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母は、賢治の父の愛人になっていた。

それがいつからなのかわからないし、私の記憶に父はいない。


もしかしたら兄妹なのかもしれない。

そんなことを賢治には口がさけても言えなかった。



検査をすればはっきりする、と言うだろうが、それをすることは恐ろしかった。

可能性があるのであれば、それが違うという可能性もある。


その答えをはっきりさせるのがとても恐ろしかった。


私の中で確かに存在した“愛”を否定される気がした。

可能性だけなら、違うということもある。

でももし、兄妹だったら、と思うと何も出来なかった。



好きだ、と思った。

支えたい、と思った。

それでも、彼は私を見なかった。

でもそれは正しかった。

その可能性があるような私に感情を揺らしてはダメなのだ。



『愛とか恋とかいつ消えてしまうのかわからない不確かなモノ。そんなのより、切れない絆が欲しい』



賢治の言葉が頭をよぎった。そして私は賢治の母に会いに行った。





「私だけは絶対にダメな理由、わかりました」


ホントウは知りなくなんてなかった。

私にとって父親は、いなくても問題はなかった。



「……そう」

「母が、すみません」

「いいのよ。もとから、愛のある結婚じゃなかったし」


小さいころは大きく憧れであった彼女はいつのまにかこんなに弱弱しく小さくなっていた。



「私はあなたの父親は知らないわ。でも、可能性があるなら」


彼女は言葉を区切る。そして俯いた。

私の傷を小さくするためだとわかっていた。それが少しだけ嬉しかった。そして私は微笑んだ。



「別れますよ。もとから卒業までの約束です」

「本当に疑似だったの?」

「はい」

「賢治は納得するの?」


彼女は恐る恐る聞いた。


「しますよ。彼は」




対して私ははっきり言う。何故ならば。


「彼は、愛というものに人一倍飢えていて、でもその癖に人一倍疑っている。だから彼は愛とか恋より、裏切らない支える人が必要なんです」

「あなたが、ソレになるの?」



にっこり笑うとそれに応とも否とも答えずに失礼します、といって別れを告げる。そして一言かぶせた。


賢治には全部、内緒ですよ、と。






狂っている、と笑われるのかもしれない。

それでも、いつか、賢治が大丈夫な日まで。


そう思っている私はやっぱりおかしいのかもしれない。



卒業式の後、別れを告げたのは賢治だった。そして彼は言った。



「別れても、これからも、有希は有希だよな」

「当たり前。これからも、私と賢治は幼馴染で友達で仲間で、家族だよ」



世間体のあまり、無理をする彼はあまり表に何もかも出さない。

だから心配だった。これを人はなんと言うのだろう。





恋じゃない。私は彼を愛していた。




しばらく所用で出かけます。

ネット環境でなくなるので。ごめんなさい。予約で1日1話投稿させてもらいます。

芽実

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