第五十四話 たこ焼きパーティー!
大変長らくお待たせしました。
「あつ!けどおいしー!」
「でしょー?」
今日は約束通りたこ焼きの日、ソルテはさっそく焼きたてのたこ焼きを嬉しそうに食べていく。
「啓!俺も食べていいか?」
「もちろんいいよー……あれ?今僕のこと……」
「啓って呼んだね」
雄飛の言葉に啓とソルテが反応する。雄飛が家に来てからというもの、どこか後ろめたかった雄飛は啓のことをちゃんと名前で呼べていなかった。
「ご、ごめ、俺も……啓って呼んで、いい、かな?」
が、たこ焼きを目の前にして、つい口に出てしまった。ソルテや俊太みたいに、自分も啓のことをちゃんと名前で呼びたいという気持ちが現れてしまった。
「もちろんいいよ!」
啓は屈託のない笑顔で了承する。
「じゃあさ、僕も茨木くんのこと、雄飛って呼んでいい?」
「俺も、そっちで呼んでくれた方が、嬉しい」
「今日はいっぱい食べてね!雄飛」
「ありがとうな啓!」
次々と焼き上がるたこ焼き。キラキラした目で見つめていた雄飛は早速一個口に入れる。
「うまい!」
「まだまだ焼くから、たくさん食べてね!」
雄飛は熱さに強いのかたこ焼きを次々に口の中へと放り込んでいた。
「マジか、よくあのペースで食えるな…」
なんであれで平気なんだ…と隣でたこ焼きを割って中を冷ましながら食べようとしていた俊太はドン引きしていた。
「俊太も早く食べないと無くなっちゃうよ?」
啓は慣れた手つきでたこ焼きをくるくる回しながら俊太に話しかける。
「俺はこいつらと違って猫舌なんだよ!」
割ってまで冷ます必要ある?と言わんばかりにソルテは俊太を横目で見ながらたこ焼きを頬張っていた。
ぴんぽーん
ドアベルの鳴る音が響く。
それにいち早く反応したのは白猫のホイップ。角で丸まっていたホイップはすぐに飛び起きると玄関へと駆け出した。
「あ、金村さんかな。ちょっと行ってくるね」
~~~~~
「ホイップー!!!」
「ニャ……」
玄関を開けるなり、見つけたホイップを抱き上げてお腹に顔を埋める夕香。
いやいやながらも大人しくされるがままのホイップ。
「んー!怪我はない?お腹空いてない?あ!朝日奈!ありがとね!!!」
「大したことしてないよ。見つかってよかった」
「私だけじゃ見つけられなかった。だから、ほんとに、感謝してる」
ホイップを抱いたまま、夕香は啓に頭を下げた。
「わわ、お礼するならはかせと兄ちゃんにしてよ。僕なんてほんとに何の役にも立たなかったんだから……」
「二人は今家にいるの?」
「うん。それで、今俊太やソルテとみんなでたこ焼きしてるんだけど一緒にどう?」
「え、いいの?じゃあ……」
~~~~~
「……私ほんとに居てよかったの?なんかお邪魔じゃない?」
啓に誘われた夕香は、奏、俊太、ソルテ、雄飛とたこ焼きプレートを囲んでいた。
「突然誘っちゃってごめんね、せっかくだし人数多い方が楽しいかなって……」
「あ、朝日奈が謝ることじゃないわ!ただ、なんか場違いっていうか」
「にゃ」
ホイップを引き取りに来ただけのつもりが、あれよあれよと家に上がってしまい、しかも知らない姉弟もいるものだから夕香は少し気まずそうにしていた。
「訳あってここで世話になっている、茨木雄飛だ。よろしく頼む」
雄飛が頭を下げる。
「私は金村夕香、よろしくね」
「俺もさっき初めて会って、啓がまーた変なことに首突っ込んでんじゃないかと心配なんだけどさ。ま、そんな細かいこと気にしてたら啓と友達なんてやってられないからな。早く食えよ、冷めちまうぞ」
ソルテの一件で開き直ったのか俊太は一人二人増えたくらいでは動じず受け入れてしまっていた。
あれこれ口出しするのも良くないか、と夕香は気持ちを切り替えてたこ焼きをつまむ。
「そんだけふーふーしてるあんたに言われたくないわ……っ!あつっ」
「へっ、おめーも猫舌じゃん」
「でも、おいひい。あひゃひな、あんた焼くの上手ね」
「えへへ、昔綺麗に焼けるように練習したから」
「そもそも啓は何作らせてもおいしくできる」
「たこ焼きに限った話じゃない」
褒められて照れている啓に奏とソルテからさらに援護射撃が入る。
「そういや調理実習のとき朝日奈の班だけやたら速くて上手だったわね……」
「啓、焼いてばっかだろ、俺が焼くからお前も食えよ」
全てのたこ焼きを取り終えて、二回目を焼き始めようとした啓。
奏は啓にも食べさせるため、自ら焼き始めた。
「あれ?兄ちゃん焼けたっけ?」
「あのなぁ、俺を誰だと思ってんだよ」
〜〜〜〜〜
「ほ、んー……?こうか?そいっ……あれ?」
〜〜〜〜〜
「兄ちゃん」
「見栄張ってゴメンナサイ。自分で食べます……」
たこ焼きパーティー第二陣、プレートの半分はたこ焼きとは到底かけ離れた、タコと生地がぐちゃぐちゃに混ざったナニカができあがっていた。
途中で見かねた啓がバトンタッチした結果、残り半分は綺麗に丸く焼き上がったのは不幸中の幸い。ソルテや俊太は啓の焼いた方だけを次々に自分のお皿へと取り分けていく。
「僕も食べてあげるから、しょーがないなぁ」
「なんつーか意外だなぁ、奏くん何でもできるイメージだったんだけど」
俊太から見た奏のイメージは何でもこなせる超人お兄ちゃん(あと超絶ブラコン)だったのだが、今この瞬間、そのイメージは崩れてしまった。
「悪かったな、不器用で」
奏は竹串でたこ焼きの成れの果てをつつきながら言い放つ。啓ほど綺麗にとは言わずとも、普通に焼けるだろうとは思っていたのだ。それがまさかここまで悲惨な結果になるとは。
「……奏って何でもできそうに見えてただひたすら強いだけだよね」
「へーそうなのか……」
たこ焼きを一つ口に入れながらボソッと呟いたソルテとそれを聞いて少し意外そうな顔をする雄飛。
「おいそこの居候」
しばらく一緒に過ごしてソルテはある程度奏のことが分かってきたらしい。啓に関わることだけはとてつもない力を発揮するのだが、それ以外のことは普通の中学生なのだ。
「朝日奈のお兄さんって何者なの?」
「えー、別に兄ちゃんはちょっと運動ができるだけだよ。足とかすっごい速いの」
(((ちょっとどころじゃないだろ……)))
と、事情を知る友達三人が心の中で突っ込んでいたのは夕香が知る由もない。
「もー兄ちゃんが普段からしっかりしてればこんなこと言われないんだからね」
「はい……」
結局弟に言われてしまえば反論できずうなづくことしかできない奏なのだった。
来年からは毎週更新目標に頑張ります。とりあえず年内はあと一話更新を目標に。
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