世界の真実を共有して
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Congratulations! WE 撃破!
クリアランク:C
MVP
ダメージディーラー:ネモ
サポート・タンク :テルヒロ
サポート・ヒーラー:シオ
損害率
プレイヤー :11%
NPC :5%
実績
邪教団の壊滅
チェーンクエスト達成率 30%未満
地下室の開放
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ゼロゴを退けたことでか、目の前に突然ウィンドウが広がった。
……WE?ゼロゴの事か?ゼロゴが身に着けたのはWEの加護じゃなくてWE自身だったのか?それともゼロゴ自身がWE?
とりあえず、これで『邪教徒の塔』のイベントが完遂されたことは間違いないだろう。
……ああ、そうだ。地下も解禁されたから、他の人の意見も聞きたいところだ。俺の推測があっているのか、はたまた地下の情報に触れることで、俺の知らない情報を持っている人間が出てくるんじゃないか。俺はクランバインさんに話を聞こうとして――。
「ど、どうした?」
テルヒロとネモが、リザルト画面を神妙な顔で見ていた。……え、何でそんな顔してるんだ?
「いや、だって犠牲者が出てるって……」
「犠牲者?」
テルヒロが何を言っているのかわからず俺が眉をひそめていると、彼はリザルトウィンドウの損害率を指した。
……ああー。俺は二人が顔を曇らせている理由を理解して、それが妙な不安や悲壮な内容ではなかったことに、大きく安堵の息をついた。そして、その誤解を解消させることにする。
「それ、HPだよ。パーティで死んだメンバーの割合とかじゃないから、安心してくれ」
「え!?そうだったのか!?」
テルヒロとネモが二人、目を見開いて驚きの言葉を返してきた。
なるほど。ネモも知らなかったのか。まぁ、WEのことは知っていても、フォウニーの時の不慣れを見た感じ、公式イベントのレイド戦はともかく、シナリオ攻略中に発生するサブクエストのレイド戦はよく知らなかったのかもしれないな。
俺がいないときにはネモにゲームのことを聞いていたんだろう。それで誤解が広がっていたのか。ついでに、俺の話でネモもホッとした顔をしていた。
「クランバインさん、『邪教徒の塔』のイベントをクリアした人っていましたか?」
「うむ、今回が初めてだ。何かあるのか?」
「……この塔の地下に、この世界の歴史が残っています」
「……"この世界"……」
俺の話に、クランバインさんは「むぅ」と顎に手を当て、唸りながら考え込んだ。
「……こちらから人材を当てよう。少し待っていてくれ」
*--
それからわずか1時間後。
騎士団長の【スキル】である【団員招集】により、ヴォルテさん含め、調査団4人が『邪教徒の塔』に到着した。
王国騎士団側にクランバインさんがいることでか、塔に入っても調査団もクリア済みの状態の塔で合流することができた。俺たちは、【捕縛】されたゼロゴとともに、ぞろぞろと塔の地下へと向かった。
「……どれだけ人を集めても同じだ。事実は変わらないし、僕たちは帰ることができない」
「それを決めるのは、君の主観ではない。公平に、意見を交わした結論だ」
地下室に入る前に、渋って不平を漏らしたゼロゴだったが、クランバインさんは迷う間もなくバッサリとその意見を切り捨てた。
随分と迷いがないけれど、彼にはいったい、どんな根拠があるのだろうか。
「……これは……」
そして、全員で件の動画を見た。
全員、言葉もない。当然だ。その動画は、言い様のない説得力があったからだ。しかし同席しているゼロゴは、前もって俺の話を聞いていたせいか、顔をしかめていた。初めて俺に動画を見せてきた時のような自信は見えない。
顔を青くして画面を見ていた面々を見まわし、俺は咳払いを一つした。
全員の目が俺に向く――ので、俺はふい、と視線をそらした。とりあえず、これで話ができる区切りはできたはずだ。
「ちょっと話を聞いてほしい。ひょっとしたら、俺の知ることも、そもそもみんなが知らないことなんじゃないかと思うんだ」
俺は、事の発端を話した。
やはり、この場にいる騎士団の誰もが『Open Eyes』の存在を知らなかった。それどころか、ゼロゴと同じく異世界転移だと思ってた人もいたくらいだった。
「それは……だが、君の言うことに証拠はあるのか?」
しかし、途中で調査団の一人が口を挟んできた。
――そう。俺の言うことは、今の状態では妄言にも等しく、その根拠は何も用意できない。あるのは俺の記憶を元にした言葉だけだ。
だが、それでも。ここであきらめなくてはならない状況になるのは、困る。信じてもらうしかない。
何とか説得しようと言葉を選んでいると、不意にテルヒロが口を開いた。
「シオの言うことは信じられないかもしれない。けど、この動画も信用できないじゃないか」
……は?
え?ん、んん~……?なんか予想の斜め上の擁護が入ってきたぞ。
「て、テルヒロさん?それは……なんで?」
ネモが、理解が追い付いていないのか素の口調で尋ねてきた。テルヒロは、「ええと」と頭を描いて俺を向いた。……ん?俺?
すこし眉を下げて、俺にコソコソと話しかけてくる。
「なぁ、ゲームの外の話、話しても大丈夫か?」
「んあ?リアルってことか?」
う……ん……、仕方ないだろう。今の目的は「元の世界に帰る」ことだ。
そのために、多少俺の心象が悪くなったとしても、こちらとしては目的を完遂さえすれば問題ない。この場にいる人間とは……まぁ、きっとこれっきりの関係になるだろうしな。
むしろ、人が絡まなくなるだろうから、それはそれで問題ないだろう。
それに、俺もテルヒロの感じた、この動画の違和感について詳しく知りたい。
俺がこくり、と一つ頷いた。テルヒロも一つ頷いたものの、許可が出たにもかかわらず、恐る恐る動画をもう一度再生した。
ほんと、気にしすぎだよ。
――連々と、動画の中で話が進んで。
『「おい、ナニ無駄話してんだ」』
その音声がした途端、動画を止めた。
「ここにシオがいるのはおかしいだろ」
――……は!?
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間もなくこの章もクライマックスを迎えます、が、まだ世界の謎はすべて明らかになりません。
次の章で、決着となります。




