プロローグ
こんにちは、皐月二八です。
連続一次創作作品投稿第一弾は、人外シスターズのヤンデレものです。
世の中、どう転ぶかわかったものじゃない。
正義のヒーローを目指していた奴が裁判所の被告人席に立つかもしれないし、バリバリの不良が警察官になるかもしれない。
不特定多数の未来。人間っていうのは、身につけようと思えばどんな技術も、知識も身につけられる。現代日本は、まさにそんな世界だ。
だから、どんな未来も選択肢の中には入る。実現可能かどうかは別として、だ。
「……だと思うんだけどなぁ」
頭を掻いて、目の前に広がった書類のスカイツリーから、無造作に一枚抜く。そこには、日本語でも英語でもない、地球のモノとは思えない文字が、ビッシリと書かれていた。
それも当然だ。地球の文字じゃないのだから。
そして視線をずらすと、其処には如何にも高級そうな万年筆とインク。詰まる所、サイン用だ。
この書類に書かれている内容は、僕のサインがなくば、そのまま“白紙”となる。
言い換えれば、僕は其れにサインするかしないかの裁量権があるということで、つまりはそこそこ上の立場にいるわけで、まぁ、まどろっこしい言い方を抜きにしてさっさと言ってしまうと――――。
「まさか、魔王になるとはなぁ」
高校時代、進路希望の欄に“外交官”と書いていた過去が懐かしい。
そして、当時の自分に今の僕の姿を見せてやりたい。
何故かって? 唯の八つ当たりだよ。 対象が過去の自分の時点で、八つ当たりなのかどうか妖しいけどさ。
僕は、一応日本生まれの大学生だ。これでも、そこそこ有名な国立大に在学していた。
名前は鎌浦 甲斐。
だけどまぁ、とある事故に巻き込まれて、そんでもって、気付いたら此処にいた。
この、地球とは似ても似つかぬ世界に。
其処には人間とは一味も二味も違った、魔力を持っている生命体。人型だけじゃなく、ゲームに出てくる怪物のような姿もした奴もいて、要するに、“魔物”がいた。
そして此処は、その魔物の楽園。人間界とはまた違った世界。
所謂、“魔界”に僕はいた。
しかも、先代魔王の息子として。
そして、その先代魔王、つまり僕の父親というわけだけど、すでに亡くなっている。
中世の王族にありがちな、暗殺されたとか追放されたとか処刑されたとか、そんなドラマチックではた迷惑な死に方じゃなくて、ごくごくありふれた――――早い話が老衰で、だ。
そして魔王は、後継ぎがいる限りは世襲制となっている。
後継ぎがいない場合は、議会が多数決によって指名する。
んで、先代魔王には後継ぎがいた。まぁ、僕のことだけど。
よって、僕が魔王。第五〇代魔王、カイ=オルフィオ=フェディークスというわけだ。
「ん~……やっぱり、此処は開発しておくべきかな」
「どのように、ですか?」
後ろから聞こえてきた声に、少し驚いて振り向く。
其処には、三メートルはあろうかという長身の女性が立っていた。
透き通るような蒼いロングヘアに、宝石の様な紫色の瞳。肌は、白磁のように白く、十分明るい室内でいっそう輝いて見える。
白いヴェールで顔を覆い、綺麗な宝石が付いたイヤリングやネックレスをを付け、清潔感と高級感あふれる純白のローブを身に纏っている。
女性らしさに溢れるスタイルは完璧で、贔屓目に見ても美女だ。日本だったら、グラビアアイドルやモデルにだって劣らないだろう。
ただ、下半身が巨大な、薄い紫色の花弁で構成されている女性が、現代日本でグラビアアイドルやモデルとして大成できれば、の話だけれども。
「ん、ほら、あそこは元々人間界だったし、魔界領となって間もないでしょ? だから、やっぱり入植から始めないとなぁ…………」
「成程、有象無象の屑……愚民どもを汚泥の底に放り捨てるのですね。流石はお兄様です、見事な采配ですわ」
腕を組んで、大きく首肯する一番上の妹を流し目で見て、僕ははぁ、とため息をつく。
「お兄様? 如何なさったのですか? 肩を御揉みしましょうか? 嗚呼、お兄様が頭を痛めていらっしゃるなんて…………嘆かわしいですわ。このような理不尽などあってはなりません。
では、その悩みのタネを私が潰し――――」
「あぁ、あぁ、いーから……」
軽く手をあげ、彼女のマシンガン・トークの銃口を塞ぐ。
まったく、如何してこう、僕の妹たちは揃いも揃って極端というか、過激というか……何て言うんだ? アレは。
……あ。
「あ、ところでアルム」
「はい、お兄様」
「他の妹たちは?」
「あの三人ですか? エルフィアとシラウは城内を、ヒノは城下町に出ていますわ」
「……何で?」
「勿論、お兄様の邪魔となる屑をこr――――」
「呼び戻せぇえええ!!」
……魔王の執務なんかより、妹の手綱を握る方が大変だよ、全く。
此れから本格運転でやっていきます。
宜しければ、見てやってください。
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