16
本日2話目です。
沙織と喧嘩した。と、言うより沙織を怒らせた。
「ねぇねぇ、有希ちゃん。何かあったの?」
朝、教室で松井さんに話しかけられた。
「んー? 何で?」
「有希ちゃん、今日沙織ちゃんたちのトコいかないし」
そう言われてちらりと沙織たちをみた。武や沙織、賢治、三人で楽しそうに話していた。
「えー、やっだぁ!」
「賢治、俺ここあたるんだよ!」
「またかよ……」
「あたしも! あたしも!!」
その様子は穏やかなものに見えるもののどこか賢治がつらそうに見えた。
やっぱり、無理してるんだ。
何となく手に取るようにわかってしまう賢治の感情に思わず眉間にシワが寄った。
わかりたくなんて、ないのに。手に取るようにわかってしまうのは嫌になる。
「そんなにあの三人が気になる?」
「松井さん……楽しそうね」
ニヤニヤしながら言う松井さんに呆れたような顔をした。
「そーう? でも、見てる分にはすっごく楽しいよ」
言ったでしょ? 大好物は愛憎劇だって! 嬉々としてそういう松井さんに苦笑を漏らす。
「まぁ、確かに」
「わかりやすい三角関係だもんねぇ。でもあたし的に見れば、賢治くんと有希ちゃんだと思ってたんだけどなぁ……。甘かったかなぁ。お似合いだと思うけど」
「違います!」
「だって、賢治くん。有希ちゃんといるときなんか楽そうよ?」
それを第3者から言われるとどことなく嬉しい気がする。
「でも違うの!」
「そうそう!! 有希チャンを生徒会なんかにやれないんですよ。監査へ来てもらわないとねぇ」
ニヤニヤ笑ったまま私の頭に手を置いた蒼井くんがいた。
「決めてないです」
有希ちゃん、有希ちゃん、と笑って松井さんは蒼井くんを指さした。
「蒼井くんは?」
「違います!」
「違うからね!?」
私と蒼井くんの否定に松井さんは面白そうに聞き返す。
「本当に?」
「本当に!!」
松井さんはニヤリニヤリと笑った。絶対わかっていてそう言っている松井さんに私はため息をつきながら沙織たちをみた。
沙織は、どうするつもりなんだろうか。武のこと、賢治のこと、麻美のこと。どうするんだろうか。私にはわからないことだけども、心配せずにはいられなかった。