見つけました指輪
さぁて。
こっからが大仕事。
私の声は死者とか神とかしか聞こえない。
姿も見えない。
相手に触れることも、触れられることもできない。
どうするかって?
決まってるじゃんか。
幽霊は幽霊らしく、(私幽霊か?)
アレでいこう!!
私は自分の服のポケットに入っていたマッキーを取り出した。
そして、地面に文字を書いた。
周りは見えない何かが文字を書いているので、今だにカチコチ。
≪今すぐ女を離せ≫
チンピラが呟いた。
「すげぇ・・・」
ピアスが怒鳴った。
「おい!誰だ!
こんな悪戯してるのは!
どういう仕掛けだ?!」
私は、はーい!と元気良く手を上げた。
別にいいもん。
どうせ見えないんだし、仕掛けないんだし。
チンピラの声が震えた。
「あ、兄貴。
さっきも急に棒が浮いたし、やめた方がいいんじゃないですか?」
リーダーはお姉ちゃんから離れた。
私のところにくると、棒を掴もうとした。
私はとっさに棒を蹴った。
リーダーはビクっとした。
黙っていたトサカが
「うわぁぁぁぁ!!!!」
と叫びながら出ていった。
それに続いて、チンピラとピアスも逃げ出した。
リーダーは震えた声で、
「か、金はもういい!
無かったことにしてやる!!」
と、お姉ちゃんに言い放つとそのまま逃げた。
お姉ちゃんは1人、正確には2人になると、ぺたっと座り込んだ。
「・・・・・・静枝?」
お姉ちゃんは怯えていなかった。
私は地面に
≪そうだよ、お姉ちゃん≫
と書いた。
お姉ちゃんの目から、涙が溢れ出した。
「守ってくれたんだね・・・」
そうだよ。
聞こえないと分かっている。
でも答えてしまった。
「静枝・・・ありがとう・・・」
お姉ちゃんはうずくまって涙を堪えている。
「ありがとう・・・ありがとう・・・」
お姉ちゃんは言い続けた。
「・・・友里に伝えなきゃ・・・。
静枝、そろそろ行くね・・・」
お姉ちゃんは切ない顔をした。
凄く儚くて、美しくて、壊れてしまいそうな顔。
「最後に聞くけど・・・。
これからも私たち家族を見守ってくれますか?」
私は大きく
≪はい≫
と書いた。
お姉ちゃんの涙は激しさを増した。
「これ・・・。
ホントは誕生日に渡そうと思ったんだけど・・・。
今あげる。
取ってね」
お姉ちゃんは小さな袋を置いた。
「それじゃ」
と言うと、振り返らずに去って行った。
私は袋を拾った。
「静枝、開けてみたら?」
黙ってた輪が言った。
「うん」
私は丁寧に袋のテープを外した。
中には、小さな指輪とお姉ちゃんからの手紙が入っていた。
「手紙は誕生日に見るよ」
私の声は何故か震えていた。
「静枝、これだよ」
輪がそう言った瞬間、指輪が光り出した。
そして、そのまま消えた。
「輪・・・これって・・・」
「うん、そうだよ。
天界の神様のもとにいったんだよ」
輪は言った。
「静枝、もう我慢しなくていいよ」
輪の声は、とても優しかった。
そう言われて、私は自分が泣いていることに初めて気付いた。
「輪・・・。
今日は雨がいっぱい降ってるね・・・」
輪は何も言わなかった。
私は子供みたいに、泣きじゃくった。