社畜 援軍
「ありがとうございます」
一鬼は小銭を受け取る
(この付近住んでる人か)
見覚えがない為、探索者では無いと考える
(まぁ偶然強い探索者に会うわけないか)
「獅子神一鬼か」
「おや、リスナーかい?」
配信を見ている人物であれば一鬼を見ればすぐに分かるだろう
「まぁリスナーでもある」
「でも?」
「一応同業者だ」
「同業者?」
(まじで見覚えないぞ……だがよくよく聞けば声は何処かで……)
記憶を探るが思い当たる人物は居ない
「この付近で活動してるのか?」
「いや、この付近では無い。荷物を届けに来たついでにジョギングしてただけだ。そちらはダンジョン攻略か?」
軽くジョギングしてたのだろう
汗をかいていないし疲れた様子もない
(流石に私も全員は把握してないからこの付近じゃないなら知らないか)
「あぁ、今緊急事態が起きてな」
「緊急事態か。この付近となると確かあいつが言うには5級ダンジョンの筈だが」
「あぁ、5級ダンジョンとして看做されていたダンジョンだ。実際は4級以上」
「イレギュラーか。それで緊急事態と言うのは? 助力出来るかもしれん」
(助ける義理は無いが知って放置したらあいつが怒るだろうしな。最近話題のグループ、借りを作るのは悪くない)
「4級以上だぞ?」
「聞いていたぞ」
相当自信があるのだろう
(ただの自信過剰かそれとも……いや今は猫の手でも借りたいくらいだ)
この女性の実力は分からないが今は一人でも多く人を集めたい
「私と同じグループに所属する。鶏を知っているか?」
「あぁ、炎使いの探索者だろ」
「そう、彼がダンジョンの恐らく最下層に閉じ込められている」
「どういう事だ?」
「一から説明する」
あのダンジョンで起きた事を全て話す
「成程、修復まで待つか……ダンジョンは何処だ?」
「案内する。天音一人力貸してくれる人がいる」
『よく見つけたね』
「偶然会った」
ダンジョンの入口まで行く
「えぇっと貴女が?」
「あぁ……」
(名を隠せば大丈夫か? いや武器は使う。しかし、あれは持ってきていない)
「……顔を隠せるものは何か無いか?」
「顔をですか」
「あぁ」
「それなら仮面あります。まだ使ってない新品です。あと通信機です」
女性は天音から受け取り仮面を付ける
(同業者と言っていたが配信者では無いのか?)
「素顔は公開していないから顔に関しては他言無用で頼む」
「分かった」
「は、はい、誰にも言いません」
天音は女性の正体に勘づく
(もしかして)
女性は入口からダンジョンを覗く
「最下層は分からないんだったか?」
「あぁ、鶏君の情報を加味しても奇数階層と言う予測しか」
「成程……それでは行ってくる」
「は?」
女性は武器を取りだして飛び降りる
小型の槍だ
「はぁ? ちょっ無茶苦茶な!」
すぐに一鬼は下を見る
女性は器用に槍を壁に突き刺して階段に入っていった
(まさか壁と階段を使って最下層まで降りるつもりなのか? 彼女は身体能力強化の異能者なのか?)
「流石に追えないぞ。天音カメラ」
「入口からダンジョンの奥までは届かない」
ダンジョン内は特殊
配信用のカメラなどは使えるが一定以上の距離になると映像にノイズが走る
距離が離れていても通信機は通じる時があるがカメラは使えない
『階段を経由すれば楽に降りれる』
「いや楽では無いだろ」
『そうか?』
「降りたとしても相手は二体だ。二人でどうにかなるのか?」
『一人よりはマシだろ、それに私の異能は一対一に向いている』
「異能持ちなのか」
『あぁ』
素早く階段から飛び降りて壁に槍を突き立て次の階段に入る
(音が聞こえない。かなり下か?)
何回かその方法で降りると一番下に着く
「到着、戦ってるな」
『着いたのか』
「十一階層だ」
『十一か分かった。鶏くんは今戦ってる』
「分かっている」
槍の長さを戻す
掘り出し物の槍、短く出来るという能力の槍
槍を持って突っ込む
二体の攻撃を凌いでいる蓮二を発見する
ギリギリで凌いでいる
蓮二は巨体の攻撃を回避するが間髪入れずに放たれた風の攻撃は防御が間に合わない
攻撃を受ける覚悟する
「手を貸すぞ」
風の攻撃は槍で弾かれた
(竜胆さんの言ってた人か。本当に降りてきたんだ)
(腕を負傷してるな。よく凌いでたな)
「ありがとうございます」
「どちらと戦う?」
「でしたら異能持ちの方をやります。巨体の攻撃は重いので回避してください」
「了解」
(面倒な方をやるのかそれは助かる)
異能持ち相手は厄介、風は攻防一体の異能、突破が厳しい
「援護もします」
「不要だ。むしろ邪魔になる」
初対面の相手と連携は難しい
それなら個々で戦った方が強い
「……分かりました」
炎を異能持ちの魔物に放ってヘイトを集める
女性は地を蹴り駆ける
巨体はまだ蓮二を向いてる
「速攻で倒す」
一瞬で顔の前に移動する
そして槍を頭蓋に突き立てる
「骨は硬いか」
槍が刺さり切らない
抜いて目に突き立てる
巨体は叫び暴れる
「ちっ、面倒な」
巨体の顔から飛び降りる
胴体や足を軽く切って距離を取る
暴れている魔物の攻撃を異能を駆使して回避する
「彼女はまさか」
流石に心配で女性の方を軽く見た
異能を使っている所を見た事で蓮二は彼女の正体に気付いた
『どうかしました?』
「いや、心配不要だと分かった」
自分の戦いに集中する




