社畜 負傷
魔物は剣よりも炎の腕を優先する
片手の拘束破って手で止める
炎の腕と触れる
じりじりと手が焼かれていく
(全然押せない)
少しずつ焼いているが手を焼き切るほどではない
もう一本の腕も振るい殴る
魔物は離れて回避する
二人が攻撃を入れるが武器を掴まれ蓮二の元に投げられる
慌てて炎の腕を解除するが受け止めの体勢を取れず投げられた二人とぶつかる
「ぐへぇ」
「くっ」
「二人同時に投げるか。強いな」
三人は立ち上がる
槍の形状を元に戻す
「炎の腕じゃ決定打になりません」
「少なからずダメージは与えてる。お前の攻撃なら通じる」
「さてさて、どうする? 流石にあれに同じ手が二度も通じるとは思えない」
「僕が前衛で攻めます」
「であれば三人で攻めるか」
二人相手であれば対応されてしまう
三人なら対応出来ない可能性がある
(後ろ?)
後ろから音がする
かなりの量の足音
その足音の正体は三十体近くの狼型の魔物
「魔物が湧いた!」
「何?」
「そんな時間かかってたのか。流石にあの数は」
魔物もその音に気づく
そして動く
地を蹴り三人に突っ込む
反応した葉一が剣で拳を防ぐ
「ぐっ」
素早い攻撃を連続で受ける
剣を振るい攻撃を捌く
すぐに一鬼が横に飛び出して槍で攻撃する
片手で槍を掴み引っ張る
槍を掴んだ状態で引っ張られた事で体勢を前に崩す
そしてノーモーションで放たれた素早い蹴りを腹に叩き込まれる
「ぐ……がぁっ」
思わず槍を手放しよろめく
追撃を叩き込もうとする
蓮二が炎で追撃を阻む
「獅子神さん!」
槍を使って攻撃をしてくる
(速っ)
蓮二はギリギリで槍を回避する
葉一が前に出て剣で斬り合い一鬼が逃れる隙を作る
無理やり立て直して魔物との距離を離す
炎の玉を飛ばして炎を盾のように出して魔物の突進を阻む
「すまない、槍を奪われた」
「戦闘参加は?」
「武器を奪われた以外は問題ない」
念の為に準備していた短剣を取り出す
「二人の支援に行かないと……」
「問題無い、叶が居る」
「でも巻き込むんじゃ」
「奴は臆病なだけだ、今の実力ならその程度のヘマはしない。それよりも我々がこちらをどうにかできなければ全滅も有り得る」
「行きます」
炎を消して剣を抜いて突っ込む
茨が腕に巻き付き血を吸う
剣と槍がぶつかる
槍を片手で振り回している
乱暴で雑だが一撃が重い
両手で剣をしっかりと握り斬り合う
葉一が背後に回り剣を振るう
空いてる手で剣を防ぐ
短剣を突き立て蹴りを避ける
「注意しておけば避けれなくは無いな」
(一瞬でも遅れたら食らうが)
蓮二が真正面から斬り合い葉一がもう片方の手の動きを制限して一鬼が死角に移動して戦う
近距離で炎の玉を放つ
溜めた炎は解除している
前衛で戦うと溜めている余裕が無い
槍によって攻撃の範囲が広くなった魔物は槍をぶん回して三人に攻撃する
三人とも反応して武器で防御する
その後槍を突き立てるように蓮二目掛けて力一杯振るう
炎で防御するが槍は燃えず突破される
槍で横腹付近を抉られる
「がぁ……ぐっ……ぁ」
傷口を抱える
かなりの激痛が走る
座り込みそうになる体を抑えて炎を放って距離を取る
(痛え……横腹が抉られた。位置的に肋骨も持ってかれてるな)
尋常ではない痛みと傷口から大量の血が溢れ出す
反応は出来ていたしかし選択を間違えていた
あれが魔物の手ならともかく一鬼の持っていた槍
恐らく掘り出し物、かなり頑丈なのだ
「鶏君!」
駆け寄ろうとする一鬼を魔物が槍で阻む
「邪魔すんな」
短剣を振るい戦う
激しく斬り合い押し込む
葉一も混ざり斬り合う
槍だけでは二人の猛攻は防ぎ切れず押されていく
行けると確信して深く踏み込んで攻撃を仕掛けてしまう
その瞬間短剣が槍で弾かれる
(誘われた!)
体勢を崩す
槍先が一鬼に向く
先程と違い視界と槍を阻む物は無い
すぐに葉一が魔物目掛けて剣を振るうが無視する
確実に殺る
「鎖よ縛って!」
状況に気づいた天音が異能を発動させる
四本の鎖が縛り上げる
しかし、力で鎖は破壊される
一点集中の風の弾丸を叩き込む
槍を持つ手が衝撃でズレて標準が外れる
槍による一撃は一鬼の腕を軽く掠る
すぐにバックステップして弾かれた短剣を拾い構える
「きつい……」
「ニワトリの事は二人に任せろ」
「鶏君無しで凌ぐのか」
「最悪倒す事になる」
「キツっ」
「来るぞ」
二人は魔物と激しい攻防を繰り広げる
蓮二は座り込んでいる
蓮二は一般人だ
探索者の中には痛みに慣れているような人間も居るが蓮二は少し前まで一般人の人間
痛みに強い耐性は持っていない
それどころかこのレベルの負傷は人生初
蓮二の元に天音と叶が駆け寄る
「結構抉られたな。戦線離脱だ」
「直ぐに復帰しないと」
叶は薬をかける
傷口に鋭い痛みが走る
一鬼に使った薬と同じ薬
その副作用は使用時に激痛が走る
「ぐぁ……あぁ……」
余りにも痛く声が出る
「その状態で参加した所で足手纏いだ。天音は二人の支援を」
「はい! 鎖よ縛って!」
異能と風の短剣を利用して援護する
「槍を奪われたか。厄介な」
「……回避するべきだった」
「深い傷だが運が良かったな」
回避をすれば受けずに済んだかも知れないが炎で防御した事で魔物の視界から自らを見えなくした
その結果本当なら心臓を貫いていた槍がズレたのだ
正しく運が良かった、最悪あの一撃で蘇生不可の傷を負っていた
「どのくらいかかりますか」
傷が塞がるまでは時間がかかる
その間参加は難しい
「20分も掛からないとは思うが暫くは安静だ。復帰は考えるな」
「……役に立ってない」
「一番ダメージを与えてる。後は三人を信じろ」
「でも……」
「状況次第なら私も出る。それに異能があるまだやれる事はある筈だ」
蓮二の異能は炎を操る物
傷を負っていても支障は無い
(まだやれる事がある)
炎を溜め始める
溜めた炎は魔物に通じる
炎を溜める事に集中する




