お化け屋敷、ジェットコースター、どっちが得意?
今の僕はお化け屋敷とジェットコースターのどっちも苦手だけど、両方とも大好きなのも事実、特にお化け屋敷については「怖いもの見たさ」で大好きかな?
幼い頃はどちらかと言うとお化け屋敷は大の苦手、誰でも入れるお化け屋敷よりも身長制限を設けられている本格的なジェットコースターには憧れに近い感覚を持ち続けていたので、小学校の高学年になってからやっと乗る事が出来るようになったループのあるジェットコースターが大好きになりました。
あの頃からジェットコースターに対して恐怖心は全く持っていないのに、二十歳の後半を過ぎた辺りから『内蔵を揺さぶられるような感覚』には気分が悪くなってしまうんで、なるべくならジェットコースターよりもお化け屋敷で『わ~わ~』と騒いでいる方が楽しいってのが本音になります。
この小説を書いていて思い出したのが、小学校6年生の頃にバス旅行で行った遊園地での不思議体験・・・
僕が小学校6年生の頃はと言えば、今から約30年以上も前、日本が高度成長期からバブル経済へと向かう最中、第二次ベビーブーム世代の子供たちの成長に合わせるがごとくあちこちに遊園地が開園をして一段落が着いた頃でもあり、それまで楽しんでいた動物園の園内にある、子供騙しのジェットコースターとは比べ物にならない回転ジェットコースターに乗れるようになっていたので、当然にも行きのバスの中から友達と
「一番最初はジェットコースターに乗ろうぜ!」
との話になり、大阪市内の遊園地に到着するなりパンフレットに載っている地図を頼りに仲良し4人組でジェットコースターのある場所まで猛ダッシュ!
したけど、どこの遊園地にとっても目玉アトラクションであるジェットコースターだけに早くも長蛇の行列が・・・
皆がっかりしながらも時間を有効に使う為に仕方がなく、でも超ハイテンションのまま比較的にも空いているすぐ近くにあったお化け屋敷に入る事に・・・
このお化け屋敷は徒歩で屋敷内を通り抜けるのではなくて、トロッコみたいな小さな乗り物に乗って屋敷内を通り過ぎる形式のお化け屋敷、一応はドキドキしながら恐怖体験の世界へと出発したのですが・・・
現在の遊園地でのお化け屋敷と言えば大人でも恐怖を感じる繊細な演出が施されているものの、当時のお化け屋敷と言えば動物園にあるお化け屋敷と何ら変わらぬ子供騙しの演出、展示物と言えば『棺桶のフタが開いてドラキュラが起き上がる』や『鬼が腕を動かしながら人間を拷問している』人形があったりの、日本の妖怪と西洋の妖怪とが真っ暗闇の中の区切られた空間で、赤や青のライトで照らし出されているだけの演出、幼い子供ならいざ知らず小学校6年生にもなった僕ら悪ガキには恐怖とは逆に笑いのタネにしかなりませんでした。
そんな子供騙しの展示物を見た4人の悪ガキは最初から
「なんやねん!こんなん全く怖くないやねえか!」
とお化け屋敷には明らかに不釣合いな『わ~わ~』との騒ぎ様、それでも途中で待ち構えていた『エクソシスト』の女の子が首が360度回転した時には少し恐怖を感じたものの、強がった1人がトロッコから身を乗り出し、手に持っていた園内パンフレットを丸めて人形の頭を『パチンッ!』と叩く悪ふざけ、その光景を見た他の3人は大笑い、次に首を伸ばしてきた『ろくろ首』の頭なんて4人が競うようにパンフレットで叩きまくりの大騒ぎ、すっかり妖怪バスター気取りで次の人形に向けて丸めたパンフレットを構えた瞬間・・・
いきなりもの凄い衝撃が次から次へと4人の頭に襲い掛かりました!
みんな「何事!?何事が起きた!?」と激痛の原因に視線をやると・・・
顔を真っ赤にしたおっちゃんが物凄い怒りの形相で
「黙らんか!」
と言いながら、僕たちが妖怪退治に使っていた武器、丸めたパンフレットを4人から捥ぎ取るようにしてその場から去って行きました・・・
おそらくだけど、お化け屋敷の係りのおっちゃんが、あまりにもうるさい悪ガキ共に堪忍袋の緒が切れて、我慢できずにトロッコのレールの上を走ってきて悪ガキ4人の頭に怒りのゲンコツを振り下ろして去って行ったんでしょうね。
それからお化け屋敷を出るまでは流石の悪ガキ4人組も大人しくトロッコに乗っていたものの、その程度のお仕置きは日常茶飯事な悪ガキども、お化け屋敷から一歩外に出るなり反省の様子を微塵も見せずに案内書へ直行、再びパンフレットを片手に他の乗り物に目星を着けて直行、次にお楽しみにしていた大観覧車に乗車、しばらくは大人しく座っていた4人なのに、頂上付近に近付いた辺りで4人が見詰めていた先には『絶対にゴンドラを揺らさないで下さい』の注意書きが・・・
ダメと言われればやりたくなるのが悪ガキの特徴ってもんで、いつの間にやら立ち上がった4人は
「わ~わ~!きゃっきゃ!」
と言いながらゴンドラを揺らしまくり、すると音楽が流れていたゴンドラ内の小さいスピーカーから
「こら!大人しく座っとけ!」
と、お化け屋敷で怒鳴られたのと同じおっちゃんの声が響きまくり、すると、ゲンコツの痛さを思い出した4人は無言で着席、怖いおっちゃんが待ち構えていないか冷や冷やしながら下を眺め、ゴンドラが下に到着をして扉が開くなり一目散に走ってその場から離れました。
それからの悪ガキ4人はあの怖いおっちゃんに見張られているような気がしたので、ある程度の自制を覚え、楽しく遊びながらも度を超えた悪ふざけをする事もなく迎えた夕方、ジェットコースターの行列も幾分かましになっていたので念願のジェットコースターに搭乗、相変わらずはしゃぎまくりながらの4人も流石にジェットコースターの恐怖には悪ふざけをする余裕も無く無事に終了、するとジェットコースターから降りた途端に4人の中の1人が首を傾けたまま
「何か首が痛い・・・」
と・・・
その辛そうな友達の様子を見ていると、最初の悪ふざけの引き金になったお化け屋敷での『首が360度回転するエクソシストの女の子』を思い出し、みんな口を揃えて
「あのお化け屋敷の人形の祟りやで!」
と、本当はジェットコースターの急激な加速による軽いむち打ち症だったと思うのですが、小学校6年生と言えばまだまだ子供、段々と怖くなってきたのでもう一度お化け屋敷に入り、悪さを仕掛けた『エクソシストの女の子』と『ろくろ首』に心から反省の思いを伝えると、不思議な事に友達の首の痛みもウソのように引いたのには
「本当に人形の祟りだったのかも?」
なんて思ったりもしていますが・・・
それで友人の首の痛みも治った事で一同やれやれのベンチで休憩、もう支給されていた乗り物券を全て使い果たしていたので時間潰しにしばらく遊園地内の探索をしていると、何故かいつの間にやらお化け屋敷の建物の裏側に・・・
そこには役目を終えたのか?
身体の可動部分の故障なのか?
あっちこっちの色が剥げた人間大の赤鬼の人形が雨ざらしで寝転がっていたので、お得意の悪ふざけで蹴ったり叩いたりしようと身構えたのは僕だけじゃなかったのに、その赤鬼の人形の表情が何故か悲しげに微笑んでいるように感じ、誰一人として悪ふざけもせずに通り過ぎ、自由時間も終わりに近付いていたので朝に解散をした集合場所に向かい、そのまま何事も無くバスに乗車、そうして楽しい遠足の一日は過ぎ去って行きました。
その日の夕方、何気なく見ていた夕方のニュースの中で、僕たちが行ったのとは別の遊園地で『悪ふざけをしていた小学生が遊具から落下をして大怪我』との事故の状況が流れていました・・・
そのニュースを見ていると
「もし・・・最初のお化け屋敷で怒鳴られてゲンコツを喰らっていなければ?もし大観覧車で怒鳴られていなければ?もしかすると僕たちも大怪我をしていたかも?」
と、お化け屋敷での出来事を思い出し、僕らを怒ってくれたおっちゃんの顔と建物の外に放置されていた赤鬼の人形の顔がダブって思い出され・・・
改めて思い出した、赤鬼人形の握りこぶしには・・・
しっかりと、真新しい4枚の園内パンレットが握られていたのを思い出したんです(*。◇。)ハッ!。
信じるか信じないかは・・・
あなた次第です・・・