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五百剣  作者: 伊藤大二郎
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刀に魔性など宿らない


 刀に生きてきたといってもいい。

 武士として生きるからには、剣術はすべての基礎である。

 剣という存在があって、初めて侍として認められ、すべての政事を始めることができる。

 役人として生きるということは、剣と生きると言ってよい。


 だからこそ、わかっていることがある。

 刀に魔性など宿りようがない。

 今まで何本もの刀を眺めてきたが、すべてはよく研がれた鋼に過ぎなかった。

 刀そのものが原因の諍いで起きた刃傷沙汰で、何人もの武士が死んでいった。

 あまりにくだらない。剣に生きるとは、剣に使われることではない。なぜそれがわからない。


 妖刀なるものが持ち込まれた。

 主君より拝領した刀であるため、処分することもできずに困っているという相談を持ち掛けられたが、そのようなものをどうしろと言うのか。

 抜きはらう。ただの剣だ。

 ただの磨き抜かれた、剣だ。


 その刀身の美しさ。磨き抜かれた水面が、そこにある。

 明けの明星の瞬きは、観る者が観れば、心を震わせる。

 切っ先に、明星の光が反射した。

 理解した。ああ、これはいけない。

 こんないけない刀と共に生きるには、おかしくなるしかない。



 ただの刀をもって、私は持ち主を斬り殺した。

 魔性はここにあった。

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