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魄星兄弟譚 ~うちの弟は誰にも渡しません!~  作者: 冬佑
幕間 「ソルテの日記」+おまけの章
47/65

閑話 超魔法雪合戦

閑話なので順番だけ変えました。中身は同じです。

 



「んー寒い……」


 時は冬真っ只中、目覚めた啓は体を震わせながら立ち上がる。

 昨夜見た天気予報では雪が積もると言っていた。上着を羽織りつつ、カーテンを開く。


「……やったー!!!積もってる!!!」


 外は一面の銀世界。10cmほどは積もっているだろうか、まだ少し雪が舞っていた。


「さみぃと思ったらやっぱ積もってやがったか……」


 啓の声で目を覚ました奏が啓の隣へやってくる。


「雪だよ!兄ちゃん嬉しくないの!?」

「もう雪積もってはしゃぐ年じゃねえって。おぉさむっ」


 大きく身震いした奏は啓を抱きしめてそのまま布団へ戻っていく。


「んぎゅ、離せー」

「はぁーあったけー」


 結局二度寝した奏が起きるまで離してもらえなかった啓だった。




 ~~~~~




「兄ちゃんが起きないから遅れちゃったじゃん」

「だから俺がおんぶしてやってるだろ?」


 雪が降ったら学校で雪遊びをしようと約束していた啓は奏におんぶされて町中を爆走していた。


「むーそういう話じゃない……って」

「飛ぶぞ。しっかり掴まってろよ」

「うわっ」


 奏は大きく跳躍するとぴょんぴょんと屋根や屋上の上を飛び移っていく。


「やっぱりソルテに迎えに来てもらえばよかった」

「なんだよーそんなに不満か?」


 冬休みということもあってソルテは一度屋敷に戻っていた。空を飛んで遊びにくるというから迎えにきてくれると言っていたのに結局寝坊した奏のせいで先に行ってもらうことにしたのだ。


「だって兄ちゃんが二度寝しなかったらもっと快適な空の旅だったんだよ?」

「吸血鬼より俺のが速い!」


 謎の対抗意識で奏はぐんぐん速度を上げてあっという間に学校までたどり着いてしまった。

 雪を大量に巻き上げて奏は校庭のど真ん中に着地した。


「あ、やっときた。おせーぞ啓!」


 俊太が手を振りながら駆け寄ってくる。

 啓は奏の背中から飛び降りるとここまでくる間に吹き飛びそうになってしまったマフラーと帽子をしっかりと被り直して俊太の方へ歩いていく。


「ごめんごめん」

「あっちで雪合戦してんだ。ほら行くぞ!」


 俊太について走っていく啓と雪を軽く手に取ってその後ろを歩いていく奏。


「食らえっ!」

「冷たっ!やったなー!」


 ついて行く途中で不意打ちで俊太が雪を投げてくる。


「全く、こんなクソ寒いのによくやるわ」

「あらあら、そんなこと言って結局ついてきたあたり、嫌いじゃないのでしょう?」


 奏が呟くと後ろからルナメルが声をかけてきた。


「な、また気配消してたな」

「ふふ、油断してましたね?」


 コートとマフラーに身を包んだルナメルは片手に何やらものがたくさん入ったバスケットを手に持っていた。


「なんで遊びに来ただけで暗殺者警戒しなきゃなんねーんだよ」

「いつでも警戒しておかなきゃ次いつ啓様が攫われるか……」

「自分が攫ったことは棚にあげてら」

「今度は何が来るかわかりませんからね。気を付けてくださいよ?」


 あぁ、そうだな、と言おうとしてそれに慣れている自分に苦笑いするしかなくなった奏だった。


「あっ天護理(あめのまもり)っ」


 啓は自分の前に見えない壁を出現させる。

 ぼすっ

 壁にぶつかった不自然に雪玉が壊れていく。


「ずりー!魔法使ったな!?」

「へへ、これで負けないもんねー」


 啓はいたずらっぽく笑うと天護理で防御しながらせっせと雪玉を作っていた。


「いやそれは手作りなんかいっ!」

「だって雪玉作る魔法なんて知らないんだもん」


 氷の魔法使ってなかったっけと思った俊太だったが、これ以上魔法を使われても面白くないので黙っていることにした。


 そしてその隣の雪合戦はというと……


「おらぁっ」


 雄飛の剛腕から目にも止まらぬ速さで次々と銃弾のごとく雪玉が投擲される。


「サンライトシールドッ!」


 雄飛が投げた雪玉をソルテは光の壁で防ぐ。


「じゃあ俺も、身体強化全開ッ!」


 それを見た雄飛も魔法を解禁、身体強化をかけて全力で雪玉をソルテに向かって投げつけた。


「わわっ」


 ほぼ音速に近い速度で投げつけた雪玉、というよりもはや圧縮されてでき上がった氷球は轟音を立ててソルテのシールドをぶち破った。


「まだまだぁ!」


 身体強化で校庭を駆け回り、目にも止まらぬ速さで大量の雪玉を作った雄飛は次々と雪玉を投げつけてきた。


「ボクだって!」


 ソルテは雪の積もった地面に掌を突き刺した。刺した場所から雪が薄い赤色に染まっていく。


「ブラッド・ブリザードッ!」


 翼を広げて飛び上がったソルテが魔法を唱える。

 ソルテの血が染みたことで操ることが可能になった雪が、猛吹雪を巻き起こす。


「お前らやりすぎだろ!」


 一応は雪合戦という程なので雪を使った攻撃以外は禁止……なのだが普通の人間には立っているのがやっとの猛吹雪。

 俊太は膝をついて腕で顔を覆うのが精一杯だった。


「じゃあじゃあ、俊太も魔法使っちゃおーよ!」

「え、ちょ、ツキウサ!?」


 どこからか突如現れたツキウサが俊太の手を取る。


「やるぞー、餅月(もちつき)雪玉(スノーボール)大砲(キャノン)!」


 俊太を無理やり立たせたツキウサが軽く手を振るうと光の玉が大砲に変形、吹雪の中心のソルテに向かって雪玉を放つ。


「どわっ!」


 その反動で俊太が尻もちをついて雪に埋もれてしまう。


「サンフレアバーストッ!」


 ソルテは飛んできた雪玉に火炎をぶつけて相殺すると地上に降り立つ。


「やるねぇ、まだまだいくよーっ!」

「ちょちょ!」


 トリガーハッピーとはこのことを言うのだろう、俊太の制止も聞かず、ツキウサは雪玉大砲を撃ち続ける。


「月くだ……じゃないか、えーっと雪砕き・(さざなみ)!」


 いつの間にか雪というよりはこちらも鬼の怪力で圧縮したと思われる氷の棍棒を持った凜姫が大砲をバッティングのごとく打ち返していく。


「おっと!餅月・黄金杵(はんまー)!」

「ブラッド・スノーメテオッ!」


 大砲になっていた光球は月光で黄金色に輝きを放つ杵となってソルテの放った巨大な雪玉を叩き落とす。


 無法地帯ならぬ魔法地帯と化した小学校の校庭は赤、黄色、白の鮮やかな雪玉が飛び交っていた。


「に、兄ちゃん……どうしよう……」


 これに参加するのはちょっと無理、どころかいい加減止めないと大惨事になりかねない。

 啓が兄に助けを求めると


「俺たちはかまくらでも作って二人で観戦でもしてよーぜ。誰が勝つか賭けるか?」


 啓がそんな心配をしていることを知ってか知らずか、奏は一人のんきにかまくらを作っていた。

 いつの間にそんなのを、と言いたくもなる速さと出来の良さだ。


「そうじゃなくて、みんなやりすぎだから……うきゃっ!」


「兄ちゃん止めてきて」と啓が続ける前に流れ弾が啓の後頭部に直撃した。


「いったぁー」


 ニット帽のポンポンに当たったので怪我をするほどではないにしろそれなりに痛かったのだろう、啓の目には薄く涙が浮かんでいた。


「おい!大丈夫か!?」

「う、うん、大丈夫……」

「なわけないだろ、泣いてんじゃねぇか。かまくらん中にいろ。すぐ終わらせてくる」


 奏は啓の頭を優しく撫でると猛吹雪と音速の雪玉が飛び交う戦いの中へと歩いていく。


「に、にい、ちゃん?」


 啓が呼んでもそれすら聞こえないくらいにはキレているらしい。


「おい……うちの弟を泣かせたな?覚悟、できてんだろうな」

「雪合戦だからしょーが……ごふっ!」


 反論してきたソルテに向かって奏は無言で雪玉を投げつける。雄飛の身体強化やツキウサの大砲を遥かに超える速度で飛ぶ雪玉はソルテの顔面を直撃した。


「……あーあ、奏くん怒らせちゃった、俺しーらないっと」

「え、俊太逃げるの!?」


 投げるモーションが全く見えなかった。吹雪のせいなどではなく、純粋に奏の動きが速すぎたのだ。雪玉を握って構えているかと思えば次の瞬間には着弾しているのだ。


「全員まとめて相手してやる、かかってこい」


 奏は雪玉を片手に、一歩踏み出した。




 〜〜〜〜〜




「「「「参りました」」」」


 1対4の超ハンデマッチ……のはずが、立っているのは1人側の方だった。1人側の人間は青く晴れ渡った空の下、コートを靡かせて立っていた。

 対する4人側、吸血鬼と鬼の姉弟と月の兎は満身創痍。雪の中に倒れ伏していた。


「マジで勝っちゃったよ。やっぱ奏くんに変えとけばよかったなー」

「僕は賭けてないってば」

「あら、私が参加しなかったから坊ちゃまが負けてしまったわ」


 超魔法雪合戦を横目に啓と俊太が作った雪だるまとかまくらの中で啓、俊太、後から見にきたルナメルが仲良く観戦していた。

 途中から参加するのも無粋かと坊ちゃまを立てて流れ玉処理に勤しんでいたルナメルは水筒に入っていた紅茶を啜ってソルテを助けに立ち上がった。


「あー疲れた」

「お疲れ様、兄ちゃん。おみかん食べる?」

「食べるー」


 奏はかまくらの中に入ると啓を膝の上に抱いて座る。


「ん、あー」

「うわ、食べさせてもらう気満々だ」

「もーしょーがないなぁ」


 一人であれだけ頑張った兄を無碍に扱うほど冷たくはない。啓は剥いたみかんを一つ、奏の口へと運ぶ。


「んまい」

「兄ちゃん一発も当たってなかったよね」

「まぁな……あむ」


 啓に褒められて嬉しい奏は差し出されたみかんをパクパク食べていく。


「でも……やっぱりちょっとやりすぎじゃない?」

「あん?あれくらいでどうにかなる奴らじゃないだろ。気にすんな」

「相変わらずおっかねぇー」


 全身雪まみれで倒れているソルテ達を見てあれくらいと事もなげに言う奏。


「あの最後の、何て言ってたっけ、合体魔法みたいなの、よく避けたよね」

「あー『血月・もちもちオーガストライク!』って言ってたな」

「あれそんな名前だったのかよ」


 追い詰められた吸血鬼、鬼、月の兎が繰り出した最後の大技、紅に染まった雪を頭上に掲げて巨大な雪玉を作ったソルテ、それを餅月魔法で覆ったツキウサ、そして雄飛と凜姫が二人の怪力で撃ちこむ。

 そんな大技も奏は一蹴りで粉砕、全員の顔面に雪玉を直撃させてKOしたのだった。


「今度は負けないからね!」


 ルナメルに救出されたソルテが寒さで真っ赤に染まった顔で奏に言い放つ。


「いや、もうやりたくないんだけど……」


 そこまで雪合戦をしたかったわけじゃない、などと奏が言い訳する暇もなく。

「俺も、負けっぱなしで終わりたくない……!」

「そうそうその意気だぞ雄飛」

「次は俊太も参加してよ!」

 起き上がった雄飛たちも次の戦いをする気満々だった。


「ぜってーやだ!おめーらとまともにやりあえるわけねーだろ!」

「見てるだけじゃつまんないし、兄ちゃんと同じチームで僕もやろっかなぁ」

「「は?」」


 奏と俊太がシンクロしたかのように全く同じように声を上げた。


「まぁ、啓がいるならちょっとは手加減するよ」

「おいまて、やるなんて言ってな……」

「じゃあ俊太は私とチームね!」

「あら、じゃあ私が坊ちゃまとチームで二人チーム戦なんてよさそうですね」

「「はぁー!?」」


 結局二回戦も戦う羽目になった奏なのであった。




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