表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五百剣  作者: 伊藤大二郎
14/29

神祭り

 江戸にいられなくなって逃げてきた痩せ浪人である自分を、匿い面倒を見てくれたお人よしの、おタツ。


 他所からの流れ者である自分を警戒しながらも、飯を食わせてくれた、ガンゾウ。


 金釘流のひらがなを教えてやったクワ坊。


 この村が、自分を人間でいさせてくれた。



 祭り囃子が遠くに聞こえる、村の外れの夜。


 あいにくの曇り空で、まあるい月は見えない。


 ふと、雲の切れ目から月影が差しこんで、照らされる石祠と産まれて初めて、拝むことをしている自分。


 そして、祭りの夜を狙って村に這い寄った山賊共。



「去ね」


 悪党からの最後通牒に


「ならぬ」


 刀を抜いて、応答した。



 今更、まっとうぶっても流してきた血の総量には抗えない。


 けれど、今、しなければならぬと、誰かが囁いたのだ。


 あるいは、お前か。神様。


 身命を賭したところで、盗賊二十八人と斬り結び追い返すには、神懸りでもなければ足りまい。



 ならば、観ていてくれたのだろうか。


 一人ぼっちではなかったのだろうか。


「かみさま、ありがとう」


 太鼓の音も、笛の音も、もう聞こえない。


 返事もない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ