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昼に図書室に行くとそこには麻美がいた。



「あのっ!! 確かサオ先輩の……」


声をかけられて立ち止まって彼女を見る。勢いで声をかけたはいいが名前が出てこなかったのだろう。少し戸惑ったように目線を泳がせた。


「あぁ。沙織の後輩の」


「麻美です!麻美って呼んでください!」



にこにこ笑う彼女を見て何だか毒気が抜かれた気がした。


「麻美、チャン?」


誰かをちゃん付けすることになれていないからか、麻美ちゃんと呼ぶことに躊躇してしまった。するとそんな私に気づいたように麻美はクスクス笑った。



「“麻美”でいいですよ?」


「ありがとう」



苦笑しながら言うとちょっと照れたように麻美は顔を俯かせた。



「私は有希。よろしくね」


「ゆき先輩って呼んでいいですかー?」


「うん、もちろん。いいよ」



そう言うとニコニコと麻美は笑った。本当にかわいい子だと思った。


「ゆき先輩は、部活とか入ってないですか?」


「えぇ。麻美は?」


「陸部のマネージャーです! 中学の時もそうだったんで!」


「あぁ、沙織から聞いたよ」


「そうなんですかー? ゆき先輩って生徒会とかしてそうですよねぇ」


はきはきという麻美がどこか沙織にかぶって見えた。クスリと笑うと麻美の頭を撫でた。



「どういうの、それは。麻美、髪、綺麗ね。サラサラ……」


「えー、そのままですよー。本当ですか? わぁい!」


「今度、いじらせてもらいたいね」


「ぜひぜひ!」




素直な反応を見せる麻美がかわいくてついつい話し込んでしまった。

私が思っているような人物ではないように思えた。


人はどうして中身を知らないのに色眼鏡を付けてしまうのだろうか。

私はどうしてもよく知っていた沙織や武、賢治を中心に見てしまう。


あの三人の仲を引っ掻き回している子だと思うとどうしても勝手な苦手意識が生まれていた。


きっと性格は悪いのだろう、とか、そんなことを考えていた。多分、そうであってほしかっただけなんだと思う。そうであったら何も考えないであの3人のことだけを心配出来ていたから。



麻美の顔を見ているとどうしました? と麻美は小さく首を傾げた。



「ううん。思っていた子と違ったな。と思って」


「えー? どう違ったんですか!?」



「いいこだった」



ふふふっと笑うと麻美はえー、と言いながら照れたように笑った。


そんな表情もまた、女の子で、かわいらしかった。



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