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第二十四話 友達が能天気すぎる

 



「お邪魔しまーす」

「「ただいまー!」」


 啓とソルテ、そして俊太は啓の家に帰ってきた。玄関を開けるとそこにはメイドのルナメルが二人の帰りを待っていた。


「おかえりなさいませ。坊ちゃま、啓様。そちらはお友達ですか?」

「あ、ども、月谷俊太です」


 ルナメルに聞かれた俊太は一瞬固まってしまうもののすぐに気を取り直して自己紹介する。


「私、シュトラフェルン家のメイドをしております、ルナメルと申します。よろしくお願いいたします」


 ルナメルは頭を下げて挨拶をした。

 俊太があっけに取られていると啓が手を取って中に入る。


「何ボーッとしてるの、いこ?」

「お、おう」


 部屋に入ってちゃぶ台を囲んだ啓たち三人にルナメルは廊下から伝える。


「本日はアップルパイをご用意しました。紅茶を入れてきますので少々お待ちください」


 そう言ってルナメルは頭を下げて扉を閉めた。


「俊太さっきから緊張してない?」

「いや、あの人?威圧感すごくね」


 啓に聞かれて俊太はソルテに同意を求める。


「別に……そんなことないよ」


 が、当然自分のメイドなのだから緊張などするはずもないソルテにあっけなく否定されてしまう。


「いつも遊びに来てるのになんか初めて遊びにきた感じがする……」


 ルナメルがいなくなって少し緊張が解けた俊太はちゃぶ台に倒れ込んで腕を伸ばしながら言う。


「まぁまぁそんなに気にしないでよ。ずっとここに住むわけじゃないし」


 啓がそう言ったとき扉が開いた。俊太は慌てて姿勢を正すが入ってきた人物を見てまた突っ伏してしまった。


「ってなんだはかせか……」

「なんだとは失礼だな。で、ソルテはどうだった学校は」


 はかせは座るとソルテに話を振る。


「うん、おかげで何とかやっていけそう。色々ありがとう」

「はかせ、手続きだけしてあとは僕たちに丸投げしたでしょ。色々聞かれて大変だったんだからね」


 啓の文句もはかせはどこ吹く風、「なんか聞かれて困ることあるか?」と開き直る。


「そりゃどっから来たのとかなんでうちに住んでるのとかお母さんはどうしたのとか、もういっぱい」

「そーかそーか、でもその感じだと何とかしたんだろ?さっすがー」

「俊太にもかなり手伝ってもらってね。はかせ、俊太にはほんとのこと、教えてもいいよね?」


 啓が聞くとはかせは少し考え込む。


「あーそうだな……俊太は啓が魔法使えること知ってるんだよな。一応聞いとくけど、知る覚悟はあるんだな?」

「な、何の覚悟だよ」

「一応、な。色々面倒なことに巻き込まれるかもしれないぞ?」


 さっきまで軽い雰囲気だったはかせが突然、真剣な表情で俊太の覚悟を問う。


「それならやめとく……と言いたいけど、」


 そこまで言って俊太は啓とソルテの方を見る。


「こいつらだけじゃこの先不安だからな……聞くよ」

「んじゃ、決まりだな」


 はかせがそう言ったところでルナメルが部屋に入ってきた。


「お待たせ致しました」


 ルナメルは六等分にされたアップルパイとティーポットをちゃぶ台に置き、カップをそれぞれに配っていく。そして慣れた手つきで紅茶を注いでいく。


「まぁ手っ取り早く言うとな、ソルテたちは吸血鬼だ」


 さっそく紅茶を一口飲んだはかせがさらっと口にする。


「は?」


 はかせの言葉を聞いて、紅茶を飲もうとした俊太は手を止める。


「正確にはルナメルは吸血鬼と人間のハーフだけどね」

「いやそこは重要じゃないだろ。なんで吸血鬼なんかがいるんだ」

「そりゃあ、君の友達は魔法を使うんだから吸血鬼もいたっていいだろう?」


 少し悪戯っぽく俊太に問いかけるはかせ。


「それは……」


 言葉に詰まる俊太にはかせはさらに続ける。


「少し話を変えるけど、この世界とは違う、もうひとつの世界があるって言ったら信じる?」

「信じられない……けど、その話って啓もソルテもそこから来たって言いたいんだろ」

「ご名答。まぁ啓はこっちで生まれてるからちょっと違うけど、魔法が使えるのはそこに関係してるって認識で構わない」


 はかせの話を聞いて俊太はしばらく考え込む。


「実感湧かないなぁ……」

「大丈夫!僕も実感ないから!」


 深刻に考えすぎだと言わんばかりに啓が明るい声で言い放った。アップルパイを頬張り、口の周りにパイをつけたままの能天気な友達を見て俊太は少し楽になった気がした。


「当事者がこんなだもんなぁ」

「それ、どういう意味?」


 俊太の言い方にムッとする啓。


「おかげさまで気が軽くなったってこと。このアップルパイうまっ」


 俊太はアップルパイを食べて啓の指摘をスルーした。


「あーごまかした」

「完全にごまかしたね」

「お口に合ったなら幸いです」


 啓とソルテのツッコミも無視して俊太はアップルパイを食べ進める。


「啓ほど楽観的なのもどうかと思うけどそんな気負わなくてもいい」


 はかせが追い打ちの一言を呟く。


「え、はかせまで酷い」

「そこがお前のいいとこだよ」

「そうそう。その何でもすぐに受け入れられるとこ、すごいぞ」

「そ、そうかなぁ……えへへ」


 褒められた啓はまんざらでもなさそうに頭を掻く。


「「ちょろいな」」

 という二人の小さな呟き声は啓の耳に届くことはなかった。


「啓は悪い人に騙されないようにね……」


 アップルパイを食べながら話を聞いていたソルテは啓に忠告した。

 そしてはかせの説明は続く。


「それで、別の世界からやってきたってのはいいんだが、どうやって来たのか、帰れるのかがわからない」

「ふーん、自由に行き来できるわけじゃないんだな」

「吸血鬼たちもこっち側に来た方法を知らないんだ。僕の知る限り行き来できるのは一人だけいるんだけど、今どこにいるのかわからなくてね」

「正確には転移方法をクラミルは知っているはずなのですが、その方法は私たちも知らされていなくて……申し訳ありません」

「なんとなくだけどソルテのことはわかったよ」


 自分もすっかり慣れてしまったなと思いながらも俊太はアップルパイを食べ、紅茶を啜る。


「それと、これは推測でしかないんだけど、吸血鬼以外にもこっちに来てる人……がいるかもしれないから、気を付けて」

「気を付けたところで俺には何もできないだろ」


 はかせの話を聞いて俊太は眉を曇らせる。


「万が一、ね。よっぽどないとは思うんだけど、無いとは言えないから」


 俊太がため息をつくと啓が「どしたの?」といつも通りの明るい声で聞いてくる。この能天気さは見習うべきか、それとも自分は真面目に考えるべきかと思案してみる。


「大丈夫だって、いざってときは兄ちゃんとはかせがなんとかしてくれるから」

「やっぱ俺がフォローしないと。こいつまたすぐに巻き込まれるぞ……」


 一通り考えを巡らせた結果、決意を決める俊太だった。







おまけ


「ソルテ、初めてなのにゲームうまいな」

「そうかな?ありがとう」

「啓はいつまでたってもへたっぴだから」

「う、こればっかりは否定できない……」


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