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閑話. RDBシステム解説[ チェーンコンボ ]

 俺の名前は管羽(くだば) 英太郎(えいたろう)。友だちに誘われてそれなりに有名と聞いていたオンラインゲーム『ReBuildier(リビルダー) DImentions(ディメンションズ)』というゲームをプレイしている。

 面白いからと言われて始めてみれば、調べてみるとそこまで絶賛されているものではなかったんだが。その件について、友人は黙秘権を貫いている。おのれ。

 それはともかく、始めたからにはそれなりに満足の行く結果を出したい。そんなわけで俺は、今日もログインしてレベルアップに励むのであった。

 今日は友人とインスタンスダンジョンへ向かう予定があったが、先んじてログインした俺は、冒険者ギルドで適正レベルの依頼を探す。

 

「むむむ……あいつはまだログインしてないのか。先に始めとくか。

 えーと。お、これ報酬うめぇ。『一ツ目(ひとつめ)水晶(クリスタル)(かに)のハサミ 25個』か」

 

 一ツ目水晶蟹は、このヤイタイの街近辺の荒野に出現する、青系の甲羅を持つカニだ。防御力が高く、この街に来た当初はダメージが毛ほども通らなかったが、俺のキャラクターは攻撃力の伸びには定評のある『()()()』。

 友人の介護の甲斐もあり、ある程度のレベルアップもした今、ソロ狩りも容易いだろう。

 よし、やるか。

 

 *--

 

 効率悪ぃ……。

 依頼を初めて1時間。集まったハサミはまだ5個だ。というのも。

 

「あ、いた。【甲殻削(こうかくけず)り】」

 

 一ツ目水晶蟹を見つけると、俺は飛び込んで、ヒットすると防御力が下がる一撃を当てる。コレを当てないと、まともにダメージが入らないのだ。

 そして、一呼吸。――ぐわ、一撃受けた。ちくしょう、避けれなかったか……こいつ、ハサミに接触ダメージ有るから攻撃避けにくいんだよな。方向転換だけでもダメージ受けるってなんだよ。

 よし、スタミナ溜まった。

 

「【ネクストチャレンジ】……【フルスウィング】!」

 

 次の攻撃がクリティカルだとダメージが倍増する【ネクストチャレンジ】を発動して、俺の最強技を繰り出す。ワンチャン一撃で仕留めて……クリティカルでなかったー!ちくしょう!!

 今の俺ではここでスタミナ切れだ。これ以上コストを払うと動けなくなるか、そうでなくても行動に制限が入ってしまう。このパターンになると、後はちまちまと削って倒すしかなくなってしまうのだ。

 さっきから運が悪く、クリティカルが出やすいはずの【フルスウィング】でなかなかクリティカルが出てくれない。

 ……一応、コレでもいろいろ試して、コレが一番早い流れだったんだが。

 

「おいーす。きたぞー……あれ、依頼中?どっかで整理するか?」


 ようやく仕留めたところで、友人がやってきた。くそ、こいつが来るまでの間に依頼を終わらせたかったんだが。俺がダメージを受けていることで、依頼消化中だったのに気づいたようだ。

 当初の予定だったインスタンスダンジョンに潜る前に、アイテム整理とかを勧めてくる。

 いや、実際は……整理どころか補給も必要なんだよなぁ……。

 

「いや、ちょっと手こずっちまって。一旦帰って補給もするわ」

「あぁん?何してたんだ?」

「一ツ目水晶蟹」

「ああ、ハサミか。今いくつ?」

「さっきのドロップしてないからあと20」

「ん?いつからやってる?さっき?」


 ……ん?なんか引っかかる言い方だな。

 

「一時間……だけど」

「へぁ!?お前のレベルならそれくらいの時間あれば集まるだろ」

「まだ10も倒してねえよ!集まるかンなもん!」


 なんだこいつ、バカにしやがって!どうせ俺は弱いよ!

 俺の怒りの反論に、友人はわざわざ頭を抱えるモーションをしてきた。何だってんだ畜生。

 

「……ちょっと、イン(インスタンス)ダン(ダンジョン)はパス。先にその依頼終わらせようぜ」


 え?……なんだよ、優しいじゃねえか。でも、わざわざ俺の用事に付き合わせるのも悪いな。今日はこいつの装備素材集めにする、って前から決めてたんだから


「いいって。後で一人でやるから」

「いや、ムリだから。今インダン行っても週回なんてできねえから」

 

 ……何?

 

 *--


 かくして、クリティカル狙いの【フルスウィング】戦法で、またもや泥仕合を見せることになった。その後の友人の一言が、コレである。

 

「お前……」

 

 ……言えよ!その後!なんか言えよ!

 とりあえず絶句したまま固まる友人に、続きを促すが、そいつはただ首を振るだけだ。失礼な。

 

「なんだよ。他に楽な方法があるのかよ」

「むしろ、自力で探すにしてももっと楽な方法があるわ。下から数えたほうがいいレベルで効率悪い」

 

 そこまで言うことはないだるぉぉぉぉお!?

 俺がショックで呆然としていたが、友人はダガーを取り出して索敵を開始した。友人の種族も俺と同じ獣人種であるが、俺の一撃に重きを置くタイプではなく、友人はスピードで相手を撹乱する回避盾、と呼ばれる構成だ。

 当然、攻撃力は俺のクリティカルなし【スウィング】に及ぶべくもないのだけど。

 

「いたな。よく見てろよ。

 ――【バックハインド】、【バックスタ」

 

 あ、振り返った。カニの一撃。

 

「あ、ミスった……ちょ、まって。今のナシ、今の」

 

 あ、死んだ。

 なんだかわからんが、いきなりカニの近くにワープしたと思ったら、カニが振り向いてハサミに当たってしまった友人。なにか想定と違ったのか、そのまま俺が見守る中で、3発4発とダメージを受けて死んでしまったのだ。

 何がしたかったんだ、あいつ……。

 

「いやー、あれは事故だわ。もっかいやるから見ててくれ」

「お、おう……」


 恥ずかしそうに帰ってきた友人は、あらためて一ツ目水晶蟹に向き直った。ちなみに、友人を殺したやつと同じやつだ。

 私が見守っておりました。

 

「ほい、と。【バックハインド】、【バックスタブ】」

 

 ……は?

 友人は、今度は正面から一撃切りかかった。カニの攻撃に合わせて、何かしらのスキルを発動したのだろう。姿を消して、カニの背後に現れる。当然カニは空振りをするのだが、そこからの展開は、自分の目を疑うような光景だった。

 脳天から突き刺された友人の一撃で、一ツ目水晶蟹は消滅。死んだのだ。

 

「ま、こんなもんだな。お前も覚えてるだろ、【バックハインド】と【バックスタブ】」

「あ、ああ。でも、【バックスタブ】って不意打ちアビリティだろ?最初の一撃しか効果がないんじゃ」

「不意打ち効果を勘違いしてるぜ。具体的には、相手の視界に入っていない状態での攻撃だ。

【バックハインド】は、相手の攻撃のタイミングに合わせて発動して背後に回るスキルだけど、この時相手の視界から完全に外れるからな。

 後は【バックスタブ】でクリティカルが出れば一撃死よ」

 

【バックハインド】も【バックスタブ】も、俺が覚えたかったスキルの条件になるアビリティを覚えた時に使える様になっている。しかし、【バックスタブ】のクリティカルは確率が【スウィング】よりも低かったはずだけど。クリティカルが出れば即死効果が出るにしても、その確率は低いし、ノンアクティブ――こちらが攻撃するまで、ターゲットを取ってこないやつら――に対する初撃にしか使えないわで、完全にスルーしていたスキルだ。

 

「お前、どっかでチュートリアルすっ飛ばしてるわ。これが、チェーンコンボだ」

「チェーンコンボ?」

「スキルを連続で繰り広げることで、スキが少ない、連続攻撃ができるんだ。しかも、チェーンコンボがつながれば付与効果が重なって、タイミングが難しかったり、運任せの要素も確定で出せるようになる。

【バックハインド】は、実はクリティカル確率アップ効果があるんだが、チェーンに乗らないとほぼほぼ恩恵はないくらいの短時間の付与効果なんだよな。でも、【バックスタブ】をモンスター相手なら確定クリティカル出せるくらいの補正が有るんだぜ」

 

 なるほど。上手く行けば、見つけて、一撃で終わる。確かに一時間程度あればハサミ25くらいは出せそうなくらいは乱獲できそうだ。

 

「チェーンコンボはいろんな繋ぎ方があるからな。インスタンスダンジョン行くなら、必須だぞ。コレが使えないと、攻撃も防御も足りねえよ」


 それで、インスタンスダンジョン行を延期したわけか。なるほど確かに。

 こうして今日は、俺のチェーンコンボの練習に回されることになった。

 

 *--


 いやムリ。なんだこれ。

 まず、チェーンが発動するタイミングが厳しい。

 一番簡単な通常攻撃からの【スラッシュ】でも通常攻撃の振る途中に0.5秒間しか無い。スキルからスキルとなると、最長でも0.3秒らしい。しかも、チェーンをつなげればつなげる程にスキルを発動できるタイミングは短くなる――具体的に言うと半減していくらしい。

 人間にはムリだろ、とマクロでも組んで楽をしようとすると、RBDの驚異の時間間隔の話を聞く羽目になった。

 なんでも、プレイヤーの見えている世界は30FPS――1秒間を30分割して描写する手法――で見えているが、ゲームの内部では特殊な処理で360FPSというわけのわからない判定で、マクロを使ったとしてもチェーンがつながるのはまれらしい。逆に手動のほうがチェーンがつながるという謎の状態なのだとか。有志の調査によると、ぶつ切りの入力タイミングがあるのだとか。それで何が起こるのか?友人もよくわからないらしい。

 実際、友人ですら見せてくれた暗殺コンボの成功率は、何の妨害もない状態ですら未だに6割程度らしい。よくそれで自信満々に俺にお手本披露しようと思ったな。

 とりあえず楽はできない、体感で学ぶしか無いという、ひたすらプレイヤースキルが物を言う仕様。あまりに上手く行かず、俺が悲鳴を上げたのは特訓から二時間後の出来事だったとさ。

 ……ちなみにハサミが集まったのは、キリよく100匹撃破したタイミングだった。友人によるとドロップ率は5割らしく、素晴らしく運が無いと評された。

 ちくしょう。クソゲーかよ。

 ご拝読・ブックマーク・評価・誤字報告にご感想、いつもありがとうございます。

 先行入力やリズムゲーのようなコンボシステムならマクロ組めば一発なんだよね、というプレイヤーの思惑を裏切る運営の屑、と呼ばれそうな難解なシステムです。

 プレイヤースキルを極端に求める戦闘システムですが、こういうのが苦手な人用の救済策ももちろん用意しており、コンボに使用するスキル・アビリティをまとめて1つのスキルとして登録するシステムがあります。

 しかし、こちらはチェーンに載せた場合と比べて消費スタミナの減少やスキル・アビリティの付与効果が乗らないというデメリットも有り、ただの魅せプレイ用のシステムに成り下がったという裏話もあります。

 基本的には一部の物好き以外はライトユーザーを離れさせたギミックになります。高方針に特化して、それでも残ったプレイヤーなんかも居ますが。

 そんな、ソウル・トーカーって化け物だよねアピール話でした。


 ところで、なんで英太郎くん、獣人種使ってるんでしょうね。

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