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はぁ……とため息をついた。自分の席を引いて座った。
「ごめんね、沙織」
そう呟くとまたうなだれた。
「どーしたの? ゆーきチャン?」
「蒼井くん?」
とても軽い感覚で後ろからワッと驚かすような動作をしてからニコニコしていた。
「まだ居たの?」
「監査委員だよ。有希チャンが入ってくれればいいんだけど!」
ニコニコと笑うので少しのため息をついた。蒼井くんと話していれば暗い感覚が消えるような気がした。
「蒼井くんはさぁ」
「うん?」
「好きな人の話、去年したよね? 今も好きなの?」
「まぁねぇ。今年は同じクラスになれたからね」
「あ、だからいつもより軽いんだ」
ポンポンとなされる会話には遠慮はなく、それは何となく私と蒼井くんの感性が近いからのように思えた。
「え、軽い!? あー、でもなぁ。こうでもしないとほんと、近くにいった瞬間カチカチになりそうだからねぇ」
「そっか……」
「まぁそんな僕の恋愛成就のためには! 君が協力して監査の仕事を減らしてくれれば! 僕はほら、空いた時間で誘えるんだけど!」
「誘うの?」
「もちろん! やっとあっちは僕の存在を認識してくれたからね!」
嬉しそうにいう蒼井くんを見ていると、そっか、恋愛って幸せな気持ちになるものだったけっていうことを思い出せた。
そんな蒼井くんを見ていると少しだけ気持ちが軽くなった。
「考えておく」
「マジ!?」
やったぁ! と喜ぶ蒼井くんに少しのため息をついた。
「考えるだけよ」
「それでも進歩、進歩!」
ニコニコと笑う彼に何だか、こっちまで元気になれる気がした。