表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬桜

冬桜が咲いた。今年は量が多いらしく、都心には警報が出ている。

交通機関は全て運休となった。


東京駅にある1本の巨大な冬桜の木から、東京中に花びらが舞っていく。

夜になると、花びらのピンクが闇夜を照らし、それはそれは綺麗な景色となる。

雪がふる日も重なると、より一層幻想的だ。


しかし満開の冬桜を直接見ることはなかなか難しい。

冬桜には毒性があり、花びらにふれると記憶の一部が失われてしまうのだ。

物の名前、運転の仕方、昔の思い出、明日の予定、など。


そのため、冬桜が降る12月の一週間はまともに外出することが出来ない。


基本的に、室内から冬桜が降ってくるのを眺めるしかない。

しかし、窓をあけて冬桜に触れてしまい、記憶が失われる事故も例年多発している。


都民は冬桜の毒性について周知であるはずだが、このような事故が起きる理由もある。


花びらには、毒性を知っていてもなお触れたくなるような輝きがあるのだ。

窓の外の花びらを見ていると、触れたい、触れなければいけない、と意識を奪われつい手を伸ばしてしまう。


そのため、基本的に警報が出ている間は、窓に近づいてはいけない。


失われた記憶がどこにいってしまうのか、知る者は誰もいない。

静かに散り続ける冬桜に、人々は憧れと畏怖を持って見守るしかない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ