺さったコアはひび割れて破壊される
