天女ばるきり
戦国時代、貧しい土地を治める小国があった。
そこは人も土地も痩せこけているにも関わらず、少数ながら精強な兵を抱え、勇猛な士が率いていた。
作物が実らず、兵士として戦い、他国から資源を奪うことで成り立ち、傭兵として他国と合力することで銭を稼いでいたが、物量抗いがたく、最後には天下人に摺りつぶされて終わったという。
その獰猛とでも言う程の強さの秘密を調べたところ、噂では、特殊な天女信仰を持つ土地であったに起因しているという。
その小国では、勇敢に戦って戦死した者の霊魂を、美しい天女が迎えに来て、天界へと連れて行ってくれるという。
死ねば別天地が待っている、という教えは、為政者にとっては淫嗣邪教の類である。決して広がらぬように、滅ぼしつぶしておく必要があった。
しかし、疑問は続く。
天女によって、天界へと連れていかれた武者の魂は、天界の軍勢の一兵卒として迎え入れられるという話なのだ。
戦に明け暮れて、くたびれて死んでも、また戦いに駆り出されることが、幸福であるという信じ仰ぐというのは、余りに功徳のない者である。
それとも。
その天女とはそこまでのものか? それに見初められ、認められることは、全てを差し出す程の……




