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彼、賢治と私の関係は何とも表現しにくいものであった。



初めて会ったのはお互いまだ3歳のころらしいからか俗に言えば幼馴染、という間柄であった。


そんなファーストコンタクト、まったく記憶にない。

ただ、物心ついたころにはすでに賢治という存在を知っていた気がする。



たまたま賢治のお家の家政婦をやっていた母を通して知り合ったのが最初。

ちょうど同い年の子どもだから遊び相手にいい。そんなものであった、らしい。


少し捻くれていた賢治の後をいつも追いかけていた。

学校にいくようになり、学区が分かれていた小学校は別のところだったが中学からは学区が広くなったからか同じだった。


なんだかんだ賢治のことはわかっていた。

あの面倒な性格も、きっともう慣れていたし、それを理解できることが何となく嬉しかったんだと思う。




生徒会長を賢治が勤めて、私は副会長をした。

そしていつからか、周囲は私たちを恋人同士という目で見てきた。

そしてそれは現実となった。



「有希」

「ん?」

「付き合う?」

「は?」



いつものように何気なく過ごしていた時にさらりとされた会話に正直私はついていけなかった。

でも、正直な話、私は賢治に対して好意を持っていたし、それは嬉しいものであった。



いつも一緒にいる男が、賢治みたいな男だったんだ。

好きにならないわけがなかった。

ただ、それが恋愛なのか、家族愛なのかはわからない。

欠点もいっぱい知っていた。

その上で好きだと思っていた。受け止めたい、と思っていた。

どういう感情かわからない。



でもそれは確かに愛だった。



「俺、告白断る理由考えるの面倒だし、有希いればほら、理由あるだろ」


賢治はなんてことないように言う。

でもそれも何となくわかっていた。

賢治のなかで母親に愛された、と感じたことはないのかもしれない。それがわかっていた。




“愛”という不確かなものを賢治は望んでなんかいなかった。

いつなくなってしまうかわからない存在はいらない、と言った。


それを知っていたから。知ってなおそばに居たかったから。

私が一番近くに居たかったから。私はその話に頷いた。



“疑似彼女”の話に。


私の中にくすぶる賢治に対する感情は“愛”で。

賢治はその感情を恐れていた。

だからそれを表に出すことは出来なかった。



「別れなさい。その子だけはダメよ」


賢治の母親は目を光らせて私と賢治に言った。



どうして私だけはダメなのかわからなかった。

賢治は疑似だ、と懲りずに説明をした。




そして数か月が過ぎて賢治の母親が私をダメだ、と言った理由が理解できた。


それは知らない方が平和な事実だった。



賢治くんと有希ちゃんの過去話編です。


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