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Story 1  作者: 名瀬 夕依
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お久しぶりです。設定を必死に思い出している最中です←



「私がちゃんと見てなかったからだ……」

 病室を出るとすぐに、楓芳はそういった。確かに、飼育環境は充実はしているが、しっかりとした殺菌はされていない。毎日事細かに見やっていればあの斑紋も早く見つかったかもしれない。

「楓芳のせいだけじゃないさ。でも、一端は確かに君にある。だから……」

 普段の瞭緩には想像もつかない冷酷な台詞だ。しかし、時を争う今、泣き崩れている暇はないのだ。早くしなければ……本当に手遅れになる。

「ほら、時間は一週間しかないんだよ? ペニリンの生息地まではイクアスを使っても半日はかかる。早く準備にとりかからないとさ…………」

 『イクアス』は『水生馬』から派生した雑種で、早さにおいては『水生馬』に遠く及ばないものの、体力はそれを凌いでいる。高価ゆえに行商などで使われることは少ないが、軍隊の騎馬として以前は使われていた。長距離移動手段としては今でも優秀である。

「ほら、イクアスとっとくから、早く支度してきて」

「うん……」

 気落ちした様子で自分の寮へ向かう楓芳を見送ってから、瞭緩は(イクアス)の予約を取りに行った。

 女子である楓芳はともかく、よほどのことが無ければ瞭緩に特別な準備は不要だ。サバイバルナイフをはじめとしたサバイバル用品はいつでもポーチに入っているし、愛用のコートは寝袋替わりにもなる。今月は『火』の月だからコートは研究室に掛けてあるが、それだけあれば一泊は軽くできる。

「あとは……ああ、久しぶりにアイツら使うか」




    ◆ ◆ ◆




「おっさん、いる?」

 瞭緩が訪れた場所は研究都市の南西部に位置する小さな工房だった。研究都市南西部は主に武器工房が発展している地域で、日々新武器、新兵器が研究、開発されている。瞭緩が訪れた工房も、小さいながら最新の製作機器がそろってる。

「瞭緩か。最近はめっきり来なくなって……」

 工房の奥から現れた初老の男性――この店の主人、健介は立派な髭を撫でながら椅子に座った。健介は、知る人ぞ知る名刀『冬華』を成した刀匠である。極小の暗器からバリスタなどの攻城兵器はで手掛ける手練れでもあるが、瞭緩が欲しかったものはただの剣である。

「この前渡した図面のやつ、できてる?」

 この工房に限らず、研究都市のほとんどの工房――武器に限らず、日用品や防具、大型建築物も含まれる――では、一般人が考案したものを試作し、製品化を図る風潮がある。

「ああ、あの魔法剣ならいい具合だ。魔力伝導率も格段にあがっとる」

「そうか、よかった。受取金は?」

「まあ、技術料を差し引いて金貨25枚ぐらいだな」

「20枚で」

「無理」

駄目元で値切り交渉を開始してみたが、やはり無理そうだ。粘っている時間は無いのでそのまま金貨25枚を支払った。

「まいど、今回もいい仕事だった」

「そのうち、開発中の刻印もっていくよ」

「そうか、期待しておくぞ」

 なんだかんだ言ってもここは瞭緩の行きつけの工房だ。一定以上の成果を挙げてきている瞭緩の提案に期待を寄せているのだろうか、様々な感情を含んだ笑みを投げ交わしながら瞭緩は工房を出た。


「さて、まだ楓芳が来るのはかかりそうだし、軽くコイツの性能でも確かめておこうか」

 古今東西、女性の支度というものは時間のかかるものである。経験則から、まだ十分な時間があると悟った瞭緩は、公園の片隅――無論、一目を避けるために――に向かった。


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