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第三十二話 神と戦える人間

啓視点です。

一話にまとめたのでいつもより長め。

 



 神様と出会ったのは一年生のときだから、4年前になる。あの時、僕は兄ちゃん、お母さんと日野古神社に初詣に来たんだ。

 参拝する前にまずは手を清める。真冬だとやっぱり水が冷たい。


「はいハンカチ」

「ありがとうお母さん」


 僕はお母さんからもらったハンカチで手を拭いて参拝の列に並ぶ。もうお昼前だというのにかなりの人数が並んでいた。


「啓、寒くないか?」

「んーん、寒くないよ」


 寒くないって言ったのに兄ちゃんは僕の手を握る。兄ちゃんの手も冷たいけど少しすると体温で温かくなってくる。


「寒いのは奏の方でしょ?意地張ってマフラーしてこないから」

「だって啓の方があったかいもん」


 僕は毛糸で編んだ帽子とマフラー、手袋をしているのに、兄ちゃんはいらないって上着だけ着てマフラーとかは家に置いて来ていた。人混みで僕と離れ離れにならないように兄ちゃんは僕を抱えた。大人しく兄ちゃんにされるがままにしているとお母さんがニコニコしながら兄ちゃんの頭を撫でる。


「ほんとに奏は啓のこと大好きね~」

「ぼくの方が兄ちゃんのこと好きだもん」

「あら、お母さんは?」

「お母さんも大好き!」


 僕がそういうとお母さんが僕の頭を撫でる。


「奏、もし私に何かあったら啓のこと頼んだわよ」

「もちろん。何があっても、啓も母さんも俺が守る」

「僕も僕も!」

「啓は……人前で目立つこと、しちゃダメよ?」


 お母さんが僕に釘を刺してくる。魔法のことは家族だけの秘密って言うのはわかっているんだけど、それでも僕だって何か役に立ちたかった。


「えーなんでー」

「啓の力は特別なの」

「僕だって……」


 僕が頬を膨らませるとお母さんは少し考える。


「じゃあ今度一緒に練習しよっか。お料理とかお掃除とかに便利なの。啓に手伝ってもらえると助かるわ」

「わかった!」


 そんなことを話していたらもう僕たちの順番だった。兄ちゃんは僕を降ろして三人で横一列に並ぶ。


「啓、ほら鈴、鳴らすだろ?」

「うん!」


 僕は背伸びして鈴の縄を持って勢いよく鳴らした。

 鈴が揺れてガランガランと大きな音が鳴る。


「はい、お賽銭」


 お母さんに渡されたお賽銭を三人で投げて二礼、二拍してお願い事をする。


(今年もみんな元気で過ごせますように。あと兄ちゃんみたいに強くてかっこよくなれますように)


 僕がそう心の中でお願いしたときだった。


(お主もしや……)


 僕の頭の中に声が聞こえた。目を開けて周りを見ても兄ちゃんもお母さんもまだ手を合わせている。誰の声だろうと思ったとき、僕は眩しさで目を閉じてしまった。


「……あれ?」


 僕はたった一人で雲の上にいた。目の前にはさっきまでいたはずの神社がそびえたっていて、周りを見渡しても神社以外は何もなかった。


「……ここ……どこ?兄ちゃん?お母さん?」


 声を出して歩いてみても二人の返事は無くてどこにも見当たらない。


「やっと見つけたー!!!」

「うわっ!」


 僕の胸に和服を着た女の子が飛び込んできた。押し倒された僕の上で女の子は目をキラキラ輝かせていた。


「すまんすまん驚かせるつもりはなかったんじゃ」

「だ、誰?」

「儂はこの世界の神様じゃ」


 自分のことを神様だって、変な子だなぁ。でもさっきまで寒かったのに、ここは太陽の光でぽかぽかしてあったかい。


「神様?」

「そうじゃ、おぬしもさっきお参りしたじゃろ?」

「えーっと……ここはどこ?」

「ここは神界、神様の世界じゃ。寒かったじゃろ、こっちじゃ」

「しんかい?」


 僕の手を引っ張って神様は神社に向かって歩いていく。きょろきょろ周りを見ても僕と神様以外の人はいないみたいだった。知らない人についていっちゃダメって言われてるんだけどこの子は子供だし神様だって言うから大丈夫……なのかな。


「どこ行くの?」

「儂の家じゃ、お菓子を用意してあるぞ?」

「う、うん……」


 ついて行くと縁側から神社の中に入り炬燵のある部屋に案内された。


「座ってていいぞ。茶を入れてくるから待っとれ」


 そう言って神様は部屋を出て行った。

 やっと見つけたって言ってたけど僕を探してたのかなぁ。でも会ったこともないしなんで僕を探していたんだろう。

 ここには来たこともないし神様には会ったこともない、だけど知っているような、やっぱり初めて会ったような、どうしてだろう。


「待たせたの。お茶とお菓子じゃ、どれでも好きなだけ食べていいぞ」


 神様は炬燵に二人分のお茶とお饅頭、お煎餅、ビスケット、ドーナツ……他にもいろんな種類のお菓子がずらーっと並べられた。


「ほんと⁉ありがとう!」


 どれにしようかすっごく迷ったけど僕はチョコレートドーナツを手に取った。僕がドーナツを食べているのを神様は炬燵に肘をついてこっちをニコニコしながら見ている。


「神様は食べないの?」

「儂はおぬしが食べているところを見ているだけで満足じゃ。おいしいか?」

「うん、おいしーよ。いっしょに食べよ?」


 僕が同じドーナツを渡すと神様はもっと明るい顔になってドーナツを受け取った。


「ふふ、ほんとは儂は食べる必要はないんじゃが、頂くぞ」


 神様はドーナツをもぐもぐ頬張っていく。


「どう?おいしい?」

「うむ、おぬしのくれたものじゃから特別おいしいな……そういえば名前はなんじゃ?」

「朝日奈啓、小学校一年生です」

「ほう、いい名前じゃな。今はその名……」


 神様の言葉は最後の方がよく聞き取れなかったけど何のことだろう。


「……?なぁに?」

「あーすまんな、こっちの話じゃ。ほれまだあるから好きなだけ食べるといい」


 神様は僕に他のお菓子をどんどん薦めてくるけど、この前お菓子食べすぎってお母さんに言われたのを思い出した。


「ううん、これだけにしとく。お母さんにご飯食べられないよって怒られちゃうから」


 僕がそう言うと神様は少し考えてからこう言った。


「啓にはここにいてもらうぞ?そのために来てもらったのじゃ」

「なんで?僕、帰れないの?」

「下界は何があるかわからんからの。ここにいるのが安全じゃ」


 僕、ずっとここにいるの……?神様って言ってたけど僕を誘拐した悪い人だったんだ。お母さんにも、兄ちゃんにももう会えないの?そう思ったらなんだか目から涙が溢れてきた。


「や、やだ、おうちに帰る……お母さんも兄ちゃんもいないもん」

「ここなら一年中あったかいしお菓子も食べ放題じゃぞ?欲しいおもちゃがあったら何でもやるから、な?」

「いらない……兄ちゃんと遊べないもん……」


 我慢しようと頑張ったけど、涙は止まってくれなかった。お母さんと一緒に魔法の練習するって約束したのに、兄ちゃんともっと遊びたいのに、お菓子とおもちゃだけあったって楽しくない。


「お、おい、なぜ泣くんじゃ?」

「うわあああああん!」


 一度泣き始めたら、もう止められなかった。神様が何か言っている気がするけど、何て言っているのかわからなかった。


(たすけて……おかあさん、にいちゃん!)


 兄ちゃんは僕のこと何があっても守るって言ってくれたから、お母さんは僕たちのためにおいしいご飯を作ってくれるから、その分僕も強くなりたい、役に立ちたいって思ったんだ。うちに帰りたい。

 そのとき、胸がドクンと大きく鼓動して熱くなった。


 バリバリッ


 僕の周りの空気が一瞬震えた気がした。何だろう、今のは。


(……啓、どこだ⁉いるなら返事をしてくれ!)


 兄ちゃんの声……?でもすっごく小さくて遠くから聞こえてる感じ。


(兄ちゃん!)


(啓!無事か⁉どこにいる?)


(えっと、しんかい(神界)?っていう神様のいるところにいて……)


 僕の説明がよくなかったから兄ちゃんはなんだか考えている。


(しんかい……?海の中⁉)


(違うの、雲の上……神社なんだけど……)


(どういうことだ?なんだかわからんが……すぐに迎えに行く、待ってろ)


 兄ちゃんの言葉はそれを最後にもう聞こえなくなった。でも迎えに来てくれるって言ってたからきっとすぐに来てくれる。それに兄ちゃんの声を聞いたら涙も自然に止まっていた。


「おお、泣き止んだか。ここにいてくれる気になったか?」

「んーん、にいちゃんが、ぐすっ、むかえに、いくって」


 泣いてたせいで声がうまく出ないけど、神様のとこにはいられない。兄ちゃんと帰らなきゃ。


「ここは神界じゃぞ?迎えに来られるわけがなかろう。……うん?どうして兄と話すことができた?」

「しらない、でもにいちゃんが、いくっていったから、ぜったいきてくれる」


 自分でも何故かはわからない。けど、兄ちゃんなら何とかしてくれるっていう自信があった。

 神様からぷいっと顔を逸らして膝を抱えて座り込む。


「どうなっている……?ここは完全に隔絶された空間のはず、じゃがさっきのは……」

「……兄ちゃん」


 小さな声でぽつりと呟く。それだけでどこかほっとした気持ちになる。

 僕が気が付かないうちに神様は部屋からいなくなっていた。僕は残ったお茶を一口飲んで立ち上がった。


「待ってるだけじゃない、僕も、兄ちゃんを……」


 僕はそっと扉を開けて部屋を出てみる。神社の中を歩き回ってみたけど台所、洗面所、お風呂、トイレと普通の家と変わらないみたいだ。次は外に出てみよう。そう思って靴を履いて歩き始めると

「いてっ」

 見えない壁にぶつかって尻もちをついてしまった。

 何も無いように見えるのに触ってみるとしっかり壁があって出られないようになっている。これも神様がやったのかな。困ったなぁ。

 ぐるっと一周してみたけど神社全体が見えない壁に囲まれているみたいだ。


「魔法なのかな、お母さんがこんな魔法使ってるの見たことないけど」


 僕が見たことある魔法はお母さんが家で家事をするときに使っている火や水、風の魔法だ。

 お母さんは掃除の時に水の魔法で汚れを落としたり、風の魔法でゴミを集めたり、火の魔法で料理したり、いろいろ便利にするために使っているのは見たことがある。


「えいっ」


 火の球を出して当ててみたけど何ともないみたいだ。


「もっと……!」


 右手をかざして体中の血を手のひらに集中させるイメージで……一気に解放する!

 凄まじい爆音と共に目の前にあった魔法の壁が崩れていくのが見える。


「やった……あ、れ?」


 そこで僕の意識は途切れた。




 ~~~~~




「こんにゃろ、開けっての……!」


 兄ちゃんの声がする、行かなきゃ。あれ、目も開けられない、体も動かないし右腕がすごく痛い。


「何事じゃ!」


 この声は神様?いなくなったの気が付いたのかな。でも動けない。


「啓!見つけたぁっ!!!どおりゃああああ」


 バリバリッ

 何かが壊れる音がして兄ちゃんの声がはっきりと聞こえる。兄ちゃんが何かしてるのかな。


「啓、さっきの音はなんじゃ⁉」


 神様も来ちゃった、また連れて行かれちゃうのかな。


「結界が破壊された?なんじゃ、この手は?空間にヒビが入って……!」

「おりゃあ!」


 パリィン!とガラスが割れるような音がした。その後、兄ちゃんが僕のところに来てくれた。


「啓!大丈夫か⁉」

「……あり、がと」


 なんとか小さな声を出すことはできたけどそれ以上は体が言うことを聞かなかった。兄ちゃんが僕をだっこしてくれる。冷たい手だけど、今の僕にはあったかい。


「だ、誰じゃおぬし、どうやってここに……」

「あぁん?そっちこそ……いや、お前がうちの弟を攫った神か」

「攫ったとは人聞きの悪い、儂は啓を保護しただけじゃ」


 あ、二人が喧嘩してる。どうしよう。


「そんなわけあるか、そうじゃなきゃ助けを求めるわけねぇだろ。啓は返してもらうぞ」

「ダメじゃ、下界にいては何があるかわからん。何をするかされるか、わかったものではない」

「啓は確かに可愛いし魔法だって使えるけど悪いことするようなやつじゃない、お前みたいな奴に目をつけられることはあるかもしれないけどな」


 僕はかっこよくなりたいのに可愛いって言わないで欲しいんだけどなぁ。


「もういい、失せろ。天焔叢(あめのほむら)


 神様の魔法……?そう思った瞬間僕を抱きかかえている兄ちゃんがジャンプした。


「あっぶねぇなおい!」

「避けた……だと?」

「啓に当たったらどうすんだ!」


 兄ちゃんは僕を降ろして寝かせてくれた。これ、僕のことは優しくそっと扱ってくれてるけど、多分すごく怒ってる。


「この炎が啓を傷つけることはない」

「そうかよっ」


 どかっ、ばりばり、どーん


 兄ちゃんと神様が戦ってる音だけが聞こえてくる。


「なんじゃ、此奴、すいすい避けおって天秘光(あめのひかり)っ」

「当たるかよっ」


 神様と喧嘩なんてして大丈夫かな、罰とか当たらないかなぁ。


「おぬしこの子がどれだけ特別なのかわかっているのか?」

「あぁ特別だよ。啓は俺の弟だっ!」


 僕が特別?確かに魔法は使えるのは僕以外にはお母さんしか知らないけど、神様も魔法使えるんだから僕を連れてくる必要はあったのかなぁ。


「そういうことではない。啓はこの星にとって重要なんじゃ!」

「知ったことか、あんた神様なんだろ?星がどうとかそういうのはそっちがなんとかしろ。啓を巻き込むな!」


 なんの話だろう、兄ちゃんは僕を巻き込むなって言ってるけど、何か僕じゃないとできないことがあるのかな。


「ずっと探してた可愛い可愛い儂の愛し子じゃ、せっかく見つけたのに……寂しいじゃろうが!」

「そっちが本音だろ!啓は俺の弟だ、何が何でも連れて帰る!」

「黙れっ!人間のお前に何がわかるっ!」


 兄ちゃんだけじゃなくて神様も僕のこと可愛いって思ってるんだ……なんだかむずがゆいな。それに神様も寂しいって思うんだ。確かにここは神様以外に誰もいなかったしずっと一人だったのかな。


天雷槌(あめのいかづち)っ!」

「ぐっ、いってぇ」


 どっかーんとさっきよりも大きな爆発音がした。何が起きたんだろう、兄ちゃん怪我してないかな。


「まだまだ、こんなものじゃなかろう」

「かはっ!」


 どさりと人が倒れる音がする。


(兄ちゃん!)


(これくらい、なんともない、まだやれる……)


 僕の想いが届いたのか、兄ちゃんの心の声が聞こえてくる。

 兄ちゃん、お願いだから、無理しないでよ。


「まだ、立つか。人の子よ」

「俺が倒れたら、啓がまた泣くだろ。啓を連れて帰るまで、負ける気はねぇ」


 兄ちゃん……あ、れ、なんだか、眠く、なって……


 僕の意識は再びそこで途絶えてしまった。




 ~~~~~




「う、うーん……」


 気を失っていたみたい……そういえば兄ちゃんは⁉起き上がってみると兄ちゃんも神様もボロボロになって向かい合っていた。


「はぁはぁ、まだ、やるのかよ」

「何を、そっちこそ、もう限界じゃろう……」


 どれくらい倒れていたのかわからないけど、二人はその間ずっと戦っていたみたいだ。もう二人ともいつ倒れてもおかしくない、止めなくちゃ。


「わっ」


 二人のところに走って行こうとしたら、よろけて転んでしまった。


「「啓っ!!!」」


 転んだ僕に気が付いた二人が慌てて駆け寄ってくる。


「大丈夫か?痛くないか?」

「おぬし魔力が残ってないぞ、あまり無理するでない」


 心配そうな顔で僕を見つめてくる二人は全身傷だらけだ。神様相手に兄ちゃんはこんなに……


「喧嘩、しないでよ……兄ちゃんも神様も怪我するのは嫌だよ……」


 僕の目からは涙がこぼれてくる。

 兄ちゃんと一緒にお母さんのいるおうちに帰りたい。でも、怪我はしてほしくないし、神様に寂しい思いもしてほしくない。僕はどうすればいいんだろう、わからない。

 気が付けばまた僕は大きな声で泣いていた。どうすることもできない気持ちだけがどんどん溢れてくる。

 その時、僕のもう一つの大好きな声が聞こえた。


「やっと、見つけたわ。誰ですかうちの可愛い啓を泣かせたのは」

「母さん⁉」

「なにっ、また人⁉」


 やってきたのはお母さんだった。座り込んで泣いている僕を優しく抱きかかえて背中を撫でてくれる。それだけで、ちょっと気持ちが落ち着いてくる。


「啓、もう大丈夫、お母さんに任せて。……奏?一人で行かないでって言ったわよね?」


 兄ちゃんに対してお母さんは怒っているみたいだ。声が怖い。


「だ、だって……心配だったから……」

「奏にも何かあったらどうするの!」

「それは……俺、強いし、何とかできるって……」


 兄ちゃんもお母さんには頭が上がらない。兄ちゃんの声はさっきまでとは違って尻すぼみに小さくなっていく。


「どれだけ強くてもあなたはまだ子供なの。あんまり無茶しないで」

「わ、わかったよ……」

「でも、よく頑張ったわ。流石、お兄ちゃんね」


 お母さんが兄ちゃんの頭をくしゃくしゃとやると兄ちゃんはおとなしくなった。


「それで、あなたが啓を連れて行った神様?」


 兄ちゃんを自分の後ろに下げたお母さんは神様と向かい合う。お母さんの怒気に神様もたじろいでいるようだった。


「そうじゃが……」

「勝手なこと、しないでいただけます?」

「わかっておるのか?啓の重要性を」


 また僕の話だ、お母さんも知っているみたいだし帰ったら聞いてみよう。神様相手にもお母さんは物怖じしない、すごいなぁ。


「えぇ、啓は私の子ですもの。この星にとって大事、なんてことわかっています。ただ、今はこの子にそんな重たいものを背負わせるつもりはありません。どうするかは啓自身で決めることです。あと、奏は啓にとって大事な存在、そして二人とも私の子です、泣かせたり傷つけたりしないで。どう転ぶかわからないんだから」

「……ぅぐ」

「か、母さんがブチギレてる……」


 兄ちゃんが普段見ることのないお母さんの怒りにちょっと引いていた。神様は言い返したくても言い返せないみたいだ。


「帰るわよ、奏」


 お母さんが兄ちゃんの手を取って歩きだした時、神様が引き留めた。


「ちょ、ちょっと待った。わかった、啓のことはおぬしらに任せる。じゃが、これを啓に持たせてくれまいか」


 神様が手を合わせると手と手の間から光が漏れてきて手を放すとそこには赤いお守りができていた。


「なんだこれ、お守り?」

「あぁ、儂の魔力が込められたお守りじゃ。これがあれば啓は儂の加護を受けられるし、何かあった時はこれで儂に連絡できる。悪くないじゃろ?あと、啓のために用意したお菓子じゃ、これも持っていけ」


 兄ちゃんが受け取ったお守りを僕をだっこしているお母さんに渡して神様がどこからか取り出したお菓子を受け取る。


「そうね……まぁ一応受け取っておきます。あ、向こうに帰る扉、開けてくださる?」

「わかった。行先は、神社でよいか?」

「座標指定できるのね。ならうちにしてもらおうかしら」


 そしてお母さんに抱かれたまま僕は家に帰った。


 これが僕と神様の最初の出会いだったんだ。




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