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第五十五話 帰り道

 



「プール楽しかったね……俊太?大丈夫?」

「すげー疲れた。お前ら本気出しすぎなんだ」


 プールに遊びに行った帰り道、疲れた様子の俊太に声をかける啓。


「雄飛があんなに速く泳げるとは思わなかったよ」

「よく川で遊んでたからな。魚獲ったりしてた」


 えっへんと胸を張る雄飛。褒められると途端に嬉しさが顔に現れる。


「泳ぎ方を教えたのは私だぞ。最初は顔を水につけるのすら怖がってなかなか離れてくれなくてなぁ」

「や、やめろよ恥ずかしいだろ」

「あの時は可愛かったなぁ……」


 幼いころの思い出を話そうとした凜姫を止める雄飛。


「ソルテも結構泳げるようになったね」

「鬼には負けたくないから……!」

「おぉ、そこはライバル意識みたいなのあるんだ」


 ソルテからすると鬼ができて吸血鬼にできないことがあるのはちょっと思うところがあるらしい。俄然泳ぐ練習のやる気が湧き上がっていた。


「啓ーあとでちょっと吸わせてー」


 魔力は使ってないけど、やっぱり啓の血が欲しくなる。ソルテは啓の首筋に顔を埋めて血をねだる。


「週一の約束だろ、ちゃんと守れ」


 突然の吸血を簡単に奏が許すわけがなかった。


「むー奏のケチー減るものじゃないし……いたっ」


 頬を膨らませるソルテの頭に奏の拳が落ちる。


「いや血は減るし啓も疲れるだろ。こっそりあげるなよ」

「わかってるよー。僕も今日は疲れたからちょっときついし。あ、ソルテも雄飛も日焼けしちゃったから後でいろいろ塗ろうね」

「「はーい」」


 啓に大人しく従う二人を見た俊太はしみじみと呟いた。


「もう完っ全にオカンだなこりゃ……」

「いやはや、本当に啓くんにはお世話になってるよ。私たちみたいな妖にも優しくしてくれてな。頭が下がる」

「なんか、こうして話聞くと鬼も人間と変わらないんだな」


 吸血鬼、鬼、月の兎、さらには神様にも会った。友達は妖と住んでいるし、思っているよりもたくさんいる。だからと言って何が違うかと言えば根本は何も変わらない。それがここ最近の俊太の考えだ。


「そうだねぇ……みんな仲良くできたらいいね……」




 ~~~~~




「これが例の……」

「あぁ、奏が聞いた話だと地上を滅ぼす兵器の起動キーらしい」


『Café Amethyst』店内、カウンターに肘をついたはかせはマスターに金の鍵を見せに来ていた。


「そりゃまたとんでもねぇもんが突然出てきたな」

「おかげで僕の仕事が増えて大変だよ」


 はぁーと大きくため息を吐くはかせ。奏から電話で話を聞いたのが今日の朝。その後帰ってきた奏から鍵を受け取り、昼ご飯ついでにここまでやってきたのだ。


「今までサボってたツケが回ってきたんだろ。あ、そうだこっちのツケは払っていくんだろうな?」

「さっき報告ついでに上から諸々ふんだくってきたから。まとめて精算するよ。別に今までサボってなんかないし、僕の分の仕事はちゃんとやってましたー」

「ほーそうかそうか。んで、話を戻すが、これはどうするんだ。俺の手には余る代物だぞ」


 マスターは照明を反射して刻み込まれた模様が輝く鍵を眺める。


「やっぱりそうか……特殊合金と魔法で作られてるって奏が言ってた」

「はいこちらナポリタンとアイスコーヒーでーす。今日はどうしたんですか?ついに啓くんに愛想つかされて追い出されちゃったんです?」


 鉄板に乗った熱々のナポリタンを持ってきたヒメがニヤニヤしながら話しかけてくる。


「違うって。今日は友達とたこ焼きするんだとよ。子供たちが楽しくやってるとこに大人がいたら無粋ってもんだろ」


 フォークでくるくるナポリタンを巻きながらはかせは呟く。


「啓達にはできるだけ普通に過ごして欲しいんだよ……今更何言ってるんだってのはわかってるんだけど」

「そんな気遣いできる人だったんですね……」

「ほんと、人間変わるもんだな……」

「なんか二人とも酷くない?」

「「そりゃあねぇ」」


 昔のはかせを知っている二人はぴったり台詞を重ねる。


「っと、昔話してる場合じゃねえな。ヒメちゃんはこれ見てどう思う?」

「そうですねぇ……」


 ヒメは鍵を手に取りじっくりと観察する。


「これ、金属そのものに魔法が練り込まれてます」

「……詳しく」


 魔法道具に関しては自分よりもヒメの方が詳しいことを知っているはかせはおとなしく耳を傾ける。


「この金属自体は雄飛くんに渡した義手と同じヒヒイロカネ。魔法をかけると魔法を記憶して魔力が流れた時にその魔法が発動するようになってる魔法金属。ただ、後付けの魔法なら解除しようと思えばできるんだよね」

「なるほど?」

「でもこれは後付けじゃない、精錬の時点で『形状記憶』と『不壊』の魔法が練り込まれてる。これは解除不可能。この技術力、さすが月の兎……」

「絶対に?」


 実は何かしら破壊する方法があるのでは無いかと期待してはかせは聞いてみる。


「少なくとも私達には絶対と言い切っていい確率で無理かなー」


 希望はあっけなく打ち砕かれた。


「まー魔道具に詳しいヒメちゃんがこう言ってるんだ、破壊じゃなく封印の方向で考えるべきだな」

「ただ、月の兎は未知ですから何してくるかわかんないのが怖いですねぇ。下手したら全面戦争になりかねませんし、取り返されたら激ヤバ兵器で滅ぼされるだけ。例の兎の子と相談して対策しないとまずくないです?」

「あぁ、彼女はどうも今地上にいる兎を片っ端から捕まえてくれてるみたいなんだ。ここに来る前に奏から聞いた。交渉するにも戦うにも彼女の力を借りないと、僕達だけじゃどうにもならない」

「相手待ちとは歯痒いな」

「何か先手を打てるといいんだけど、こればっかりはねぇ……」


 結局、月の兎に対抗する術を見つけられずに帰ることになってしまったはかせだった。




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