流星群
月など見上げても、何も思わない。
初めて女を抱いた時にも、何の感動もなかった。
初めて人を刀で斬り殺した時にも、何も思わなかった。
こういうものか、という程度の。
武士とは恥を知るものであるという。
けれど、私には恥というものが何なのかわからないのだ。
御家人の次男坊は、ただ長男の代用品として日々を無意味に生きている。
冷や飯を食い、小遣いを施され、何かを為すことを許されない日々を過ごす。
なら、私は生きていることそのものが恥ではないか。
恥が、今更に。恥の何を知るというのか。
ただ、その想いに気付き悪に染まる時だけ、少しだけ気が晴れた。
人の金を盗むことも、その金を使うことも、悪党とその金を分け合うことも、分け前で揉めて理不尽に死を与えることも。
人を謀ることも。なんでもなかった。
無頼の輩へと堕ち、盗賊まがいの、いや、盗賊の用心棒になり下がって、小舟の上でゆられていて。
空を見上げた。
その夜は、箒星が大量に降ってきて。
初めて、何かを美しいと思った。
そして、思ってしまって。
その美しさに恥じて、死を選んだ。
死んでも、あの星の元にはいけないだろうけれど。