間章 幼馴染の2人
2人が出会ったのは、お互いの物心がつく前であった。
親が古い知り合いであったため、ただの幼馴染よりも、少年と少女は密接な関係で結ばれることになった。
当時はお互いにお互いの存在が当たり前であり、当然のように仲良くしていた。
姉弟のように同じ時間を過ごし、いろんな世界を共有していた。
保育園に入って初めて2人は違和感を覚えた。
多くの視線が少女に集まっていたのだ。
それまでずっと一緒にいた少年には何故彼女が注目を集めているのか全く分からなかったが、少なくとも彼女が喜んでいない事だけは直ぐに分かった。
少女は混乱していた。奇異の視線が自分に突き刺さり、動くことができなかった。
だんだん恐怖から血の気が無くなっていって、顔が青白くなっていく。それでも視線が減ることはなく、それどころかどんどん増えていく。
そして、無邪気で容赦のない言葉が急に襲い掛かって来た。
「あの子はどうして皆と違うの?」
誰が言ったのかも分からない、悪意のない言葉。
少年はそこでようやく少女が注目されている理由に気づいた。
周りをよく見てみるとたしかに彼女は目立っていた。
しかし、物心つく前から彼女と一緒にいた少年にとって、彼女がそうであるのは当たり前であり、疑問に感じることは無かった。
彼女は彼女だからああなのだと。
そして、その言葉は少女に大きな衝撃を与えた。
自分が皆とは違うのだと、心の奥に深く刻み込まれてしまった。
誰かの疑問の声をきっかけに、他の子も少女に疑問を投げかけて来る。
様々な感情のこもる目に囲まれて、質問の雨風に翻弄され、なすすべのない少女はただ嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。
唯一のよりどころのように、ただ一人少女を特別視しない少年の手が握っていた。
少年は少女のために呆けている保育士の裾を引っ張って現実に引き戻した。我に返った保育士さんはようやく興奮しだした子供たちを落ち着かせる。
この時少年は自分の力でこの状況をどうにかしたつもりでいた。
少女を護ってあげたいと思い、行動を起こした。
それでも園児たちの興奮が冷め、少女も落ち着くころには帰る時間になっていた。
この日の出来事が2人のこれからの人生に大きな影響を与えることになった。
少年は少女を護りたいという願望を。
少女はたった1つの拠所を手に入れたのだ。




