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ようこそ、おかえり、ただいま

 出てきた中には、他の顔なじみの面々もいた。

 

「シオさん!無事だったか!」

「シオ!テルヒロさん!よかった」

「ゼロゴ!居たか!」

「ネモちゃん!ニュウさんも!」

 

 向こうが先に気付いて声をかけてくれたので、俺たちはそちらの方向を向いた。その先頭を切るゼロゴは、すっかり顔色が良くなった姿で白に金の文様の入ったローブで現れていた。

 

「ゼロゴ、大丈夫なのか、こっちに来て」

「もちろん。おかげで人間に戻れたよ。【アビリティ】の取得し直しで、まだ『賢者』にもなれてないけど」

「その手前なら十分。後方支援で頑張ってくれよ」

「任せてくれ」

 

 聞いてみれば――種族の状態が気になっていたところだったが、どうやらしっかりリセットクエストを完了していたようだ――今は回復系の【アビリティ】を集中して鍛えているようだ。

 ネモは相変わらずの山賊ルックではあるが、その装備は明らかに強化されまくっている。気になるのは、()()()()()()隠れているニュウの存在だ。

 

「えっと、ニュウさん……?ひょっとして」


 その様子に、恐る恐る声をかける照裕。答えたのは、破顔したネモだった。

 

「そうなの!お姉ちゃん、今ゼロゴさんと付き合ってるんだよ」

「ちょっと、ネモ!」

 

 心底可笑(おか)しそうに笑いながら答えるネモに、ニュウが顔を真っ赤にして声を荒げる。「おっと、いっけない」と、全く反省のそぶりもなくクランバインさんの元へ駆けていくネモ。

 俺がゼロゴに視線を向けると、彼も照れくさそうに頭を掻いた。

 

「えっと、そういうこと」

「なにがそういうことだよ。何気にしてんだ。

 ……おめでとう」

「はは、なんか変な感じだな。でも、ありがとう」

 

 ゼロゴはそう言って笑うと、ニュウと手をつないで部隊の編成へと向かった。

 入れ違いに、クランバインさんがこちらに向かってくる。

 

「テルヒロ、アイネトは」

「この建物の外で、自衛隊と、ジェノさん……あ、えっと」


 どう説明したものか、と言葉に詰まって俺の方を見る照裕。俺は、仕方ないな、と苦笑してクランバインさんに向いた。

 

「俺の爺ちゃんが自衛隊を救助しつつ、アイネトと戦っています。援護を、お願いします」

「シオ嬢の祖父?」

「祖父と言うか、ひい爺ちゃんで、精霊種なんです。まぁ、詳しい話はひと段落の後で。色々あるので」

「む……なんだかややこしいことになってるが、承知した。

 ……ところで、シオ嬢」

「はい?」

 

 眉間にしわを寄せて、理解を放棄したようにクランバインさんが頭を振った。そして、(いぶか)し気に俺を呼ぶ。その様子に、俺が眉を(ひそ)めると、クランバインさんは俺と照裕を交互に見て、何か納得したように、一つ頷いた。

 

「何か一皮剥けたようだな。何だかわからんが、よかった」


 なんだかわからんならそっとしておいてほしい。突っ込んでほしくないところを突っ込まれたようで、俺は視線をつい、と()らす。

 

「――しかし、大変だったようだな。テルヒロ、その装備ではもう戦えまい。こちらは、我々に任せてくれ」

「お願いします」

 

 クランバインさんは、改めて照裕を見て、そのボロボロの様相をみてそう断定した。まぁ、俺もそう思う。剣もなければ鎧もないしな。

 まだ戦えると言いそうな照裕を制して、俺はクランバインさんにお願いをした。

 そうして、王都騎士団の混合部隊は、召喚の間から外へ飛び出していった。

 しばらくして、轟音と怒号。本格的な戦闘が始まったようだった。同時に、爺ちゃんから通信が入る。

 

『紫苑、これは』

「俺が呼んだ、援軍だ。救護に集中して、爺ちゃんたちは撤退戦を」

『……わかった。紫苑たちは?』

「俺は、まだ」

『ぬ……無理するなよ』

 

 端的な話だが、爺ちゃんは俺の意見を尊重してくれた。助かる。

 なにせ、()()()()()だ。

 

「紫苑、俺たちはどうする?」

「もう一つ、やることがある。ちょっと付き合ってくれ」

 

 本当は、騎士団に対アイネト装備を一式渡したかったが、召喚でごっそりMPを持っていかれた俺には、それだけの余裕がなかった。

 俺ができるのは、あと()()の召喚だけだ。ギリギリ間に合ってよかった。

 照裕に手伝いを頼み、MP回復薬を渡されつつ、最後の召喚を行う。

 

「【魔法陣学:召喚(対象 -> 深淵)】」

 

 アクセス先は、RBDの大地じゃない。

 ()()()()()()、データベースだ。

 潜り、潜り。

 ――見つけた。俺の――()()()()、データ。

 

「照裕」

「ん?」

 

 俺が声をかけると、照裕は不思議そうな顔で答えた。

 

「今度は、俺が守るよ」

「……え?」

 

 俺は、データベースから引っ張り出した「そのアイテム」を手にする。クランバインさん達と共に出てこなかった――あるいは、()()()()()()()()、あいつらを呼ぶために。

 

「発動。『妖精の取り換え(アカウント変更)』」

 

 俺は、召喚ゲートを閉じ、その指輪状のアイテム――課金アイテム『チェンジリング』――を使った。

 これは、RBDのゲーム内通貨ではなく、リアルマネーを使って購入できるアイテムの一つだ。その効果は、別のサーバーのキャラクターを、使ったサーバーに呼び出す、というもの。

 その代わり、そのサーバーで使っているキャラクターは呼び出す先のキャラクターのサーバに移動してしまう、というもので、一つのサーバーに一つのキャラクターしか置けないRBDのシステムは非常に評判が悪かった。

 しかし、設定厨の俺としては、子供の取り換えの伝承である『チェンジリング』を使用したこの仕組みは結構気に入っており、検証班に所属していた第2サーバーと検証用に攻略の必要がある場合のキャラクターを保存していた第3サーバー間で、必要に応じてリアルマネーを消費してキャラの移動をしていたものだった。

 だが現実のこの世界で、俺がこのアイテムを使うことで俺がどこか別の世界、"別のサーバー"に飛ぶことはなかった。


 俺の代わりに、「()」が降り立つことになった。

 

「その姿、は……」

 

"俺"を見て、照裕が驚いた声を上げる。

 目線はすっかり同じより少し上になった。体は軽く、視界は思ったより狭くない。

 ()()()は、どこか戦っている姿を夢見心地で見ていた。あの時の光景も、経験も、どこか他人事だ。ほとんど覚えていないといっても過言ではなかった。

 でも、今は違う。俯瞰視点のように、少し離れたような、自分の視界なのに、別の場所のカメラから光景を除いているような。

 体を動かすことはできないが、それが自分の意思で動かしている実感がある。

 

「待ちわびたぜ、()()

『待たせたね。後は頼むよ』


 俺の言葉は声にならない。でも、相棒の声は、明らかに口から発せられていた。

 なるほど。こういうことになるのか。

 さぁ。


 最強のお通りだ。

 

 ご拝読・ブックマーク・評価・誤字報告にご感想、いつもありがとうございます。

 OE事件組の帰還を経て、ついにアイネトキラーが動きます。いったい、何トーカーなんだ…?

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