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沙織の素直じゃない性格は今に始まったことじゃない。


放課後に沙織と私の2人になった時に沙織が口を開いた。沙織は机の上に座っていた。


新学期そうそう副委員に指名されてしまっている私は担任の雑用を終わらして教室に戻った所だった。



「沙織、今日部活は?」


「さーぼーりー」


さぼりって言うとニッと笑った。



「さぼり?」


「麻美、来てるし」


「会いたくないの?」


「そんなんじゃ、ないんだけどね」



そう言うと、顔を俯かせた。その憂鬱な様子が何だかもの寂しさを感じさせた。

夕暮れの少し暗くなった教室の窓から顔をのぞかせた。




「あ、あれ。麻美ちゃん?」


「タケもいる……?」


「え、いるよ」


「そっか」



また俯かせた顔でタケ、と呟いた。それは恋をする乙女そのもので。


少しだけ、賢治のことを思った。

沙織が見ているのは武ばかりで報われないとわかっていて思い続ける賢治が私には理解が出来なかった。

彼は、けしてそういうタイプじゃなかったから。




「なんで、だろ……」


そう言う沙織に私は何て声をかければいいのか悩んでしまった。

かつての自分と少し重なる、気がした。かける言葉がなかった。




「有希はさ……いいよね」


「え?」


「両想いで」


「だから違うって」



蒼井くんには好きな人がちゃんといる、という話を一度している。

それは確実に私じゃない。

いつもあんな風にフワフワしてつかみどころはないけれど、そうでもしないと好きな人の近くに居れそうにない、と言っていたのだ。

でも、と静かに言う沙織に何? と首をかしげた。




「有希には賢治が似合うよ」


「似合わないよ……」


うん、似合わない。そうもう一度言う私に沙織は首をかしげた。

沙織は知らないから言えるんだ。



「そう?」


似合う、なんてそんな言葉を沙織から聞きたくなんてなかった。



少なくともそんな残酷な言葉、賢治にはかけないでほしい、そう思う。


「ねぇ、タケのことどう思う?」



素直じゃない沙織だから、こんな質問されるのは初めてのことだった。


「イヌとネコが合わさったみたいだなぁって思う」


「いや、そうじゃなくて。い、異性として?」


「ない」


そう言い切ったあたしに沙織は安堵の表情を見せた。



「協力、してくれない?」


小さく呟いたその声に教室がピンと空気が凍った。

私は静かに首を振った。私が何か出来る話でもない。



それに……。ただ一人、先に聞いた約束の言葉が頭をよぎった。


出来ないことを約束するつもりはなかった。私は首を横に振った。そして沙織はまた唇をかみしめて吐き出した。








「サイテー……」


その目には涙がたまっていた。うるんだその目を直視なんてできなくて私は目をそらした。

わざと、見ないようにしたんだ。沙織はそんな俯いた私の横を小走りで通って教室を出て行った。




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