社畜 勝利
魔物は地面に叩きつけられる
蓮二の目の前に女性が現れる
「後はこいつだけだ」
「あれを一人で倒したんですか」
「あぁ、お前傷が癒えてるのか?」
「傷を癒す薬を使いました。ただ完治までは時間がかかります」
「成程、ならそれまで時間を稼ぐ。どのくらいだ?」
「正確な事は分かりません」
(……長い。まぁ倒せばいいや)
魔物は立ち上がり風を放つ
槍で攻撃を捌く
異能で目の前に移動して槍を振るう
一瞬の事で魔物は反応が出来ず食らう
(配信で見るより凄いな瞬間移動の異能)
移動は一瞬、条件こそあるが条件内であれば自由自在に移動できる異能
風で空に飛んでも異能を使えば一瞬で追いつく
どれだけ早い攻撃でも反応出来れば異能で回避が出来る
槍で風を捌きながら魔物に蹴りを入れる
風で防がれる
「そう簡単には行かないか」
ひたすら攻め続ける
魔物はどうにか逃げようとするが異能で追いつかれる
風を操る異能、攻防一体の異能だが攻撃は中距離が本領を発揮する
近接戦闘は得意では無い
風を防御に回す
(突破力が無い。他の武器は持ってない……面倒くさい)
「何か武器は無いか」
戦いながら一鬼に話しかける
『武器?』
「突破力が足らない。落としてくれ」
『欠点があるが決定打になるかもしれん武器がある』
「問題ない」
一鬼は天音が持っている。身体強化の能力を持つ剣を落とす
『その剣の能力は身体能力強化、そして欠点は体力を奪われる事だ』
「そうか、体力には多少自信ある」
『長期戦は出来ない。ただその分優秀だ』
「なら良い。今の武器は扱いやすいが弱い」
(何せ売れ残って掘り出し物の中でも安価な値段の槍だからなぁ)
魔物に攻撃をする
剣が降ってくる
近くの地面に突き刺さる
すぐに異能で剣の元に行き引き抜く
槍を短くして仕舞う
「あっ……」
『どうした?』
「なんでもない。気にするな」
女性は一つ忘れていた
女性は重力の輪と言う魔道具を身に付けていた
(これ解除してもいいよね? ……怪我人居るから)
魔道具の効果を調整する
「軽くなった」
剣を握り地を蹴り突っ込む
先程までよりも早く走る
魔物の風による攻撃を全て切り裂き剣を叩きつける
風で防がれるがジリジリと押している
連続で切りかかる
剣の身体能力強化と魔道具の効果を調整した事で素早く連撃を繰り出す
風が削がれていき防いでいた風が薄くなる
突きを繰り出して貫いて力を入れて切り裂く
風の球を飛ばすが当たるよりも先に更に踏み込み懐に入る
無防備な魔物に剣を振るう
魔物は身体を逸らしてギリギリで避ける
すぐに追撃を仕掛ける
「今」
風で防御を試みていた魔物に飛んできた炎が命中する
よろめいた魔物は振るわれた剣を防ぐ事も避ける事も出来ずに食らう
魔物の胴体が深く切れる
ほぼ致命傷と言える傷、それでも魔物は動く
魔物は叫び周囲に風を巻き起こし前方に居る女性に全力で攻撃をする
超至近距離からの暴風の攻撃
防御は出来ない
(あれは不味い)
蓮二が炎で風を相殺しようと試みるが圧倒的に火力が足りない
(次で終わり)
女性は背後に移動する
例えその場からでは回避も防御もできないような攻撃でも瞬間移動が可能な異能者には通じない
がら空きになった背後に剣を突き立て倒す
「終了、まぁバルフェリアに比べたら弱い」
「強い」
探索者最高峰と呼ばれている実力者の一人
例え三人で戦ったとしても苦戦を強いられるであろう二体を倒し切った
女性は素材と魔石を回収する
(素材が出たか。等級不明と言っていたが個々の強さは4級の主クラスと言ったところか。鶏が勝てなかったのは相性だな)
「さて、終わった事だし傷癒えたら登るぞ」
魔石と素材を蓮二に投げ渡す
蓮二は慌てて受け取る
「……流石に無理じゃないですかね?」
「そうか? なら待つか」
女性はその場に座る
「ありがとうございます」
「偶然近くを通っただけだ。感謝は獅子神一鬼にしろ」
「それと魔石と素材も貴女が」
「なら魔石を片方貰う」
「全部で」
「魔石一つで充分だ」
「そ、そうですか。強いですね」
「私は強いらしい。ただ今回はあの二体より強い魔物と対峙した事があっただけだ」
『まじか二体とも倒したのか』
「最後援護が無ければ長引いていた」
『それでもだろ。異能持ちの方の強さは知らないが鶏君が苦戦するレベルの相手だ』
「相性の問題だ。私の異能は大抵の魔物に対して相性が良いからな」
「確かにあの異能は強力ですからね」
『どんな異能なんだ?』
「獅子神さん気づいてないんだ」
『なんだ知ってる人なのか?』
『私は恐らくくらいですが』
『まじ?』
「まぁ戦いを見てれば分かるよな」
「さすがに分かります。かなり印象的な異能なので」
『ほほう、印象的な異能で女性、探索者、二人が知ってるなら配信者だよな……もしかしてレイか?』
「まぁ空間移動の異能は数が少ないからな」
現在世界で三人しか見つかっていない空間移動系の異能者
3級ダンジョンを周回したり4級ダンジョンの主を単独撃破などしている人物
偶然今日用があり来ていた
「炎の異能、扱い切れていないな」
「えっ?」
「出力に差がある。再生持ちの魔物との戦いを見たがあの時は先程より出力が高く見えた」
「そうですね……はい、あの時の方が出力は上です」
「条件か。あの時の出力を出せれば倒せていただろう。条件を知っているのなら最大限使えるようにしておく事だ」
「はい」
『鶏君の炎は充分強いと思うが、並ぶ属性異能を知らない』
「今のままではバルフェリアには勝てない」
「バルフェリア?」
『名前ですか?』
『魔物に名前なんてあるのか』
「……知り合いがそう名付けた。4級のダンジョンにあの二体よりも遥かに強い魔物がいる注意しろ」
「あれよりですか」
『私達の戦ったダンジョンの主は?』
「そうだな、あれも似たような物だがあれより強い」
ダンジョンの修復が終わるまで会話をする




