帰還
「――ここは」
目が覚めた。知らない天井だ。
口には呼吸器がつけられ、体は動かない。
目は薄っすらとしか開かない。
「――」
何か。
声がする。
横だ。
影がある。
たくさん。
誰かがいる。
泣いている。
泣き声だ。
カタツムリが歩くようなじれったさ。
顔は動かない。
視界だけが、ようやく横を向く。
カーテンの向こう。
影しか見えない。
「――テルヒロぉ……ぅぅ……」
……照祐?
カーテンが開かれた。
……誰だ?
黒い。
逆光の影で、だれかわからない。
「なんで、お前だけ」
怒っている。
なんで。
「どうして、お前だけ」
恨まれてる。
なんで。
「なんでお前だけ帰ってきたんだ」
俺だけ?
照祐は?
ダメだった?
「お前が」「悪い」「失敗した」「帰ってくるな」「おかしい」「ダメなやつ」「悪い」「気持ち悪い」「嘘つき」
――ああ、そうか。
囲まれた。
怒鳴ってくる。
恨んでいる。
俺は動けない。
悪意を、ただ、受け続け。
そうか……。
だったら。
「死ね」
それは、テルヒロの声。
「死ね」
――そうだな。
じゃあ、「シオ」の体にしたのは、お粗末だったな。
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