第7話
昨日、お母さんからたっちゃんは呑んでくると聞いていた。
そうなると予想できるのはこれだ。
「お酒臭っ!」
預かっている合い鍵を使い我が物顔でリビングに上がれば、いつもは片付いている部屋に空き缶が散乱しローテーブルには飲みかけのコップに乾ききったおつまみだったはずの残骸が残っていた。
私はまず換気をするためにカーテンと窓を一気に開けた。まだまだ風は冷たいが、早くこのお酒臭さを無くさないと濁った空気にやられてこっちの頭が痛くなってくる。
「お~、おはよ~」
せっせと空き缶を拾うこちらの苦労はなんのその。シャワーを浴びてきたらしい村重先生はスウェットは履いているが上半身裸と言う目のやり場に困る出で立ちで私が先ほど入ってきたリビングのドアの近くに立っている。
「おはよ~。じゃないですよ!」
身近にあったクッションを村重先生に向けて投げつければ難なくかわされ悔しく思う。美術教師のくせに無駄に運動神経が良いんだから。
「たっちゃんは寝室ですよね? 起こしたらお味噌汁作るんで、私の代わりにリビングを片づけて下さいね。こんな汚い部屋で朝ご飯なんて私は嫌なので」
さっさとリビングから続くたっちゃんの部屋のドアを開ければ、こちらの部屋も同じくお酒臭さい。当の本人はジャケットは脱いでいるものの、ワイシャツ姿にネクタイを緩めただけという姿で熟睡していた。
私は先ほどと同じようにカーテンと窓を開けて換気をし、シャワーを浴びせるためにたっちゃんを叩き起こす。器用に前髪だけ寝癖を付けた姿を普段格好いいと騒いでいるクラスメートに見せてあげたい。いや、見せないけどね。
「ん……、まゆか? 今何時だ?」
「おはよう。今朝の9時を過ぎたところ。ほら、さっさとシャワーを浴びる! 寝癖直さないと朝ご飯無しだからね」
寝ぼけたたっちゃんがシャワーを浴びているその間に私はキッチンに戻ってお味噌汁作りだ。
未だに包丁の使用許可は貰えないがお味噌汁だけは妥協点をもらえるまでになった。
二日酔いに良いと聞くシジミの味噌汁を作っていれば片付けが終わったらしい村重先生がゴミ袋を片手にキッチンまでやって来た。
「お~、まゆちゃんお手製の味噌汁なんて初めてじゃん。どうしたの?」
「最近料理に目覚めたんです。他の料理はまだまだですけどお味噌汁はイケますよ」
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出した村重先生はキッチンから出て行く気が無いのか私の手元を覗きこんでくる。
あれだね、料理中に背後に立たれるのははっきり言って邪魔。
「服装もいつもと違うし、料理に目覚める。急に綺麗になったし、好きな人でも出来たりして?」
ニヤリと笑う村重先生は確信めいているけど実に惜しい。まさか前世を思い出して人格が変わりましたなんて誰が信じようか。
「まさか、高校デビューですよ。高校デビュー」
「ふ~ん。いつもみたいに下の名前で呼んでくれないし、お兄さん悲しいな~」
「はいはい、学くん。お味噌汁出来たから運んでね。おにぎりはお母さん特製、中身は何だろロシアンおにぎりだから」
ウチのお母さんは専業主婦だけあって料理が趣味みたいな人だ。たっちゃん達が呑んだ次の日に持って行くおにぎりは1つとして同じ物が無い。
それは中身だったり混ぜ込んである物だったり、おにぎりに巻く物も違う。 「じゃあね、ちゃんと空き缶と空き瓶は分けといてね」
お前はおかんか、といいたくなるセリフをあとに、たっちゃんの、い
恵と智ちゃんとショッピングの、予定なのだ。
GWの予定をきかれ部屋の模様替えをする予定だと答えると一緒煮、選んでくれるといってくれた
わたし1人だと片寄りそうだから助かります。
買い物は5駅先にある大型ショッピングモールに決まった。
ここなら洋服から日曜大工用品までなんでもそろっている。
たっちゃんちに寄ってきた分待ち合わせ場所に時間ギリギリに向かえば2人はもう着ていた。
「ごめんね!待たせた?」
「そんなことないよ、私達もいまきたところ、、」