こんにちは私
苦しい。
お父さんが私の名前を大声で呼んでいる。
お母さんは涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃ。
お兄ちゃんは「頑張れ」と叫んでいる。
お姉ちゃんは意味不明な言葉で私を呼んでいるようだ。
苦しい。
痛い。
私は痛みと苦しみの中、そのまま意識を失った。
気がついた。
私は病院のベッドに寝かされている。
寝ていたようだ。
と。
自己紹介がまだだった。
私の名前は「佐伯 静枝」
12才の小学6年生だ。
どういう訳か知らないが、私は病院のベッドの上で寝ている。
体が重い。
疲れているのかな?
重い体を起こして立ち上がった。
この部屋は個室のようだ。
看護師さんが入ってきた。
「あ、あの・・・」
小さい声ではあったが、この小さい部屋の中だ。
それに、この部屋には私と看護師さんしかいない。
ところが、この看護師さんは私の事を無視した。
????
感じ悪いな。
舌打ちしたい気分ではあったが、ここは堪えておいた。
看護師さんは、しばらくドアの前で立っていた。
急に泣き出した。
え????
なんで泣いてんの?
私はベッドの反対側の隅っこにいた。
看護師さんは、私に気づかないのか、そのままベッドに向かって歩きだした。
ベッドに向かったということは。
私がベッドで寝ていた事は知っていた。
看護師さんだし。
私は病気か事故で入院しているのか?
私は改めて、自分の寝ていたベッドを見つめた。
すると、ある衝撃的な事実が判明した。
私の寝てたベッドに、
誰かが寝ている。
看護師さんは、その誰かの顔を見つめていた。
誰なんだろう?
知りたい。
もしかしたら、ショタコンでロリコンの変態かも。
そうだとしたら、許せない。
でも、上に寝ていたのは私。
て事は、間違えてその誰かの上に寝ていた私の方が悪いということになる。
そんなの恥ずかしくて言えない。
看護師さんは、しばらくその人の顔を見ていた。
そして、急にその人の腕から点滴を外した。
さっきは気付かなかったが、この人はたくさんの点滴をしていたようだ。
看護師さんは、その一つ一つを丁寧に外していった。
ゆっくり、ゆっくりと。
私はその誰かの細い腕を見て、確信した。
大人じゃない。
大人の女にしては細すぎる。
見た目からして男ではない。
とすると。
小学生の女の子と思うべきか。
点滴を外し終えた頃、看護師さんの目から涙がドバっと溢れた。
「どうしたんですか?」
と、声を掛けた見たものの。
看護師さんはガン無視。
本当に感じ悪い。
ガラッ。
またドアが開いた。
今度入ってきたのは先生と・・・。
「え?」
お父さん、お母さん、お兄ちゃんに、お姉ちゃんまで。
「みんな?なんでここにいるの?」
私の胸では疑問が殺到していた。
なんと!
家族までもがガン無視。
みんな、目が真っ赤に腫れ上がっている。
頬と唇が震えている。
「ねえ、どうしたの?」
お父さんに触れてみた。
でも、触れる前にスルーされた。
なんで?
みんな、私という存在を無視している。
先生が急に口を開いた。
「誠に申し訳ありません。
我々も最善を尽くしましたが・・・。
手遅れでした。
娘さんは、御亡くなりになられました」
娘?
亡くなった?
「本人は今日の午前6時に亡くなっておりました。
その為、点滴を外させていただきました」
それで・・・。
看護師さん、死んだ人の点滴外すの辛かったろうな。
でも・・・。
アレ?
私、死んだ人の上で寝てたの?
考えただけで背筋がぞぞぉ~っとした。
てか娘って何?
私もお姉ちゃんも生きてるよ。
それに家、女はお母さんとお姉ちゃんと私。
この三人以外ってことは・・・。
隠し子?!
てか、なんでみんな驚かないの?!
初めて知った新事実に私は興奮した。
私の妹かお姉ちゃんに当たるはず!
私はみんなの目を無視して隠し子(?)の顔を見た。
心臓が止まるかと思った。
ベッドで寝ていたのは、隠し子なんかじゃない。
私だった。