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五百剣  作者: 伊藤大二郎
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虎穴流奥義


 八女藩の藩士のみが習得することを許される剣術がある。

 名を虎穴流。

 その激しい鍛練方法もさることながら、その深奥は虎穴と呼ばれるものである。

 恐怖を捨て去る。ただ、その気構えのことである。

 剣の道に生きれば、死中に活を見出す、虎穴に飛び込む。という心境に陥ることもあるだろう。

 しかし、ただ闇雲に命を賭けたところで、活を切り開くことも虎児を得ることもできない。

 己の心に巣食う死の恐怖と向き合い、冷静に最適解を見つけ出す。

 いかなる時にもその境地であることが、虎穴。

 自己暗示で、呼吸と血圧を下げるだけのことであるが。

 その境地に辿りつくまでに荒行を積む。

 切立った崖の上で鍛練をしたり、腰に重りをくくりつけて海に飛び込んだり、賭場におしかけて「イカサマじゃあ」と叫んでみたり、ありとあらゆる想定外の事案に放りだされ生き残ることを求められる。

 死傷者も出るが、乗り越えた者達は親の死に目にさえ目尻を濡らすことない屈強な剣士となる。


 しかし、虎穴流剣士には弱点があった。あまりに剣道に傾倒し過ぎて、浮世離れしてしまい女子達に慣れておらず、ちと話しかけられただけで舞い上がってしまう。

 心を平静に、嫁御にもらう口上を好いた女子に言えることが、虎穴の免許皆伝の証という、しまらない話も昨今聞く。

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