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久しぶりに賢治とゆっくりとした時間を過ごそうと近くのカフェに入った。



「無理、してないか?」

「してない」


はっきりと言うと賢治は怪訝な顔になる。


「賢治こそ。辛そう……」


彼は俯いた。










「俺、近いうちに沙織に告白すると思う」

「……そっか」

「長い間、悪かったな」


それは暗に賢治の成長を示していて。私と賢治の間の関係性がすべてなくなったような気がした。


「賢治に、彼女ができても、私と賢治の関係はそのまま、でしょ?」



そう口にして私はやっとじぶんの思いに気付いた。

誰よりも、賢治を望んでいたのは他の誰でもなく私だったんだ。



賢治に私はもとから必要なんてなかった。

私に賢治が必要だったんだ。

気付いてしまえば単純なことで。でもそれは、気づかない方が随分と幸せなことであった。



私が賢治を支えている気でいた。

それはとんだ勘違いで。

本当は私がそう思うことによって自分は必要とされているんだ、と思いたかっただけなのかもしれない。



「そうだな」


そう言って笑う彼に私もぎこちなく笑った。





賢治が晩御飯を誘ってくれたけれども私はそれを断った。

母はもうずいぶんと家に帰ってこなかった。

確か私が高校にあがってからのことだ。


何を思ったのだろう。

今、どこで何をしているのだろう。



聞きたいことも言いたいこともあった。


本当は話がしたかった。

父親のことも、検査とかよりも母の口からききたかった。



でもそれはきっと敵わないことで唇をかみしめる。





賢治のかつての言葉に納得すらする。


愛とか、不確かなもの。



知っているけれども。

わかっているけれども。


それにすがらないと生きてなどいけない私はひどく弱いのだろうか。

滑稽だろうか。



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