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母からの連絡で随分と心が軽くなってみて、これを詳しく賢治に言いたくなった。
けれども、学校で賢治が沙織といる所に邪魔するみたいで行けなかった。あぁ。これが沙織と賢治が付き合うということか、と納得して何だか泣きそうになった。
「有希ちゃん?」
「んー?」
松井さんの声に顔を上げると松井さんはキョロキョロと視線を動かしていた。
「今日は、蒼井くん見かけないよねぇ」
「そうだね。まだ、教室来てないのかも」
「ふぅん」
少しだけ不機嫌そうに言う松井さんが何だか珍しくて、笑みが浮かんだ。
「蒼井くん! 好きです!!」
廊下のど真ん中で告白劇が行われていた。しかも教室の前。
それはもちろん、私の耳にも、そして松井さんの耳にも届いていた。
「モテモテね」
そう言った松井さんはニヤニヤ笑って目を輝かせているのだろう、と思って横を見るとその表情は辛そうにゆがめられていた。
「松井さん?」
声をかけるとそれがうそみたいに破顔していた。
「いいわね。モテるって」
いつものようにニヤニヤしない松井さんのその動作に松井さんの持っているものに気が付いてしまった。
「松井さんは」
蒼井くんが好きなんだね。そう言うのをためらい、飲み込んだ。
「ん? 何?」
「何でもない」
人はどうして誰かを特別に思うのだろう。
そんな感情がなければ、だれかに嫉妬することも、なくなるのに。
特別に思って、その思い事体は真っ白なはずなのに、相手にも同じ特別を求めてしまう。
だから苦しい。
わかっていても、それをとめられることはできない。
相手は相手の感情がある。
思い通りになんてならない。わかっている。
だから恋は成長させるなんて言葉があるのも理解してる。
それでも感情はままならない。
教室の端にいる賢治と沙織の姿を見つけて小さくため息をついた。
昨日はすみませんでした!やっと投稿です^^
今回、ちょっと短い、かな?
ごめんなさい!
芽実